建設住宅性能評価書は必要か?


 住宅性能表示制度は、平成12年4月1日に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(品確法)に基づく制度です。

品確法制度の骨子は次の3点。
1.瑕疵担保責任(10年間の保証義務)
2.住宅性能表示制度
3.紛争処理体制の整備

「建設住宅性能評価書を取得(完成済の物件)」「建設住宅性能評価書を取得予定(建設中の物件)」のマンションの方が安心です。

 設計住宅性能評価書を取得だけでは、安心できません。(設計段階で予測できる範囲の評価なので、気休めにしかなりません)

 建設住宅性能評価書を取得のマンションか、否かを確認して下さい。

設計住宅性能評価書

※設計住宅性能評価のみしか取得しない売主(販売業者)さんもいるので、要注意!!

 住宅性能表示制度とは、共通の尺度によって、9分野29項目(細目)について国土交通大臣指定の第三者が客観的に住宅を評価し、その結果を等級・数値によって表示しようというものです。
 この制度によって、これまで外観からはよく判らなかった、マンションの耐震性能や構造躯体の劣化軽減対策などが、等級という具体的な数値で表示されることになりました。
 建築基準法に適合することで最低グレードである等級1を得ることができる。

 建設住宅性能評価書を取得するためには、当然に費用がかかりますが、1戸当たり4万円〜6万円程度(建設業者の書類作成、検査立会手数料込み)です。

(財)北海道建築指導センター
18戸の共同住宅の場合
1.設計評価申請料・・182,000+評価戸数18戸×4,000 =254,000 円
2.建設評価申請料・・検査回数4回×59,000
 +評価戸数18戸×(3,000+4,000)=362,000 円
1.設計+2.建設=254,000円+362,000円 = 合計 616,000円
1戸当たり  616,000円÷18戸 = 34,222円

(建築確認申請を同一の検査機関で実施した場合に別途割引もあります。)

 9分野のうち、音環境に係る評価は必須項目ではなく選択項目となっています。
 販売業者によっては音環境に係る評価を取得していない場合もあるようです。つまり、8分野の評価しか取得しなくても建設住宅性能評価を取得の住宅となるのですが、この音環境に係る評価の手数料は、1戸当たり千円程度の追加費用のようですので、音環境に係る評価を取得していない業者は、防音に自信がないのでしょうか?音環境に係る評価を取得している物件を優先したいものです。

音環境に係る評価手数料(※日本ERI株式会社のホームページより
1タイプに付 設計性能評価 6,000円
建設性能評価 6,000円

(同タイプが12戸あれば、1戸当たり、1,000円)


建設住宅性能評価書 建設住宅性能評価書を取得するメリットは

〇売主との売買契約に関連するトラブルが発生した場合に、1件につき1万円で「指定住宅紛争処理機関」(各地の弁護士会)が迅速・公正に対応することになっています。

〇金融機関の住宅ローンの優遇を受けられる場合もある。
   (金融機関によって違いがあります)

〇売主との地震に対する強さの程度に応じた地震保険料の割引がある。

※上記メリットは、設計住宅性能評価だけでは受けられません。



建設住宅性能評価書を取得することによるデメリットは

 1戸当たり4万円〜6万円程度の費用がかかり、購入価格に上乗せされる。
 しかし、2千万円以上の買い物をするのですから、0.2〜0.3%の費用でしかありません。メリットを考えれば、万が一の時の安い保険料と考えられる範囲内ではないでしょうか。また、地震保険料の割引もありますので、まったくの無駄金でもありません。



建設住宅性能評価書を取得しようとしない分譲会社にはどのような考えがあるのか?

〇1戸当たり4万円〜6万円程度の費用(検査機関手数料+建設業者の書類作成+検査立会のロス)がかかり低価格を売り物にしている分譲会社にとっては負担になる?

〇住宅建設技術のレベルが明らかになってしまうので、技術力に自信のない会社にとっては、評価書は迷惑? (評価書に、最低グレードの等級1が並ぶ?)

〇いわゆる「手抜き工事」または、コストダウンのために「手抜き」に近い低レベルな工事ができなくなってしまう?


建築基準法の第一条は、下記のようになっています。

『この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする。』
建築基準法を守って建てられているという事だけでは、最低の基準をクリアしているだけです。(この建築基準法すら守られていない建物は、・・・・)




性能の表示項目の9分野

表示項目


1.構造の安定(地震などに対する建物全体の強さ)
 地震・強風・大雪などが起きた時の倒壊のしにくさや損傷の受けにくさを評価。

耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)等級(1〜3)
耐震等級(構造躯体の損傷防止)等級(1〜3)
耐風等級(構造躯体の倒壊防止および損傷防止)等級(1〜2)
耐積雪等級(構造躯体の倒壊防止および損傷防止)等級(1〜2)
地盤又は杭の許容支持力およびその設定方法設定方法の明示
基礎の構造方法及び形式等形式等の明示

例:耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)
等級1
 建築基準法に定められている地震に対する倒壊防止基準を満たしている。
 数百年に一度といった、極めてまれに発生する地震(震度6強から7の地震)に対して、倒壊・崩壊しない。
等級2
 等級1の1.25倍の地震力に対して倒壊・崩壊しない。
 学校や病院など、多数の人が利用する施設と同程度の強度。
等級3
 等級1の1.5倍の地震力に対して倒壊・崩壊しない。
 災害時に防災拠点となる施設や放射性物質貯蔵施設と同程度の強度。

※ 表示項目の多くは、等級や数値で表現されていますが、すべてに最高ランクを要求することは合理的ではありません。販売価格、購入者の皆さん各々のライフスタイル、デザインや使い勝手など、性能表示項目以外の希望を考慮しつつ、皆さんにもっとも適した性能の組み合わせ(どの性能を重視するか?)で考えるべきです。
 表示項目のなかには、一方を良くすると別の項目の性能が下がるなど、反対の結果になるものがあります。たとえば、採光の条件を良くするために、窓を大きくすると、音環境や省エネルギー性は悪くなります。


2.火災時の安全(火災に対する安全性)
 住宅の中で火事が起きたときに、安全に避難できるための、燃え広がりにくさや避難のしやすさ、隣の住宅が火事のときの延焼のしにくさなどを評価。
 等級が高いほど火災に対する安全性が高いことを意味します。

感知警報装置設置等級(自住戸火災時)等級(1〜4)
感知警報装置設置等級(他住戸火災時)等級(1〜4)
避難安全対策(他住戸火災時・共用廊下)等級(1〜3)
脱出対策(火災時)該当する脱出対策等の明示
 (3F以上のみ)
耐火等級(界壁及び界床)等級(1〜4)
耐火等級(延焼のおそれある部分[開口部])等級(1〜3)
耐火等級(延焼のおそれある部分[開口部以外])等級(1〜4)


3.劣化の軽減(柱や土台などの構造駆体等の耐久性)
 年月が経っても土台や柱があまり痛まないようにするための対策がどの程度されているかを評価。等級が高いほど柱や土台などの耐久性が高いことを意味します。
 鉄筋コンクリート造の場合は主に柱や梁のコンクリートがもろくならないための対策、鉄骨造の場合は主に鉄の部分が錆びにくくする対策を評価します。

○劣化対策等級(構造躯体等)等級(1〜3)

例:劣化対策等級(構造躯体等)
等級1
 建築基準法に定められている対策をしている。
等級2
 通常想定される自然条件及び維持管理の条件の下で2世代(おおむね50〜60年)まで、大規模な改修工事を必要とするまでの期間を伸長する対策あり。
等級3
 通常想定される自然条件及び維持管理の条件の下で3世代(おおむね75〜90年)まで、大規模な改修工事を必要とするまでの期間を伸長する対策あり。

※ 住宅の性能は、地域の気候など環境の条件ばかりでなく、住まい方や維持管理の仕方の違いによって大きく影響を受けるものです。それぞれの項目では、通常予測される条件が想定されています。その想定が異なった場合、結果が違ってくることもあります。
 住宅の性能は、特に地震や火災などの災害がなくても、時間とともに、いわゆる「経年変化」をします。この変化が進む早さや程度を正確に予測することは、現在の科学水準では難しいと云われています。そのため、評価された性能項目の多くは、評価を行った時点(完成段階)のもので、経年変化については配慮されていません。


4.維持管理への配慮(配管の清掃や取り替えのしやすさ)
 水道管やガス管、排水管といった配管類は一般に構造躯体の修繕などを実施するよりも早く取り替える必要があります。そこで配管の点検や清掃のしやすさ、万一故障した場合の取り替えのしやすさなどを評価。等級が高いほど配管の清掃や取り替えがしやすいことを意味します。

○維持管理対策等級(共用配管)等級(1〜3)
○維持管理対策等級(専用配管)等級(1〜3)


5.温熱環境(省エネルギー対策)
 暖房や冷房を効率的に行うために、壁や窓の断熱などがどの程度されているかを評価。等級が高いほど省エネルギー性に優れていることを意味します。

○省エネルギー対策等級等級(1〜4)


6.空気環境(シックハウス対策・換気)
 接着剤を使用している建材から発散するホルムアルデヒドがシックハウスの原因のひとつとされているため、接着剤を使用している建材などの使用状況を評価。等級が高いほどシックハウス対策・換気が有効に行われていることを意味します。

ホルムアルデヒド対策(内装)内装に使用する材の明示
 ホルムアルデヒド放散等級
 (材料毎に1〜4)
全般換気対策該当する全般換気対策の明示
局所換気設備各所毎に、該当する設備の明示

※ 検査は、設計図書通りに施工されているかどうかの検査。ホルムアルデヒド対策等級で言えば、その基準に適合している材料が設計通り使われているかという検査。
 特に機器を持ち込んで検査をするわけではありません。

