【注目インタビュー 私のターニングポイント Vol.1】 吹越 満 『なぜ舞台を続けてきたのかと聞かれれば、「辞めるきっかけがなかった」としか答えようがない』(掲載開始日:2008年2月1日)

吹越 満(ふきこし・みつる)
1965年2月17日生まれ。青森県出身。
19歳で上京し、旗揚げして間もないWAHAHA本舗に入団。その後も劇団活動のかたわら、ソロとしてさまざまなパフォーマンスを展開。99年にWAHAHA本舗を退団した後も、映画『SF サムライ・フィクション』、『たそがれ清兵衛』、『母べえ』、『リアル鬼ごっこ』などの映画をはじめ、テレビドラマ、舞台など多方面で活躍している。

「とんでもない劇団に入ってしまった」と気づくのは、ずっと先のことでした (吹越 満)

WAHAHA本舗のオーディションを受けたのは、まったくの偶然で。

実は青森から上京してすぐ、別の劇団のオーディションを受けているんですが、あっけなく落ちたんです。それで数週間くらい、バイトをしながらブラブラしているとき、たまたま旗揚げ公演を見て、「入団したいんですけど、入れてください」と電話したのがオーディションを受けたきっかけ。

後から聞いた話では、そのとき15人の応募があって、やってきたのが7人だったそうです。で、採用されたのが僕と、後に「WAHAHA本舗の歌姫」として活躍することになる梅ちゃん(梅垣義明)のふたりでした。

この劇団は、他と比べて特殊な劇団でして、まず公演前の稽古場に台本がないんです。脚本家の執筆が遅れているとか、そういうありがちな理由ではありません。

稽古場にメンバーが集まって、「さぁ、どういう芝居をやろうか」と話し合うところからすべてが始まるんです。で、誰かが「こういうの作ってきたんだけど」とアイデアを出せば、その場で配役を決めて演じてみせて、それが面白いか面白くないかをディスカッションしながら作っていく。

とにかく、こうしてゼロから芝居を作っていくというのは大変なことなんですが、当時の僕はまったくのシロウトでしたから、自分がとんでもない劇団に入ってしまったと気づくのは、それからずっと先のことでした。

「ソロ・アクト・ライブ」を始めたのは、本公演での大失敗がきっかけ (吹越 満)

僕は、地方からやってきた劇団員のくせに、それほど熱心なアルバイターではなかったんですが、それは、いかに面白いアイデアを出せるかということを毎日、必死で考えていたせいかもしれません。

本当にこのころは、アイデアをくれる人がいたら、その場で1万円払ってもいいとさえ思ってました。

入団から3年くらいたったある日、本公演で僕がひとりで演じるネタをまかされたんです。
もともと自分が発案したネタではなかったけれど、「お前、やってみる?」と演出に誘われて、自分なりのアレンジを一生懸命考えて公演に臨んだんですが、これが、まったく受けなかったんですね。

それでも東京公演の何日間はなんとかやり続けたんですが、さすがに地方公演ではその場面がまるまるカットされてしまった。

落ち込みましたね。笑いを取れなかった自分が恥ずかしかったし、まわりから指摘される前に「この場面、カットしてください」と申し出るくらいのことに気づけなかった自分が不甲斐なかった。

それで、みんなの前で、「自分ひとりでライブをやってみようと思います」と宣言しちゃった。 引っ込みのつかないところに自分を追い込んで、そこで何ができるのかを見てみたかったのかもしれません。

実はそのライブが、今につながる「フキコシ・ソロ・アクト・ライブ」としてシリーズ化していくわけですけど、最初はそのつもりではなかったんです。というのも、大風呂敷を広げてはじめたそのライブは、自分では決して納得することのできない、大失敗のライブでしたから。

たったひとりのライブをやり続けることで、自信がついたし、鍛えられた (吹越 満)

一度ならず、二度も失敗を重ねてどうなったかというと、今度は隔月くらいのペースでライブハウスを押さえ、無理矢理にでも新作をかけ続けてみるという無謀なことになってました。

そうなると、キチンと完成した新作を隔月で発表していくなんてのは絶対に無理な話で、まだアイデアの段階でしかないものをお客さんの反応を見ながらかけていかなきゃならない。

でも、今考えてみればこの経験は僕にとってのターニングポイントともいえる大きな体験でした。 というのも、その結果、今までの自分からは絶対に出てこなかったような表現方法が蓄積されていきましたから。

もちろん、その中には、未完成のまま蓄積されてしまったものもあるんだけど、そうやって、いいこと悪いことの両方がたくさん出てきたことで、「オレって、こういうのが好きなんだな」ってことが明確に見えるようになった。 まぁ、途中から年1回くらいのペースになったとはいえ、このライブもとうとう19回目を迎えることになったというのは自分でもあきれますけどね。

こんなに大変なことをなぜ続けてきたのかと聞かれれば、「辞めるきっかけがなかった」としか答えようがない。本当に、公演では毎回辛い思いをするんですけど、やり終えてみればやっぱりホッとするんです。それで、「じゃあ、今度は何やろうか」と考えている。

ある意味、馬鹿なんですけど、その馬鹿さ加減を磨かれたおかげで、僕はこの俳優という仕事をここまでやり続けているのかもしれません。

吹越 満さんへQ&A

Q:最近、読んで面白かった本は?
A:福永信さんの『コップとコッペパンとペン』。これが最近ではヒットでしたね
Q:初めて感動したお芝居は?
A:やはりWAHAHA本舗の入団のきっかけとなった旗揚げ公演『村の力』ということになるんでしょうね。
Q:最近、ハマってることは?
A:趣味って、ないんです。特に公演前の2~3カ月前は、稽古場にこもってネタを考える以外、何にもできないんです。

これから演劇を楽しもうと思っている人へ

19歳で上京したころ、「オレはつかこうへいの『蒲田行進曲』の公演をリアルタイムで見たんだ」なんて、先輩たちにさんざん自慢されてチクショーと思ってましたけど、芝居って、同じ時代を生きている人しか共有できないものがあると思うし、仕方のないことなんですよね。

だけど、それが醍醐味なんであって、今の時代は、今の時代の芝居を思いきり楽しんでほしいですね。

これから演劇をしようと思っている人へ

僕みたいな地方出身者の場合は特にそうですけど、田舎の親からは「いつ辞めるんだ」と言われ続けることがあるかもしれない。でも、それは仕方のないことであって、応援してくれる人がいないからといって文句を言うのはおかしいと思わなきゃいけない。

実は上京する前、僕は青森の知人に「25歳までは頑張って、それでダメだったら帰ってくるつもりだ」と言ったんだけど、まわりに25歳をすぎても芝居を続けている人はたくさんいました。「あの約束は、守れないかもしれない」と直感しました。

なんだか、まったく役に立たない話で申し訳ないけど。

吹越 満さんの次回公演情報

フキコシ・ソロ・アクト・ライブ『(タイトル未定)』の画像画像を拡大する
フキコシ・ソロ・アクト・ライブ 『(タイトル未定)』 ~このライブのタイトルはタイトル未定です~
2008年2月21日~3月3日 全国公演

19回目を迎えるソロ・アクト・ライブは本人曰く、「今回は変なものになるんじゃないかって感じがしています」とか。

この春は、フキコシワールドにどっぷりはまれ!

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