命令の三原則

 (人にものを頼む時は、目的が先、手段は結果を保証しないのです)

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  命令の三原則

 旧日本陸軍には命令の三原則というのがありました。

 1ツ、 −−−ハ−−−−ナリ  (状況)

 1ツ、 本官ハ−−−セントス  (意思)

 1ツ、 貴官ハ−−−スベシ   (命令)

という形に語尾がきちんと決められていて、曖昧な表現になるのを防ぎ、第1に状況、次に意思、最後に命令と3つ並べて、命令の実行が徹底されるようにしてあったのです。

 人に何かを依頼する時は、相手にきちんと結果を出してもらって、はじめて頼んだ意味があるのです。人にものを頼む時、この命令の3原則を利用してはいかがでしょうか。

 自分の考えをきちんと伝えるために、まず、「今どうなっているか(状況)」を説明し、次に「自分はどうしたいか(意思)」を、最後に「頼みたいことは何か(命令)」を話して頼んだら、情報不足や誤解のために、期待した結果を得られず、後で後悔することにはならないと思います。

参考メッセージ ⇒ 「号令・命令・訓令」に飛ぶ 

 人にものを頼まれた時、私たちはどんな行動を取るでしょうか。頼まれ方によって、私たちの行動とその結果は大きく違ってくるのです。

 例えば、目的を知らされずに、手段、方法の細部だけ厳しく要求されたら、誰だっていやになってしまいます。作業には必ず目的があります。目的のない作業は「賽の河原の石積み」のように無意味なことを関係者に強いるという残酷なことになります。

新しく仲間に入ってきた人に仕事を教える

 新しい職場に配属された時を思い出して下さい。上司や先輩は早くきちんと仕事を覚えてもらいたいために、初めから仕事の一つひとつについて、「この仕事はこうやってやるのだ」と、手順、方法、注意点を丁寧に一生懸命に教えてくれたと思います。しかし、この説明の仕方には問題があるのです。

 教えられる方はその仕事の目的がまだ分らないため「一体、これは何のためにやるのか」という疑問を抱いたままで説明を聞くことになります。

 説明する方はアナログで、連続してとぎれることなく話を続けていても、聞く方の人間の考えることはデジタルです。説明の内容を理解しようと思っているときは説明が聞こえますが、話を聞きながら「この仕事は何のため?」と考えるとその瞬間、説明は聞こえなくなります。
 したがって、説明者の話が理解できないまま、しばらくは説明を聞き流していることになります。だんだんその仕事の目的を自分なりに理解してきて、はじめて説明が素直に耳に入るようになるのです。

 仕事を教える場合は、手順よりも先にその仕事の目的をはっきりと説明し、納得させてあげることが大切です。私たちはその作業、仕事を長年やってきていますから、仕事の目的は分りきっていて、当たり前の常識と思って気にもとめていません。わざわざ教えるようなことではないと思って説明をしないケースが多いのです。

 教える方は仕事の目的を説明しなくても何の不自然も疑問も感じませんが、はじめてその話を聞く人にとっては分らないことばかりです。

聞き取りにくい外人同志の会話

 アイルランドにいた時に経験したことです。現地の人達を交えて雑談をすることがよくありました。そんな場面ではアイリッシュ同士の会話を聞いていることがあります。そんな時、しばしば、聞き取れていた会話が急に分らなくなることがありました。しばらく聞き流して、話の主題の見当がつくと、いつの間にかまた話が聞き取れるようになりました。聞き取りにくい外人同士の会話も話題が分っていれば聞き取れるということです。

 作業の目的も分らず、何をするためなのかも聞かずに、細かい手順の説明をきいても、全体が掴めていませんから、話の内容を掴むことは大変むつかしいのです。作業の目的が分ったら、手順や方法に対する説明を理解することはずっと容易になるのです。

目的、目標が連れてくる手段、方法

「神戸へいってくれ」と頼まれても、それだけだったら「はい」と返事をしたまま動けないのではありませんか。無理もありません。それは、あなたが何のために神戸へいくのか分らないからです。

 「この荷物を神戸の倉庫へ3時までに届けてくれ」といわれたら、「分りました」と答えて直ぐに動けるのではありませんか。
 目的がはっきり分ったら、まず、あなたは荷物の大きさ、神戸までの距離を考え、その日がどんな日か、天候は、道路は混んでいないかなどと考えて、自分で出発時間を計算して(計画を立てて)行動に移ることができるはずです。

人にものを頼むときには目的から先にはっきりと

 人にものを頼む時は目的から説明しなければいけないのです。そして、必要だったら、心配だったら、手段、方法を付け加えるのです。大抵の場合はそれで十分なのです。

 目的をはっきり了解させたら、手段、方法の説明はそれ程詳細にする必要はありません。「手段・方法に分からない点、心配な点はないか」と質問して、それに丁寧に答えてやればいいのです。目的が納得できたら、頼まれた人は自分でS→T→P→Dの輪を回して、生き生きと仕事(ワーク)をしてくれるのです。

 目的を説明せずに、手段、方法だけを説明すると手間がかかるだけでなく、いくら詳細に説明しても、時には、「言われた通りにやったのですが」という報告になって、目的が達成できないことも多いのです。

 目的が達成できなかったのは、上司の責任、自分は言われたことをきちんとやったのだから責任はありませんと言うことになるのです。頼まれた人は、言われた通りにDoだけしている、働かされ(レーバー)ているだけなのです。

命令の三原則

 旧日本陸軍には命令の三原則というのがありました。

 1ツ、 −−−ハ−−−−ナリ  (状況)

 1ツ、 本官ハ−−−セントス  (意思)

 1ツ、 貴官ハ−−−スベシ   (命令)

という形に語尾がきちんと決められていて、曖昧な表現になるのを防ぎ、第1に状況、次に意思、最後に命令と3つ並べて、命令の実行が徹底されるようにしてあったのです。

 人に依頼する時は、相手にきちんと結果を出してもらって、はじめて頼んだ意味があるのです。人にものを頼む時、この命令の3原則を利用してはいかがでしょうか。

 自分の考えをきちんと伝えるために、まず、「今どうなっているか(状況)」を説明し、次に「自分はどうしたいか(意思)」を、最後に「頼みたいことは何か(命令)」を話して頼んだら、情報不足や誤解のために、期待した結果を得られず、後で後悔することにはならないと思います。

 命令の三原則は、貴方が部下に対して使うだけでなく、上司や同僚、関係する部署の担当者に対しても活用すれば、きっと相手は間違いなく貴方の意志を理解して動いてくれる筈です。

 

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初掲載 月刊「自動車管理」1998年2月号

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