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パイロットの話 コックピットから

2011.12

コックピットから その15 「AIR to AIR GUN」

【AIR to AIR GUN】

今回は、GUNによる空中戦についてお話しましょう。

第2次世界大戦までは、飛行機同士の戦いは鉄砲だけでしたが、それ以降はミサイルが加わり、今ではミサイル戦が主流になりました。このように、搭載武器は時代とともに変化しています。さて、30年ほど前のお話ですが、私が米国でF-4に搭乗したときの出来事です。

写真:GUN

1対1の空中戦訓練でした。相手とヘッドオン(正面同士)で交戦に入りました。相手が私から見て、右に急旋回したのが見えました(相手としては左急旋回)。そこで私も、右に上昇急旋回。上昇すると速度が減り、 旋回半径が小さくなって、 相手の後ろに入りやすくなります。180度回ると、 また相手とヘッドオンですれ違います。この瞬間に旋回を切り返して、お互いに逆の旋回に入ります。これを繰り返して、S字を描きながら絡み合うのがシザースです。

この結果、僅かでも相手の後ろに入れれば、GUNを撃つことができます。運よく私は、相手の後ろ2000フィートに位置できました。「そこでGUNを選択!FOX-III!」とCALLしようとすると、後席の米軍のパイロットが大笑いするのです。「ちみは何をするの?」

私が日頃乗っていたのはF-4EJ、米国で乗ったのはF-4D、ほとんど同機体ですが、決定的に違ったのは、F-4DにはGUNが装備されていないのです…(大汗)。ですから、近接戦で使う武器を持っていないのです。

飛行後のブリーフィングで、飛行隊内は大爆笑!「さすが日本人はすごい!空中で飛行機から出てナイフで戦うのかと思った」と…。

写真:GUN

ベトナム戦争での教訓から、F-4E以降の戦闘機には、20ミリメートルの機関砲を搭載するようになりました。その多くは、油圧もしくは電動モーターで作動する回転式機関砲です。砲身は6門あり、これが回転しながら弾を発射します。

発射速度は毎分6000発程度となっています。弾自体は、マッハ3~4ぐらいで飛んでいきます。毎分6000発ですから、1秒間に100発撃ちます。射撃感覚は「バン・バン・バン」という感じではなく、「ブーン」という振動と音になります。また、1回の射撃は1秒間ほどになります。

戦闘機のGUNの照準は、先ずは相手をレーダーでロックオンして距離を測ります。 次に自分の機体にかかっている荷重から、相手の運動を推測します(相手を追い続けていると仮定して計算)。その状態で、着弾時間を計算して、その時間で移動するであろう相手の予想位置に重力落下分を加えて、HUD(ヘッドアップディスプレー)に 照準点として表示します。パイロットはその照準点を、実際の目標の飛行機の上に乗せることで、銃の方向は相手の将来位置に着弾するようになります。

戦闘用計算機は正確なデータさえ与えれば、確実に正解を出します。第2次大戦中に戦った戦闘機はレーダも積んでないので、曳光弾を見ながらの射撃でしたが、通常弾と曳光弾では、その重さも空力特性も違っているので、弾道が違ってきます。実際は参考程度にしかなりませんでした。結局、空中での射撃は100パーセントパイロットの勘で撃っていましたので、まさに神業です。

このように考えて行くと、計算機制御の機関砲って、なんか当たりそうですが、そうは問屋が許してくれないのです。

音速の3倍で飛んでいる弾は、1秒間で100発撃っても、その弾の間隔は約1000メートルに100発ですから、10メートルおきに1発存在している計算になります。これは直線飛行をしているときの計算ですが、実際は急旋回して戦闘するので、角速度がこれに入ります。戦闘加重時は50メートルに1発程度の密度になります。戦闘機の大きさはせいぜい20メートルほどですから、戦闘機から見れば、弾はかなりまばらな感じで撃たれている感覚になります。

写真:GUN

その上、計算機で行う照準は、その計算と表示に4秒ほどかかります。相手が4秒間安定した機動をしてくれた時は正確ですが、そうでない場合は、最初から照準点は 不正確となります。ですから、4秒に1回何らかの回避機動をすれば、 照準は定まりませんので、 弾の当たる確率はほとんど0パーセントとなります。強いて言えば、もし運悪く相手の弾に当たってしまった時は、日頃の行いのせいかもしれません。

これらをまとめて考えると、ほぼ同性能の戦闘機同士の戦いで、相手をGUNで落とすことは、ほとんど不可能になります。ですから、対空武器としては、GUNはお守り程度の効果があると思えば良いでしょう。

但し、相手が動かないものとなると話は違ってきて、GUNは極めて有効です。相手がトラックならば、100発撃てば50発は当たるでしょうし、全速で走っている戦車でも 30発は当たると思います。相手が駆逐艦程度の船ならば、90発は命中するでしょう。その上、20ミリメートル弾は鉛の塊ではなく、中に火薬が装填されていて、命中後、爆発するので、その威力はかなりなものです。

このように対戦闘機戦闘では、GUNはそれほど有効な装置ではありません。最も有効なのは、ご存知のようにミサイルになります。

(今回の写真はMasato氏のご協力を頂きました。)

次回は、このミサイルについてお話しましょう。

To be Continued...