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最高の自動車を目指したSクラス

先進のテクノロジーを体験

8年ぶりにフルモデルチェンジをした6世代目の新型Sクラスは、最高の自動車を目指して開発された

 メルセデス・ベンツのダイムラー社といえば、世界で最初に自動車を生み出したメーカーだ。

 その最上級車種のSクラスは、自動車を発明したメーカーのフラッグシップという誇りをもって、常に世界のクルマの規範となる性能や機能を体感させてきた。新型Sクラスは今、最新の性能や機能を搭載し、「最高の自動車」を目指して開発された。

 新型Sクラスで、世界最先端の技術として試乗の機会を与えられたのは、インテリジェントドライブと名付けられる安全運転支援機能搭載車である。

 インテリジェントドライブは、中・長距離用と近距離用で周波数帯の異なる2つのレーダーと、ステレオマルチパーパスカメラ、さらには、クルマの後方を認識するマルチモードミリ波レーダーを搭載することにより、衝突事故を未然に防ぐ運転支援機能を大きく進化させている。

運転者のミスを補い、障害物や人との衝突を回避させる機能がいっそう充実した

 特設コースでまず体験したのは、前方の障害物(路地から飛び出してきた他車など)に気付いてブレーキペダルを踏み込んだものの、踏み込みが弱くて衝突を免れないかと思われる場面がまず一つ。ここで新型Sクラスは、衝突を回避するための強力な制動力を発揮できるようブレーキ圧を高め、その飛び出し検知機能は時速72km以下という高速域まで対応している。

 次に、人の飛び出しだ。歩行者に見立てた人形に向かって走り、まず警告が発せられ、次に軽くブレーキが掛かって危険が迫ってくることを知らせるが、それでも運転者が反応しない場合、自動緊急ブレーキが作動し衝突を回避する。まさに間一髪というところだが、都市交通のなかでは突発的な緊急回避が起こり得る可能性は高い。そうした場面で、歩行者を含め、衝突予防安全が大幅に向上していることを実体験した。

前を走るクルマとの車間距離を適切に保ちながら追尾することで、安全かつ効率的な移動を支援する
凹凸としてはかなり大きな段差となる高さ8センチの板を通過するときでも、快適な乗り心地を提供する様子を体験

 続いて、ディストロニック・プラスという運転支援も体験した。まず、前を走るクルマに追従し、真っすぐだけでなくカーブでも追従する機能だ。

 速度調節のアクセルペダルも、進路を変えるハンドル操作もサポートされる機能である。したがって、カーブを曲がる際も、前のクルマに自動でついて行ける。また、車線の白線がある場所では、車線の中央を走行するようサポートしてくれる。さらに、ウインカーで車線変更の意思を示していないのに車線をはみ出しそうになると、まずハンドルに微振動を与え、またメーター表示でも警告し、それでも運転者が反応しなければ、補正ブレーキを使って車線内に自動的に戻す機能が働く。

 車線内走行の維持は、テストコースだけでなく、一般道の狭い道幅のカーブなどでも体験することができた。

 特設コース内でのもう一つの体験は、快適性を向上させるマジックボディコントロールであった。

 これは、フロントウインドーに設置されたステレオマルチパーパスカメラを使い、15メートル先までの路面状況を認識し、凹凸がある場合には、サスペンションの油圧を調節することによって、あらかじめ車体の位置を調整し、凹凸による揺れの影響を最小限にする機能である。

 特設コース内では、高さ8センチの板に乗り上げ、そして下りるという状況が設定され、マジックボディコントロールを働かせた場合と、そうではない場合の両方を体験する。その乗り心地の違いは明らかで、マジックボディコントロールを働かせると、段差を越えるときのドスンという車体の上下動が見事に解消されるのであった。

 このマジックボディコントロールは、一般道でも体験できた。荒れた路面の凹凸をタイヤが乗り越えると、ゴトゴトいう音は耳に届くが、前方視界の目の端に見えるボンネットフードは、ほとんど上下に動かないのである。当然、不快な揺れのない快適な乗り心地が得られたのはいうまでもない。

 ほかにも説明しきれないほどの装備が数々あるが、新型Sクラスが最高の自動車を目指して開発された一端を、この試乗で体験することができた。

 しかも、この新型Sクラスに搭載されているセンサー類をほぼそのまま搭載した実験車両で、ドイツ国内の公道における自動運転の試験走行を行ったという。最高の自動車というだけでなく、未来のクルマの装置が、実はこの新型Sクラスにすでに搭載されているのだ。

 未来を垣間見る(うれ)しさと、先端を()ける誇らしさも覚えるのであった。

究極の快適性を船上で披露

旅客機のファーストクラスのような深いくつろぎを感じさせる助手席側後席の機能

 新型Sクラスが日本に導入されるにあたり、その発表は、〈にっぽん丸〉という客船の上で行われた。まるで、欧米で催されるプレゼンテーションのような、ダイムラー社最上級の新型Sクラスにふさわしい優雅な雰囲気に包まれていた。

