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建築設計の現場で iPhone はどのように活用されているか -- 佐藤総合計画に話を聞く

japan.internet.com 編集部
 
 
ビジネスパーソンならば誰もが持つようになったスマートフォン。企業が社員に支給する備品としてスマートフォンを採用するケースも増えてきているが、実際のビジネスの現場ではどのように活用されているのだろうか。建物の設計・デザインなどを手掛ける株式会社 佐藤総合計画 執行役員で建築家の笠井 隆司氏と同社総務室の小池 大輔氏にお話を伺った。

佐藤総合計画は、早稲田大学の大隈講堂の設計を手掛けた佐藤武夫氏が1945年に創業し、今年で68年になる大手建築設計事務所。ホール、文化・教育施設、公共施設などの設計に強く、国内外の数多くの賞を受賞。誰もが知るところでは、東京ビックサイトの設計を手掛けた企業として有名だ。同社では、約280名の従業員のうち業務で外出することが多い営業や建築士を中心に、約200台の iPhone 5 を導入したという。

株式会社 佐藤総合計画 執行役員の笠井 隆司氏(左)と同社総務室の小池 大輔氏(右)
株式会社 佐藤総合計画 執行役員の笠井 隆司氏(左)と同社総務室の小池 大輔氏(右)

● なぜ、iPhone 5 の導入を決めたのか

笠井氏によると、業務用携帯電話の必要性は以前より感じており検討を重ねていたが、東日本大震災の発生による緊急連絡手段の必要性や社内からの要望、社員の日常業務における個人所有のスマートフォンの活用実態などを踏まえて、社用スマートフォンの導入を決定したのだという。「建築業界的には実は PHS を利用する人が多いが、メール中心のコミュニケーションでしかも CAD データ(設計図面)など大容量のデータをやりとりするためにはスマートフォンが必要だった」と笠井氏は語る。

では、なぜ iPhone 5 の導入を決めたのだろうか。

ひとつは、コストだ。200台分の通信コストを企業が負担するというのは大変なことであり、可能な限りコストは低く抑えたいもの。同社は社内の固定回線で KDDI を利用しており、iPhone 5 とセットで通信料金が割引になりコストが大幅に抑えられるという点が、KDDI 版 iPhone 5 導入の決め手のひとつになった。

そしてもうひとつの要因が、通信速度。KDDI 版 iPhone 5 を導入して、「au 4G LTE」の通信快適性には多くの社員が満足している様子で、「KDDI は 3G 回線も十分快適だったが、LTE はそれ以上。まさかここまで LTE が繋がるとは導入当初は想像していなかった」と笠井氏も語る。一方、小池氏は「テザリングが利用できるのが大きい。テザリング時の通信速度も十分速く、モバイル Wi-Fi ルーターを解約してしまった社員もいるほど」と仕事現場の様子を語ってくれた。

ちなみに、ソフトバンク版 iPhone 5 も検討に挙がったが、“繋がりやすさ”への不安から導入を見送ったとのこと。「業務は全国で展開しているので、繋がらないエリアがあると困る。特に東北の事務所からは“東北では全然繋がらないから見送ってほしい”と要望が来た」と笠井氏。社員が iPhone を利用して業務連絡や大容量データのやり取りをするまでには安定した高速通信環境は欠かせないものであり、この点の信頼性が大きな決め手になったようだ。

ハイスペックで、かつ導入コストが高くない点などの条件に当てはまる機種としては、KDDI の Android スマートフォンも候補に挙がったようだが、iPhone 5 に決めたきっかけは“社員の声”。社員の中には個人的に iPhone を活用している人も多く、社員にアンケートをとった結果 iPhone 5 を導入することにしたとのこと。

● 設計事務所ならではの iPhone 5 活用術

では、同社の社員はどのようにして iPhone 5 を業務に活用しているのだろうか。笠井氏は、「端末を導入するだけでは意味がない。重要なのは様々なアプリを活用して、それをどう活かすかだ」と語り、社員が自主的に活用法を生み出しているほか、社内では業務に活用できる便利なアプリの情報提供を呼び掛けているという。「iPhone の使い方は、社員が見つけ出してくれる。特に、若い世代のデジタルリテラシーに期待している。今後は社員の活用法や便利アプリを社員全員で共有できる仕組みを作っていきたい」(笠井氏)。

