モーリシャス

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モーリシャス共和国
Republic of Mauritius(英語)
République de Maurice(フランス語)
モーリシャスの国旗 モーリシャスの国章
国旗 (国章)
国の標語:Stella Clavisque Maris Indici
ラテン語: インド洋の星と鍵であれ)
国歌母国
モーリシャスの位置
公用語 正式な制定なしa
首都 ポートルイス
最大の都市 ポートルイス
政府
大統領 アミーナ・グリブ=ファキム
首相 アヌルード・ジュグノート
面積
総計 2,040km2170位
水面積率 0.5%
人口
総計(2012年 1,300,000人(???位
人口密度 598人/km2
GDP(自国通貨表示)
合計(2013年 3,665億[1]モーリシャス・ルピー
GDP (MER)
合計(2013年 119億[1]ドル(128位
GDP (PPP)
合計(2013年 223億[1]ドル(132位
1人あたり 17,118[1]ドル
独立
 - 日付
イギリスから
1968年3月12日
通貨 モーリシャス・ルピー (MUR)
時間帯 UTC (+4)(DST:なし)
ISO 3166-1 MU / MUS
ccTLD .mu
国際電話番号 230
a 公的には英語フランス語が用いられ、モーリシャス・クレオール語が通常話される。

モーリシャス共和国(モーリシャスきょうわこく)、通称モーリシャスは、アフリカ国家で、イギリス連邦加盟国である。首都はポートルイスインド洋マスカレン諸島に位置する共和国である。インド商人の貿易中継地になっていたためインド系住民が過半数を占める。

国名[編集]

正式名称は英語Republic of Mauritius (リパブリック・オブ・モーリシャス)。通称 Mauritius [mɔːˈrɪʃɪəs, məˈrɪʃəs] ( 聞く)フランス語では République de Maurice (レピュブリク・ドゥ・モリス)。通称 Maurice

日本語の表記はモーリシャス共和国。通称モーリシャス。

歴史[編集]

10世紀以前からアラブ人航海者たちに、その存在は知られていた。15世紀にはマレー人が訪れている。1505年にヨーロッパ人としてはポルトガル人が初めて到達した。当時は無人島だった。

オランダ領モーリシャス[編集]

1638年オランダがインド航路の補給地として植民を開始、オラニエ公マウリッツ(マウリティウスを英語読みでモーリシャス)の名にちなんでこの島を命名した。17世紀の間、オランダが占領。

フランス領フランス島[編集]

1710年から18世紀の間、フランスが支配し、フランス島と呼ばれた。

イギリス領モーリシャス[編集]

1810年にイギリスに占領され、1814年にイギリス領となり旧名に戻された。イギリスの植民地時代は、モーリシャス島から北東へ約2000km先にあるチャゴス諸島と併せて統治されていたが、独立直前の1965年11月に分離され、チャゴス諸島の住人約1800人はモーリシャス島へ強制移住させられた。

独立[編集]

1968年に英連邦王国として独立を達成し、首相にシウサガル・ラングーラムが就任。クレオール人とイスラム教徒が対立し衝突が起きた。1969年にポール・レイモン・ベランジェが中心となってモーリシャス闘争運動(MMM)を結成。

モーリシャス共和国[編集]

1992年に立憲君主制から共和制に移行した。独立以来、自由選挙に基づく民主的な政治が継続されている。

政治[編集]

モーリシャスは共和制議院内閣制をとる立憲国家である。現行憲法en:Constitution of Mauritius)は1992年3月12日に制定されたもの。これにより、英連邦王国からイギリス連邦内の共和国となった。モーリシャスは中央集権国家だが、ロドリゲス島などの属領には、一定の自治権が認められている。

元首[編集]

国家元首である大統領は、国民議会により選出される。任期は5年。3選は禁止。

行政[編集]

