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軽ワゴン低燃費No.1 スズキ新型ワゴンR/スティングレー登場

スズキ

1993年から、軽ワゴンを牽引してきたワゴンR

新型ワゴンRスティングレーを、諸星陽一氏がリポートする

 スズキのワゴンRは、1993年に初代が発表された。それは、日本の軽自動車の方向性に(かじ)が切られた瞬間だった。

 商用車ではない乗用の軽自動車でありながら、たしかな実用性をしっかり備えて登場したワゴンRは、それまでの軽自動車のユーザー層を超え、多くのファンを獲得することに成功した。以来、ワゴンRは、日本の軽自動車の基準として、軽ワゴンクラスを牽引(けんいん)している。

エネチャージとは?

減速のときだけ発電し、バッテリーに充電するエネチャージ。その電気を、走行中に利用する

 新型ワゴンRは5代目にあたる。ワゴンR本来の、車高が高く、優れた使い勝手を備えているのはもちろん、次世代車に要求されるさまざまなエコ性能を備えた軽ワゴンへと進化している。

 まず注目したいのは、ENE−CHARGE(エネチャージ)。これは、減速エネルギー回生システムである。

 クルマは、ブレーキを掛けることで、走るという運動エネルギーを捨て、速度を下げていく。新型ワゴンRでは、減速するときに発電機を積極的に働かせ、減速エネルギーを電気エネルギーに変換し、車載のバッテリーに()めている。これがENE−CHARGE(エネチャージ)だ。

 発電された電気は、通常の鉛バッテリーのほか、助手席の下に置かれたリチウムイオンバッテリーにも充電する。これまでは、発電機を常にエンジンの力で回していたので、エンジンの力の一部が発電に使われていたが、エネチャージでは、できる限り減速時に発電することで、エンジンの力を有効に使うようにしている。エンジンの力を走りに集中させることができるから、燃費も改善されるわけだ。

アイドリングストップが進化

街を疾駆するワゴンRスティングレー。減速時にエネチャージが働き、停車すればアイドリングストップする

 最近のエコカーの多くは、アイドリングストップを採用している。これは、クルマが止まっているときには、エンジンも止めて無駄な燃料の消費をなくす機構だ。

 一般的に多い仕組みは、クルマが完全に停止してからエンジンを止める方法だが、新型ワゴンRは、クルマが完全に停止する前の減速時からエンジンを止めてしまう機構を採用している。

 スズキは、アルト エコという車種で、車速が9km/h以下になるとエンジンを止めるアイドリングストップを採用していたが、新型ワゴンRでは13km/h以下でエンジンが停止する。早めにエンジンが止まれば、それだけ燃料消費の無駄も減らせる。

 13km/hからエンジンストップしても、不安はまったくなく、クルマはスッと止まってくれる。そのままブレーキペダルを踏み続けていれば、アイドリングストップの状態をキープし、基本的にエンジンは止まったままだ。ブレーキペダルを踏んでいる力を弱めたり、ハンドルを動かしたりすると、エンジンは即座に再始動するので、発進にもたつくようなことはない。

エコクールとは?

停車しアイドリングストップ中にも、エアコンディショナーの冷気をより長い時間室内へ送り込むエコクール

 燃料を無駄にすることがないアイドリングストップだが、困った問題も発生する。それはアイドリングストップしているあいだは、エアコンディショナーが働かないということだ。

 アイドリングストップ中も送風ファンは動いているので、吹き出し口から風は出てくるが、その風はエアコンディショナーをオフにしたときと同じような生ぬるい風になってしまう。これでは不快だということで、アイドリングストップを切れる車種では止めてしまうユーザーも、夏には多い。

 しかし、それではせっかくのエコ技術であるアイドリングストップが泣く。スズキは、アイドリングストップを有効に使うため、エアコンディショナーにちょっとしたアイデアを盛り込んだ。それがECO−COOL(エコクール)だ。

 エコクールは、エアコンディショナーが空気を冷やす部分に蓄冷材を配置して、アイドリングストップしたときには、その蓄冷材で空気を冷やすという機能だ。そうすれば、アイドリングストップしてエアコンディショナーが止まっても、冷気の吹き出しを長持ちさせることができる。

 まだ残暑厳しい時期に試乗してみたが、このエコクールの効果に助けられた。正確に計ってはいないが、感覚的には一般のアイドリングストップの約2倍の時間、快適な風が吹き出している印象だった。

ワゴンRスティングレーを知っていますか?

ワゴンRのもう一つの顔となる、スティングレーは、精悍(せいかん)なスタイルが特徴。また、ターボエンジン搭載車種もある
スポーティーな雰囲気を伝える、ワゴンRスティングレーの黒い内装
スティングレーも、後席のシートアレンジなどワゴンRとしての使い勝手の良さは同じ

 

 ワゴンRは、使い勝手の良さを売りとする実用一点張りのように思われがちだが、実はそうではない。

 広々とした車内や使いやすいラゲッジルームであるのはもちろんだが、存在感のあるエクステリアや、クリーンなインテリアなど、デザインの魅力も多い。

 そうした魅力をさらに向上しているのが、3代目のシリーズ途中で追加され、現在も存続しているスティングレーというモデル。

 どちらかというとファミリー的なデザインのワゴンRに対し、スティングレーは男性的な魅力を強調した車種となっている。

フロントグリルのLEDイルミネーションは、ワゴンRスティングレーのみに採用され、夜間での存在感を強める

 標準のワゴンRが、縦型のヘッドライトを採用するのに対し、スティングレーは横に切れ長のヘッドライトを採用する。その左右のヘッドライトを連結するようにデザインされたスケルトンタイプのグリルには、LEDが配置される。夜間にはLEDがシャープな光を放ち、スティングレーのスポーティーさをアピールする。

 さらに、標準のワゴンRが自然吸気エンジンのみの設定であるのに対し、スティングレーには64馬力のインタークーラーターボエンジンもある。より力強く、スポーティーな走りを選ぶことができる。

 新型ワゴンRは、先代に比べ最大で70kgもの軽量化を実現している。小さな軽自動車で、70kgもの軽量化は驚異的だ。

 軽くなったことにより、加速もコーナーリングもブレーキも性能が向上している。走り全体がスッキリとした。ワゴンRに搭載されるエンジンは52馬力の自然吸気だが、こうした軽さや、効率のいい副変速機付きCVTが組み合わされたことで、力不足を感じることはない。

 以上のようにエコ性能をアップすることによって、ワゴンR(2WD)は、JC08モードで28.8km/L(スティングレーTの2WDは、26.8km/L)という優れた燃費性能を実現している。

 新型ワゴンR/スティングレーは、ライバル車に対して、1歩いや1.5歩リードしたモデルとなった印象だ。新たなベンチマークとして、その存在感を主張し続けること間違いなしだ。

 <モータージャーナリスト:諸星陽一>

2012年12月3日  読売新聞)

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