トロン (映画)

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トロン
Tron
監督 スティーブン・リズバーガー
脚本 スティーブン・リズバーガー
原案 ボニー・マクバード
製作 ドナルド・クシュナー
製作総指揮 ロン・ミラー
出演者 ジェフ・ブリッジス
ブルース・ボックスライトナー
デビッド・ワーナー
音楽 ウォルター・カルロス
主題歌 ジャーニー
「Only Solutions」
撮影 ブルース・ローガン
編集 ジェフ・ガーソン
製作会社 Lisberger/Kushner
配給 ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ
公開 アメリカ合衆国の旗 1982年7月9日
日本の旗 1982年9月25日
上映時間 96分
製作国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
製作費 $17,000,000[1]
興行収入 $33,000,000[1]
次作 トロン: レガシー
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トロン』(原題: Tron)は、1982年に製作されたアメリカSF映画

世界で初めて全面的にコンピューターグラフィックスを導入した映画として話題を集め、コンピューターの内部世界を美麗な映像とプログラム擬人化という手法で表現した点が特徴といえる。

ティム・バートンがアニメーター、クリス・ウェッジがCGプログラマー、「エイブル・システム」のスーパーバイザーとしてロバート・エイブルが参加している。

あらすじ[編集]

ソフトウェアメーカー・エンコム社に在籍するケヴィン・フリンはゲーム「スペースパラノイド」を開発したものの、その全データを同僚のデリンジャーに盗まれてしまう。デリンジャーが自身の作として発表した「スペースパラノイド」は大ヒットし、たちまち彼はエンコムの社長に出世する。その一方でフリンは場末のゲームセンターのマスターへと追いやられてしまう。

憤慨したフリンは「スペースパラノイド」がデリンジャーの盗作である証拠を掴むべく、夜な夜なエンコムへのハッキングを行い始める。だが証拠のデータはデリンジャーがプログラムしたMCP(マスター・コントロール・プログラム。要するにオペレーティングシステムのことだが、バロースというコンピュータ企業はそう呼んでいた。en:Burroughs MCPも参照)によって厳重に隠蔽されており、発見は不可能だった。

そんなある日、偶然にもフリンのハッキングの事実を知ったエンコムの社員アランが、恋人のローラと共にフリンの元を訪ねて来る。これをチャンスと考えたフリンはエンコム社内のコンピュータから直接、アクセスさせてもらえるよう懇願。了承した2人はフリンをエンコムへと導き、またアランも不正調査とMCP破壊のために、開発途中の監視プログラム・トロンを起動することを決意する。

しかし、フリンの侵入は既にMCPによって察知されていた。結果、フリンはエンコムが実験中の物質転送機によって、MCPが支配するコンピュータの内部世界へと送り込まれてしまう。そこはMCPによる圧政下にあり、あらゆるプログラムがネットを通じて集められ、奴隷のように扱われていた。

そんな中で、フリンはアランそっくりの1人のプログラムと出会う。実は彼こそが、MCP破壊の任を帯びてアランに送り込まれたプログラム・トロンだった。

2人は計算プログラム・ラムと共に、コンピュータ世界におけるMCPの圧政を打ち砕くため、戦いを挑んでいく。

キャスト[編集]

役名
現実世界/コンピューター内部世界
俳優 日本語吹き替え
UMDBD フジテレビ版
ケヴィン・フリン/クルー ジェフ・ブリッジス 小杉十郎太 小川真司
アラン・ブラッドリー/トロン ブルース・ボックスライトナー 土田大 池田秀一
エド・デリンジャー/サーク司令官 デビッド・ワーナー 金尾哲夫 富田耕生
MCP 沢木郁也 加藤精三
ローラ/ヨーリ シンディ・モーガン 日野由利加 土井美加
ウォルター・ギブス博士/デュモント バーナード・ヒューズ 城山堅 槐柳二
ラム ダン・ショア 高木渉 牛山茂
クロム ピーター・ジュラシック 檜山修之 稲葉実

本作におけるCGと仮想世界シーン[編集]

本作におけるフルCGシーンは15分286カットである。CGシーンはロバート・エイブルが設立したRA&AMAGITriple-IDigital Effectsの4社によって制作されている。それぞれの主な担当シーンは、RA&Aが仮想世界へ移行するシーン、MAGIがライトサイクルやタンクのシーンなど前半主要部分、Triple-Iがソーラー帆船やMCPのシーンなど後半主要部分、Digital Effectsがメインタイトルと、劇中で「ビット」と呼ばれる浮遊物体のシーンである。

CG作成手法は、仮想世界へ移行するシーンはベクタースキャンによる描画、ライトサイクルやタンクなどのモデリングはCSG、ソーラー帆船シーンなどはPDP-10のクローンコンピュータであるFoonly F-1を使用したグーローシェーディングフォンシェーディングによるレンダリング、などである。また、現在でもテクスチャーの作成に用いられるパーリンノイズは、MAGIに勤務していたKen Perlinが本作のために開発した技術である。

他に、当時としては画期的だった本作の特筆すべき点として、「映像(画像)チェックにデータ通信を利用した」事が挙げられる。ニューヨーク州にあるMAGIが、作成したCGをカリフォルニア州にあるウォルト・ディズニー・スタジオでチェックしてもらう為、電話回線を通してデータ送信していたのである。具体的には、まず最初にMAGIが、作成したCGを低解像度モノクロ画像でディズニーにデータ送信し、それをディズニーのアニメータービデオモニターでチェックしてMAGIに修正指示を出し、MAGIがそれに従って修正を行いデータを再送信し、最終チェックには高解像度のカラー画像データを送信していたのである。

本作は「世界で初めて全面的にCGを導入した映画」として話題になったが、実際は前出の通りフルCGシーンは15分と短く、コストや納期の都合等で仮想世界シーンを完全にCGで作成する事は出来なかった。この為、多くのシーンで手描きのアニメーションが代わりに用いられた。またCGのキャラクターや背景と役者などの実写素材との合成は、従来のアナログ光学合成で行われており、特にキャラクターの衣装の電子回路風パターンの発光表現などのために大量のロトスコープ用マスクを手作業で作成する必要があった。

仮想世界シーンのコンセプトデザインにはジャン・ジロー・メビウスシド・ミードが参加している。

続編『トロン: レガシー』の監督ジョセフ・コジンスキーは、映画パンフレットに掲載されたインタビューで「(『トロン』は)あの年のアカデミー賞では、コンピューターによる映像は卑怯だとみなされて、失格になっている」と語った。

名前の由来[編集]

TRONというネーミングについては、「制作者に“トロンとはBASICのコマンドのことか”と聞いたら“いや、エレクトロンのトロンだよ”と返された」という記事が当時の雑誌『スターログ日本語版』(ツルモトルーム刊)にある[2]

また、TRON (1982) - Trivia - IMDb には、BASIC のコマンドについては、あとになるまで知らなかったとスティーブン・リズバーガーはインタビューで述べている、とある。

トリビア[編集]

ケヴィンがエンコム社にハッキングするのに使用していたコンピュータはアップルApple IIIである。音響カプラを使用して公衆回線経由で接続していた。

脚注[編集]

  1. ^ a b Tron (1982)”. Box Office Mojo. Amazon.com. 2010年8月30日閲覧。
  2. ^ 当時のBASICでは、プログラムが正しく進んでいるかを確かめるため、行番号をステップ表示させるTRON(Trace ON)と非表示にさせるTROFF(Trace Off)があり、これを指している。

関連作品[編集]

映像作品
ゲーム

外部リンク[編集]