ここに注目! 「成年後見制度 不正防止に新手法」2012年02月01日 (水)

友井 秀和  解説委員

認知症の高齢者などに代わって、家族や第三者が財産を管理する成年後見制度で、不正を防ぐ新しい仕組みが、今月(2月)から導入されます。友井解説委員です。

Q1:不正防止とは、何が問題になっているのですか。

A1:後見人の使い込みがあるのです。
成年後見制度では、判断能力が十分ではない本人に代わって、後見人が、財産を守り、介護サービスなどの契約を結びます。
ところが、本人のために財産を守っているはずの後見人が、管理している財産を自分のために使ってしまうケースがあります。
親族が、預貯金を引き出して自分の借金返済にあてたり、生活費や遊ぶ金に使ったりするような場合です。
裁判所が調べたところ、去年3月までの10か月間で、悪質なケースが、184件、18億円以上にのぼり、ほとんどは、親族が後見人の場合でした。

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Q2:けっこうあるのですね。

A2:制度の利用は10万件以上ありますので、問題があるケースばかりではないのはもちろんですが、不正を見過ごすことはできません。
今回始まる仕組みでは、裁判所や弁護士、司法書士などが必要だと判断した場合には、本人の財産のうち、日々の生活に使うお金は別にして、普段使わないお金を、信託銀行などに預けます。
急に入院費用がかかる、というような時には、家庭裁判所の承諾を得てから払い戻します。
裁判所が、事前にチェックできる、というわけです。

Q3:効果がありますか。

A3:大きな金額の使い込みを防ぐ、という面で、効果が期待されます。
ただ、手続きが面倒だから必要な金を使わない、というようなことがあったら困ると心配する声もあります。
使い込みは防がなくてはなりませんが、財産は、使わずにとっておけばいい、というものでもありません。
本人の財産が、本人のために使われるようにすることが大事なわけです。

Q4:どうすればいいのですか。

A4:新しい仕組みの検証は欠かせません。
それに、専門家からは、後見人の任期を区切ったらどうかなど、後見人の権限をさらに小さくすべきだという指摘があります。
高齢化が進んで、成年後見制度を使う人が増えることは確実ですので、利用の拡大に対応できるよう、制度や態勢を常に改善し、見直していく必要があります。
成年後見制度全体をより良くする努力の重要性は、ますます大きくなります。

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