首相および副首相は大統領により任命されるが、国民議会に対し責任を負う。内閣に相当する閣僚評議会のメンバーは、首相の推薦に基づき大統領により任命される。大統領の権限は名目的なものであり、実質的な行政権は首相率いる閣僚評議会により行使される。

立法[編集]

立法府一院制で、正式名称は国民議会。定数は70議席で、うち62議席は直接選挙により選出され、8議席は少数民族の代表である。議員の任期は5年である。直近の選挙は2005年7月に行なわれた。

政党[編集]

モーリシャスは複数政党制が認められており、政党は大きく2つの連合に分けられる。1つは労働党(PTr)とモーリシャス闘争社会主義運動(MMSM)を中心とする保守系の社会同盟、もう1つはモーリシャス闘争運動(MMM)とモーリシャス社会主義運動(MSM)が中心の革新系連合である。また、ロドリゲス島ではロドリゲス人民機構(OPR)など独自の地域政党が活動している。

司法[編集]

司法府の最高機関は最高裁判所。また、警察準軍事組織としてモーリシャス警察軍(現役総人員10,115名)が設置されている。

軍事[編集]

常備軍は存在せず警察や特別機動隊、沿岸警備隊からなるモーリシャス警察軍が国防を担っている。

外交[編集]

アフリカ連合 (AU)、南部アフリカ開発コミュニティ (SADC)、インド洋委員会 (COMESA) に属する。アフリカ諸国とくに南アフリカが最大の貿易相手国だが、EUとの結びつきも強い。

県と属領[編集]

モーリシャスの県

モーリシャスは、9の県と3の属領に分かれる。その他、イギリスに対してチャゴス諸島の返還を要求している。

  1. ブラックリバー県 (Black River)
  2. フラック県 (Flacq)
  3. グラン・ポール県 (Grand Port)
  4. モカ県 (Moka)
  5. パンプルムース県 (Pamplemousses)
  6. プレーン・ウィルヘルム県 (Plaines Wilhems)
  7. ポートルイス県 (Port Louis)
  8. リヴィエール・デュ・ランパール県 (Riviere du Rempart)
  9. サバンナ県 (Savanne)

属領

主要都市[編集]

主要な都市はポートルイス(首都)がある。10万人以上の都市はボーバッサン・ローズヒルヴァコア・フェニックスがある。

地理[編集]

モーリシャスの地図

周囲を珊瑚礁に囲まれる島で構成され、気候は温暖湿潤。モーリシャス島は火山島だが、全体的に標高が低く、最高峰は828mのラ・プチ・リヴィエール・ノワール山である。

気候[編集]

モーリシャスの環境は、沿岸地域では一般的に熱帯であり、山地には森林がある。季節的なサイクロンにより動植物が被害を受けるが、それらはすぐに回復する。 モーリシャスの空気の質は、世界で最高の水準とされており、世界保健機関(WHO)が公表するAir quality indexでは、モーリシャスは世界2位とされている[2][3]

モーリシャスは南回帰線の近くに位置し、熱帯気候に属する。季節は二つある。11月から4月までが暖かく湿ったであり、夏の平均気温は24.7℃である。6月から9月が比較的涼しい乾燥したであり、冬の平均気温は20.4℃である。季節間の平均気温の差はわずかに4.3℃である。最も暖かい月は1月と2月であり、日最高気温の平均は29.2℃に達する。一方、最も寒い月は7月と8月で、夜間の最低気温の平均が16.4℃まで下がる。年間降水量は海岸沿いの900ミリメートルから中央高原の1500ミリメートルの範囲である。顕著な雨季はないが、降雨のほとんどは夏の数ヶ月に起こる。ラグーンの海水温は22℃から27℃の間である。中央高原は、周囲の沿岸域よりもずっと涼しく、また雨量は沿岸域の二倍になる場所もある。マスカリン高気圧由来の南東貿易風が卓越し、島の東側は他の地域と比べると低温かつ雨がちな傾向がある。また、島の両側で気温や降水量が著しく違う場合もある。時折襲来する熱帯低気圧は、一般的には1月から3月の間に発生し、この地域には約3日間だけ悪天をもたらすほか、多くの雨をもたらす傾向がある[4]

