ターミナル駅

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

ターミナル駅(ターミナルえき)とは、鉄道路線の末端に位置する鉄道駅である。終点・終端・端末を意味する単語「ターミナル」(terminal) に由来する。

概要[編集]

路線及び列車運行の発着点であり、本来は駅から路線が片方にだけ伸びる形であるため、頭端式ホーム(行き止まり式ホーム)が用いられることが特徴である。世界最大のターミナル駅として、ニューヨークグランド・セントラル駅が知られる。欧米の大都市では、数ヶ所にそれぞれ別の方向に向かう都市間路線のターミナル駅があり、市内中心部においては路線バス路面電車地下鉄等がそれらの間を結ぶという方式がよく見られる。鉄道が陸上交通の主役であった時代には、ターミナル駅は都市の玄関口としての役割を果たしたが、特に都市間を連絡する長距離列車を主体とすることが多かったヨーロッパの鉄道では壮麗な歴史主義様式の駅舎が建ち、ホーム上には巨大な屋根(トレイン・シェッド)がかけられ、乗降客に強い印象を与えた。映画絵画の題材ともなり、タイトルにも使用される(イタリア映画『Stazione Termini』、日本語題『終着駅』)など、芸術で叙情的に語られる対象ともなってきた。歴史的な駅舎は低層建築であることが多々あるため、近年の再開発により、文化財が失われたり周辺の商業機能を衰退させたりすることが問題となっている。

これに対して日本の大都市では、特にJRの場合、路線の終点・起点であっても他の路線に接続するため行き止まり式の駅は少ないが、後述するように、そうした両方に路線が伸びる形の駅ないしは路線の中間に位置する駅であっても列車等の集積点となる駅、各種交通機関の結節点(ハブ)となる主要駅を「ターミナル駅」と呼ぶのが一般的である。

駅設備としては、地下鉄路線バス等の各種交通機関が多数乗り入れるため、駅前広場連絡改札といった乗り換え施設が整備される。特に主要都市の中心となる駅は、多方面から集まる旅客・荷物をその目的地に応じて円滑に振り分けるハブ機能が求められ、旅客の待合設備、荷物の保管機能、荷役設備、列車やバスの車庫機能など、ターミナル(ハブ)駅として充実した機能を有している。

日本における「ターミナル駅」[編集]

本来は終着駅と同義語であったが、日本の大都市ではJRを中心に行き止まり式の主要駅は少なく、さらに私鉄でも地下鉄との相互乗り入れなどによりその数を減らしてきている。ただし、終着駅としてのターミナルはまた列車等の起・終点であるという性質から、前述のとおり列車等の集積点ともなり、これが転じて、今日の日本の都市部では、線区もしくは営業運行上の起終点駅、終着点でなくても営業列車等の集積がみられる駅を指して「ターミナル駅」という語を用いるのが一般的である[注釈 1]。路線上は中間駅であっても営業上起終点となる駅の例として、函館本線札幌駅中央本線新宿駅鹿児島本線博多駅などがある。

なお、貨物駅の一部には、「○○貨物ターミナル駅」と称する(日本の鉄道駅#貨物駅を参照)駅が存在する。貨物駅は荷役作業を必要とするため、行き止まり式の駅が一般的であったが、着発線荷役方式の登場によって、神戸貨物ターミナル駅のような鉄道路線が駅を貫く貨物ターミナル駅も増加している。

ステーションデパートは郊外の沿線住民を集め、消費を拡大し、収益の増加を図る仕掛けとなっており、阪急電鉄の梅田駅に端を発する。

日本のターミナル駅の例[編集]