具体的に、設計事務所“ならでは”の視点で活用されている便利なアプリをいくつか紹介していただいた。

ひとつは、「123D Catch」(AutoDesk)という写真加工アプリ。特長は、写真データを解析して自動的に 3D の画像を生成することができるという点だ。建築設計の場合、デザインスケッチや CG などを元にして、紙やプラスティックなどで建物の縮小モデルを制作することでデザインの詰めを行うが、このアプリで簡単に細部まで確認できる 3D グラフィックを制作できるため、縮小モデルの作成や依頼主に持っていく手間が大幅に省けた。

写真を簡単に 3D 化できる「123D Catch」
写真を簡単に 3D 化できる「123D Catch」

もうひとつは、360度のパノラマ写真が簡単に撮影できる「PhotoSynth」(Microsoft)というアプリ。スマートフォンのカメラでパノラマ写真を撮るとなかなか上手くいかない場合も多いが、このアプリは何も気にせず周囲の写真をくまなく撮影すると自動的に美しいパノラマ写真に仕上げてくれる。同社では建築現場の周囲を写真に収めて依頼主に報告することもあるが、このアプリであれば特に難しい加工をしなくてもパノラマ写真が撮影でき、仕事の効率が上がるのだ。

簡単な操作で360度のパノラマ写真が撮影できる「PhotoSynth」
簡単な操作で360度のパノラマ写真が撮影できる「PhotoSynth」

そして、iPhone 5 の基本機能の中で役に立っているのが、ビデオ電話機能「FaceTime」だ。建築現場で施工の様子をすぐに確認したい場合など、音声通話では伝えきれない場合や現場をイメージできない場合も多い。そこで「FaceTime」を使用すれば施工現場を相手の画面に映しながら施工の確認ができるので、とても役に立つのだ。

iPhone 5 の導入によって生まれたシナジー効果について、笠井氏は「社員の想像力やアイデアが豊かになった」と語る。iPhone 5 の活用法を社員それぞれが考案し実践することでリテラシーが高まり、業務の効率化へと繋がる。ただ端末を与えてその先の活用までを促進しない企業は少なくないが、社員全員で高い意識を持って“道具の使い方”を模索すれば、それは業務上大きな効果を生み出す。「今後も更に便利なアプリを探し出して、業務に活かしていきたい」。

● iPad の導入を進めて、ビジネスのペーパーレス化を実現したい

このように、iPhone 5 の導入で業務に様々な効果を生み出している同社だが、現在は新たに iPad の導入を検討しているという。

同社にとっては業務の効率化だけでなく社員との連絡手段の確保という大きな目的があったためスマートフォンを導入したが、そもそも設計の現場ではより大画面で図面やグラフィックの閲覧ができる iPad のほうが、業務がはかどる場合もあるのだ。

既に社員の中には個人所有の iPad を業務で活用している場合も多いようで、「今後社員のニーズを踏まえて iPad の導入を進めていきたい。iPad には Wi-Fi 版とセルラー版があるが、社員によってニーズは異なるが建築現場で利用することが多い場合にはセルラー版が有効だろう」と笠井氏も語る。大画面の利点を活かして、図面やグラフィックの閲覧やクライアントやスタッフ間のコミュニケーションを豊かにしたい考えだ。

そして、同社が考える iPad 導入のもうひとつの目的が、業務のペーパーレス化だ。建物の建築には材料・設備ごとに数多くの企業が関わっており、その分だけカタログも膨大になる。そのカタログをデジタル化して iPad で持ち歩きクライアントや建築現場で活用するだけで、スタッフの負担は大きく軽減されるのだ。「大画面を活かした閲覧やカタログのペーパーレス化、これに加えて編集・制作という点でノートパソコンと同様の生産性が確保できれば、“ノートパソコンは不要”という社員も現れるのではないか」と笠井氏は iPad の導入に期待を寄せた。


笠井氏のお話を伺っていて印象的なのは、端末を「導入する」だけでなく「活用する」という点を見据えた検討・導入を一部の人だけでなく多くの社員が関わって行っているという点だ。iPhone にしても iPad にしても、企業が導入を決めて社員に買い与えること自体は難しくはない。しかし重要なのは、導入したその先でどのような生産性の向上を実現するかということであり、それを社員も自覚しながら業務で iPhone や iPad を活用することなのだ。笠井氏は「今後は iPhone や iPad を使いこなせる若い人の知恵や意見を活用して、今後の業務を更に変えていきたい」と語る。iPhone や iPad は今後個人のライフスタイルだけでなく、企業の組織や業務にもイノベーションを生み出すのかもしれない。

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