ユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界文化遺産に、世界の絹産業の発展に重要な役割を果たしたとして政府が推薦していた「富岡製糸場と絹産業遺産群」(群馬県)が登録される見通しとなった。ユネスコの諮問機関が「登録が適当」と勧告した。6月15日からカタールのドーハで開かれる世界遺産委員会で登録が決まれば、国内で18件目の世界遺産となる。

 フランス・パリの世界遺産センターが25日(現地時間)、文化遺産の候補を事前審査する諮問機関・国際記念物遺跡会議(イコモス)の勧告内容を日本政府に伝えた。イコモスは遺産候補を「登録」「情報照会」「登録延期」「不登録」の4段階で評価、富岡には「登録」を勧告した。

 富岡製糸場(富岡市)は、1872年に明治政府が設立した官営の製糸場で、国内の養蚕・製糸業を世界トップレベルに引き上げた。近代養蚕農家の原型になった「田島弥平旧宅」(伊勢崎市)、養蚕教育機関だった「高山社跡」(藤岡市)、蚕の卵の保存に使われた「荒船風穴」(下仁田町)と共に、海外から導入した技術を高度化し、世界の絹産業の発展につなげる舞台となったとして、世界文化遺産への登録を目指している。近代以降に建造された産業施設では、国内から初めて推薦された。

 イコモスは、富岡製糸場について「養蚕と日本の生糸産業の革新に決定的な役割を果たし、日本が近代工業化世界に仲間入りする鍵となった」と指摘し、資産の保護措置も「適切に実施されている」と判断を示した。推薦書の主張をほぼ認めており、文化庁は「パーフェクトに近い評価」と受け止めた。