 建築工事が完了した時点で、空気中のホルムアルデヒド等の化学物質の濃度などを実際に測定することも可能です(ただし、別途料金が必要)。
 シックハウス問題を気にされる方は販売業者さんと相談してみて下さい。測定価格は、住宅性能表示制度取得住戸の場合、次表のようになっています。

化学物質の濃度測定(※日本ERI株式会社 http://www.j-eri.co.jp/
《簡易測定法》(測定バッジ・1回測定)
住  戸  数
(同時に測定できる住戸)
ホルムアルデヒド
(1住戸あたり)
ホルムアルデヒド+VOC
(1住戸あたり)
30,000円50,000円
25,000円46,000円
3〜523,000円42,000円
6〜1021,000円38,000円
11〜3019,000円36,000円
31〜18,000円
《空気採取法》(1住戸・2回測定)
ホルムアルデヒドのみ130,000円
VOC 追加1種類あたり15,000円

※ 日本ERI株式会社さんでは、住宅性能表示制度とは別に、「評価住宅」以外の住宅及び一般建物についても室内空気中の化学物質の濃度測定を実施しているようです。費用は、上記価格表の1割強の割増料金となるようです。


7.光、視環境(窓の面積)
 東西南北及び上方の5方向について、窓がどのくらいの大きさで設けられているのかを評価。

単純開口率単純開口率の数値表示
(居室の外壁又は屋根に設けられた開口部の面積の床面積に対する割合を記載)
方位別開口比方位別開口比の数値表示
(居室の外壁又は屋根に設けられた開口部の面積の、東・西・南・北・天上、各方位毎の比率を記載)


8.音環境(遮音対策)
 上の住戸からの音や下の住戸への音、隣の住戸への音などについて、その伝わりにくさを評価。等級が高いほど遮音性能が高いことを意味します。

重量床衝撃音対策等級等級(1〜5)
重量床衝撃音対策重量床衝撃音の遮断の程度をスラブ厚換算
軽量床衝撃音対策等級等級(1〜5)
軽量床衝撃音レベル低減量(床仕上げ構造)軽量床衝撃音の低減の程度
透過損失等級(界壁)等級(1〜4)
透過損失等級(外壁開口部)東西南北毎 等級(1〜3)

※ 先ほども説明しましたが、音環境に係る評価は必須項目ではなく選択項目となっています。販売業者によっては音環境に係る評価を取得していない場合もあるので要注意!!


9.高齢者等への配慮(高齢者や障害者への配慮)
 住宅内にバリアフリーといわれる工夫がどの程度実施されているかを評価。
 等級1は「建築基準法に定める移動時の安全性を確保する対策」にあたり、等級3以上は、介助のしやすさや介助式車椅子利用者への配慮がポイントになります。

高齢者等配慮対策等級(専用部分)等級(1〜5)
高齢者等配慮対策等級(共用部分)等級(1〜5)



※ 表示される等級や数値は、設計段階で予測できる範囲内のものとされています。しかし、工場生産される商品と違い、屋外での建築となる住宅の性能は、様々な要因によってばらつきを生じさせることがあります。同一の設計図書に基づいて建てられた住宅であっても、どのような性能が達成されるかを正確に予測することは、最新の科学をもってしても難しいものです。そのため、ここで決められた、いくつかの性能については設計段階での予測精度に乏しいものもあります。その上での評価ですから、個人個人の実感とは異なる結果になる可能性があります。


※ 住宅の性能は、地域の気候など環境の条件ばかりでなく、住まい方や維持管理の仕方の違いによって大きく影響を受けるものです。それぞれの項目では、通常予測される条件が想定されています。その想定が異なった場合、結果が違ってくることもあります。


※ 住宅の性能は、特に地震や火災などの災害がなくても、時間とともに、いわゆる「経年変化」をします。この変化が進む早さや程度を正確に予測することは、現在の科学水準では難しいと云われています。そのため、評価された性能項目の多くは、評価を行った時点(完成段階)のもので、経年変化については配慮されていません。


 平成12年の住宅性能表示制度のスタート時には、新築住宅だけを対象としていましたが、平成14年8月に既存住宅(中古住宅)を対象とした性能表示制度についての基準類が公布・施行されました。
 既存住宅の場合、新築住宅を対象とした性能表示事項(9分野29項目)のうち、劣化事象等による影響を何らかの形で反映でき技術的に信頼度をもって評価が可能な項目に限定して6分野21項目が設定されています。

※ しかし、分譲マンションの場合、共用部分の評価があるため、各住戸の所有者個人だけでは評価申請のための準備は進められません。また、費用の負担も大きいので、とりわけ大規模なマンションでは現在は現実的ではありません。


 平成18年4月1日以降に住宅性能評価の申請がなされる住宅については、「防犯に関すること」が追加され、10分野になります。

 開口部の侵入防止対策のため、侵入を防止する性能が確かめられた部品を開口部に使用している場合に、その旨を表示する項目などが追加されるようです。
 実際に「防犯に関すること」の評価を付けて販売される物件は、平成18年末くらいからになるものと思われます。




   

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