頭痛や肩こりを緩和する医療機器「パワーヘルス」について、高血圧や糖尿病が治るなどと誇大に売り込んだとして製造販売業者が行政処分を受けた。なぜ、多くの人が信じたのか。

 「妻が若返って色気が出た」「ゴルフやゲートボールがうまくなる」――。

 製造販売のヘルス(東京都府中市)はこんな「効果」までうたい、売り込んでいた。だが電位治療器と呼ばれるパワーヘルスが薬事法で認められているのは「頭痛、肩こり、不眠症、慢性便秘の緩解」だけだ。消費者庁は根拠を示すよう求めたが、同社は資料を提出せず、景品表示法違反(優良誤認)で先月、措置命令を受けた。

 パワーヘルスは1台50万円前後。1981年の販売開始以降の売り上げは約40万台に上る。

 同社は約300カ所の無料体験会場で誇大なセールストークを展開していた。こうした販売手法は創業当時から続いていたようだ。

 10年春、前社長(12年2月に死去)がパワーヘルスの効果について講演した模様を収めたDVDがある。「80歳でも生理が始まり、胸も大きくなる」「脳障害は3カ月前に予知があり、それをキャッチして生体電子が進む。鼻血が大量に出ると脳障害はすべて除去される」と熱弁が続く。

 橋本幸紀社長は朝日新聞の取材に「取締役に就任した04年ごろから薬事法に触れると思い、マニュアルの改訂を進言したが聞き入れられなかった」という。

 これらのDVDは、各地の無料体験会場で上映されていた。1回30分の体験会を一日に数回開き、「健康指導員」と呼ばれる営業員が口頭で説明する。客は口コミで集めていた。