 その雰囲気がまさに伝えたのは、新型Sクラスの、人を迎える心地よさ、すなわち快適性の追求である。

 S550ロングという、新型Sクラスでも後席の快適さをより重視した車種には、ショーファーパッケージと名付けられた装備が設定されている。

 その最大の目玉は後席のエグゼクティブシートで、助手席後ろの席は大きくリクライニングでき、レッグレストとフットレストが前方に出てきて、くつろいだ姿勢で座ることができる。さらに、メルセデス・ベンツならではといえるのが、万一の衝突事故の際にも、体が座席から滑り落ちることのないよう、座席のクッション内にエアバッグが収納されており、それで体を座席の定位置に保持することだ。

 また、S550ロングとSクラスのAMG全モデルに、ファーストクラスパッケージの設定があり、こちらは、後席が左右に分かれた2人乗りになる(前席を含めると計4人乗り)。格納式テーブルや、クーリングボックスなども備え、まるで旅客機のファーストクラスのシートのようである。

長距離ドライブなどでの緊張をほぐし、体をリラックスさせる世界初のマッサージ機能

 世界初の機能としては、ホットストーン式マッサージが座席に装備される(前席は、S400ハイブリッド エクスクルーシブ、SクラスAMG全モデルに標準装備。S550ロングにパッケージオプション。後席は、S550ロング、SクラスAMG全モデルにパッケージオプション)。座席背もたれに内蔵された14個のエアクッションによるマッサージ機能に、温熱効果でリラクゼーションを高めるホットストーン式マッサージが組み込まれているのである。6種類のプログラムから、マッサージの仕方を選択でき、一つのプログラムは12〜15分。緊張をほぐしたり、アクティブワークアウトができたり…とくに長距離ドライブでは重宝する機能だろう。

 さらに、香りで脳をほぐし、くつろぎをもたらすのが、エアバランスパッケージだ(S400ハイブリッドを除く全モデルに標準装備。S400ハイブリッドにパッケージオプション)。

 イオン効果を持つ空気清浄機能にパフュームアトマイザーを装備することにより、室内の空気を清浄するだけでなく、パフュームで室内を心地よい芳香で満たす。ただし、短時間で消える芳香を使うので内装や衣服に香りがうつることはない。パフュームは4種類から選ぶことができる。

 ほかにも、室内の雰囲気を演出するマルチカラーのアンビエントライトや、後席でテレビやDVDが楽しめるリアエンターテインメントシステムなど、新型Sクラスは、クルマに乗るそのことに、さまざまな快適やもてなしを与えている。

メルセデス・ベンツとしての確かな基本性能

車体の約半分にアルミニウムを導入し、ホワイトボディで約100キロの軽量化を果たしている

 安全で快適なクルマとして、メルセデス・ベンツが自動車の誕生から127年にわたり築き上げてきた、クルマとしての基本性能には、ゆるぎない物づくりが継承されている。メルセデス・ベンツと名乗る以上、そこに妥協は許されない。メルセデス・ベンツのクルマ作りの哲学は「最善か無か」の一言に尽きる。

 新型Sクラスには、最新の安全性能と、最高の走行性能を実現するための技術が、基本性能として織り込まれている。

 車体の骨格構造は衝撃吸収ボディ構造と呼ばれる、衝突に対する堅牢な骨組みを備えながら、新型Sクラスでは、車体を構成する約半分にアルミニウムを採用し、ホワイトボディと呼ばれる車体の基本構造の部分でおよそ100キロの軽量化を果たしている。軽さは、燃費を向上させるだけでなく、クルマの走りに躍動感をもたらす重要な開発テーマだ。

アウトバーンを持つドイツでは、超高速での空気抵抗の低減も忘れてはならない要素だ

 また、威風堂々、しかも優雅な(たたず)まいの新型Sクラスは、空気抵抗を低減するため、空気抵抗係数Cd0.24という流麗さをそのスタイルにまとっている。高級車として静かな室内に、風を切る騒音は入ってこない。もちろん、空気抵抗の小ささは高速走行中の燃費の改善や走行安定性をもたらす。

 そして、新型Sクラスのベースグレードにハイブリッドを採用したことも、新型Sクラスに込めた、メルセデス・ベンツの意志がつたわる話題の一つだ。もっとも販売台数が多くなるであろうベースモデルをハイブリッドに統一することで、新型Sクラスの販売全体における環境適合性を一気に高めようとしているのだ。

 ハイブリッドの走りも乗り心地も、実に上質で心地よい。走行中、モーターとエンジンと、そして7速オートマチックトランスミッションが、さまざまに制御を行いながら速度にのせていくが、加速も減速も滑らかで高級車にふさわしい走行感覚を堪能することができた。

 また、モーターとエンジンを併用するハイブリッドであることから、ベースモデルといえども静粛性に妥協はなく、また加速においても、モーターの底力を得て速度調節は自在だ。気付くと、感覚的に思っているより、時速20〜30km高い速度領域に入り込んでいる。それだけ、新型Sクラスの走りは滑らかで、かつ動力性能に優れる証しといえる。

 新しいSクラスが登場するたびに、なるほどと思わせる感動や感心がある。それでいて、新型Sクラスでは、さらなる高みにのぼった性能や機能を実感することができた。

 感服するしかない。

 それほど、新型Sクラスには、いちいち納得させられるのである。

 <モータージャーナリスト:御堀直嗣>

2013年11月5日  読売新聞)

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