東京駅
東海道本線東北本線総武本線と3本の在来線本線、さらに京葉線東海道新幹線東北新幹線の起点となる駅で、以前は中央本線も書類上の起点としていた(運転上は新幹線、東海道線上野東京ライン宇都宮線〈東北線〉・高崎線常磐線)、京葉線、中央線快速総武快速線横須賀線の起点で、東海道線と上野東京ライン、総武快速線と横須賀線の大多数の列車が当駅をはさみ直通運転が行われる)。他線を含めて1日あたり4,000本という発着列車本数は日本最多である。また、東京メトロ丸ノ内線も発着し、東京メトロ東西線大手町駅が至近に位置する。
首都の玄関口という位置づけで設置された駅だが、通過する交通の利便を考慮し、欧米のターミナル駅で多用される頭端式ホームをもつ行き止まり型の駅とはされなかった。かつて東京駅へ乗り入れていた東北本線の線路は新幹線建設の際に一部が撤去されたが、新幹線高架の直上に線路を新設し、上野東京ラインとして宇都宮線・高崎線と東海道線の相互直通運転、常磐線の東京駅・東海道線経由品川駅乗り入れが実現した。
また、JRバスの都内のターミナルの一つとなっており、各地への高速バスも発着している。
将来的には浅草線短絡新線が当駅を通る構想もあり、実現すれば羽田空港成田空港と直結し、空港へのアクセスも向上する。

世界のターミナル駅の例[編集]

台湾[編集]

日本と同様、台湾では都市の中心となる駅に特別な名をつける習慣はなく、通常はその都市の名をそのままつける。

中国[編集]

韓国[編集]

タイ王国[編集]

インド[編集]

ハイダルパシャ駅(イスタンブール)

トルコ[編集]

イギリス[編集]

フランス[編集]

アントウェルペン中央駅(アントワープ)

ベルギー[編集]

ドイツ[編集]

スペイン[編集]

ポルトガル[編集]

  • リスボン
    • サンタ・アポローニャ駅
    • ロシオ駅
ヤロスラフスキー駅(モスクワ)

ロシア[編集]

ウクライナ[編集]

ウクライナではターミナル駅は「ヴォグザール」(Вокзал)と呼ばれ、「スターンツィヤ」(Станція)と呼ばれる普通駅とは言語上で明確に区別される。以下は主要なヴォグザール。

イタリア[編集]

アメリカ合衆国・カナダ[編集]

ニューヨーク・ペン・ステーション(1911年頃)
グランド・セントラル駅(ニューヨーク)

アメリカ合衆国やカナダでは並行する私鉄が多いため、旅客ターミナル駅として「ユニオン・ステーション」(Union Station) と呼ばれる共同使用駅を設置する場合が多く、各主要都市に存在する。List of Union Stationsも参照。

一方で鉄道各社がそれぞれ独自のターミナル駅を持つ場合もあり、例えばニューヨークではペンシルバニア鉄道ペン・ステーションニューヨーク・セントラル鉄道グランド・セントラル駅の2大ターミナルが存在している。またシカゴではユニオン駅のほかにノースウエスタン駅ランドルフ・ストリート駅ラサール・ストリート駅グランド・セントラル駅 (シカゴ)英語版(シカゴ・グランド・セントラル駅)、ディアボーン駅英語版の計6つの旅客ターミナルが過去存在し、うち最初の4駅は2014年現在も長距離列車のアムトラックや近郊列車のメトラの始終着駅として現役である[2]。これら鉄道会社別のターミナルの存在は、鉄道全盛期に一駅だけでは扱いきれないほどに列車が集中していたことが一因となっている[2]

しかしながら、1971年に米国内の長距離旅客列車の大部分がアムトラックに集約されてからはこれらの会社別に存在したターミナルも1つの駅に集約される傾向にある。2014年現在、長距離ターミナルとしての役割は先述のニューヨークではペン・ステーションに、シカゴではユニオン駅にまとめられている。

ルス駅(サンパウロ)

ブラジル[編集]

フリンダース・ストリート駅(メルボルン)

オーストラリア[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 例えば、2005年2月に交通博物館で開催された「東京のターミナル形成史」展では、旧新橋駅(日本初のターミナル)、上野駅(東北線)、新宿駅渋谷駅、旧飯田町駅(中央線)、池袋駅両国駅(総武線)、旧万世橋駅(中央線)、東京駅(以上、開業順)が取り上げられた。

脚注[編集]

  1. ^ 新北京南站進入工程収尾階段
  2. ^ a b 『Rails Americana』 プレス・アイゼンバーン 松本謙一「CHICAGO "Loop"と"Double-deckers" ちょっと立ち寄るシカゴの鉄道散歩」P.18

関連項目[編集]