経済[編集]

首都ポートルイス

IMFの統計によると、2013年GDPは119億ドルである。一人当たりのGDPは9,165ドルで、アフリカ全体では第5位、世界平均のおよそ90%の水準である。[1]

従来はサトウキビおよびプランテーションに依存していたが、1968年の独立後、観光業および、1971年から始まったEPZ輸出加工区)における繊維産業を中心とする輸出型工業の発展により、堅実な経済発展を遂げ、モノカルチャー経済から脱出。

独立以前は慢性的な人口過剰に苦しんでいたが、繊維産業の急速な発展により、1980年代後半には完全雇用を達成した。しかし、その後は逆に労働力の不足に直面している。

多民族国家であり、雑多な民族構成、複雑な宗教事情を抱えるが、モーリシャスは他の国では争いの元となりがちな、その多様性を利用して積極的な外交を展開する事に成功している。インド欧州アラブ諸国と太い経済関係を構築し、アフリカ諸国では一、二を争うほどの豊かさを誇る。一人当たりの国民所得ではアフリカで最高水準である。

日本にとっては遠洋マグロ漁業の中継・補給基地として重要であり、ほとんど常時日本船が停泊している。

また、最近では鉄道模型用のドイツ製未塗装人形を本地で塗装して、日本に輸出している。

国際金融[編集]

モーリシャスはいわゆるオフショア金融センターないしはタックスヘイブン(租税回避地)の一種であり、インド・中国・アフリカ諸国などと租税条約を締結し国際投資のさいのタックスプランニングの中間地として利用されている。

インドについてはモーリシャスの現地居住者の会社がインドで上げた収益への課税が免除(無税)されている。このため海外からのインド投資の44.24%(2000-2007年)はモーリシャス居住者籍の投資会社からのものである。海外からのインド向け信託投信なども多く設定されている。中国については1994年租税条約によりキャピタルゲイン免税と配当課税の軽減税率適用が締約されたが2006年の改定により、大量持分(直接・間接25%以上)投資者がキャピタルゲインを上げた場合には中国での本則(10%)のキャピタルゲイン課税が行われることとなった。

国民[編集]

モーリシャスの人口ピラミッド2011年

民族[編集]

住民はインド系(印僑)が68%、クリオーリョが27%、華人が3%、フランス系が2%である。インド系住民の多くはかつてクーリーとして渡って来た人々で、彼らの受け入れに使われた施設の遺構アープラヴァシ・ガートは、ユネスコ世界遺産に登録されている。

言語[編集]

イギリスの植民地であったため、形式上英語であるものの、法的には公用語は定められていない。英語は行政機関や学校などで使われる程度で、実際に最も話されている言語はフランス語系統のモーリシャス・クレオール語であり、90%以上の国民の母語である。多くの新聞やメディアはフランス語であり、ビジネスでもフランス語が使用される。ほとんどの国民は英語とフランス語の両方を流暢に話す。アメリカ映画など英語で作成されたテレビ番組などは、フランス語に吹き替えられて放送される。その他、家庭内ではポルトガル語ヒンディー語タミル語テルグ語客家語などが使われる。

宗教[編集]

宗教は、ヒンドゥー教が52%、キリスト教が28.3%(ローマ・カトリックが26%、プロテスタントが2.3%)、イスラム教が16.6%、その他3.1%となっている。

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e World Economic Outlook Database, October 2014” (英語). IMF (2014年10月). 2014年10月12日閲覧。
  2. ^ Mauritius's air quality 2nd best in world”. Le Matinal. 2012年2月19日閲覧。
  3. ^ According to the World Health Organization - Mauritius: a breath of fresh air”. motors.mega.mu. 2012年2月19日閲覧。
  4. ^ Climate of Mauritius”. Mauritius Meteorological Services. 2012年4月5日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]