核兵器禁止条約 きょうから制定目指す交渉

核兵器禁止条約 きょうから制定目指す交渉
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核兵器を法的に禁止する条約の制定を目指す交渉が27日からニューヨークの国連本部で始まります。しかし、交渉には、核保有国は参加せず、唯一の戦争被爆国の日本も段階的な核軍縮を目指すべきだとして条約に反対の姿勢を示しており、今回の交渉が核軍縮の機運を高める議論につながるのか、予断を許さない状況です。
核兵器禁止条約の制定を目指す交渉は、オーストリアなど核兵器を保有しない50余りの国が提案し、去年12月、国連総会で113か国の支持を得て、27日から5日間にわたって最初の交渉が行われます。

条約は核兵器が国際法に違反しているとして廃絶を目指すもので、交渉では核兵器の違法性の根拠をどこに置くかが議論の中心になる見通しです。

交渉には100か国以上が参加する見通しですが、アメリカやロシアなどの核保有国は、現実の安全保障をめぐる議論が抜け落ちているとして、交渉には参加しない意向をすでに表明しています。

また、唯一の戦争被爆国として核廃絶を訴えてきた日本も、アメリカの核の傘の下にある安全保障政策を踏まえ、「核軍縮は核保有国とともに段階的に進めるべきだ」として、条約には反対しています。

日本は軍縮大使を国連本部に派遣し、交渉の前に行われる各国代表の演説の中で条約に反対する立場を示す方向で調整していますが、交渉そのものに参加する可能性は低いと見られています。

オバマ前政権の下で「核兵器なき世界」を目指すとしたアメリカが、トランプ政権の下で核戦力を強化する方向に動くなど、核軍縮を取り巻く環境が一層厳しくなる中、今回の交渉が核軍縮の機運を高める議論につながるのか、予断を許さない状況です。

核兵器禁止条約とは

核兵器禁止条約は、核廃絶に向けて、核兵器そのものが国際法に違反しているとして法的に禁止するというものです。

核廃絶に向けた国際的な枠組みには、NPT=核拡散防止条約やCTBT=包括的核実験禁止条約があり、これらは、核兵器をこれ以上増やしたり拡散させたりせずに、核保有国が段階的に減らしていくことを目指すものですが、核兵器禁止条約は、核兵器を一気に違法化することで廃絶を目指すものです。

核兵器を保有しないオーストリアなど50以上の国が、去年、条約の制定に向けた交渉の開始を定めた決議案を国連総会に提出し、核保有国を除く113か国の賛成多数で採択されたことから、27日からの5日間と、ことし6月から7月にかけての2度にわたって交渉が行われることになりました。

最初の交渉では、核兵器を法的に禁止する根拠をどこに置くかが焦点で、化学兵器や生物兵器といったほかの大量破壊兵器と比べた核兵器の問題性について、活発な議論が行われる見通しです。

また、この交渉には政府代表以外の国際機関やNGOの参加も認められていて、広島の被爆者が発言する機会も設けられています。

オーストリアなど交渉の事務局を務める各国は、ことし6月から予定されている次回の交渉までに、条約の草案を取りまとめ、年内の条約制定を目指すとしています。

これまでの経緯

オーストリアなど核兵器を持たない国が核兵器禁止条約の制定に向けた交渉を始めるべきだとする決議案を提出した背景には、一向に進まない世界の核軍縮に対する強いいらだちがありました。

これまで、核軍縮は、アメリカやロシアなど5か国だけに核兵器の保有を認めるNPT=核拡散防止条約の枠組みの中で議論が進められてきました。

しかし、1970年のNPTの発効から40年以上がたった今も、核保有国による軍縮は遅々として進まず、NPTに加盟していないインドやパキスタン、イスラエルは核兵器の放棄に応じず、一方的に脱退を宣言した北朝鮮も核開発を推し進めています。

核軍縮の遅れにいらだちを募らせた各国は、4年前から国際会議を開き、核兵器の非人道性を根拠に、法的に禁止するべきだと主張するようになり、おととし春に開かれたNPT再検討会議では、段階的な核軍縮を主張する核保有国側と鋭く対立しました。

去年2月に始まった国連の作業部会では、すべての核保有国が欠席する中、核兵器そのものを禁止する新たな条約の制定に向けた議論が活発化。これを受けて、オーストリアやメキシコなどは、賛同する50以上の国と共同で交渉の開始を定めた決議案を国連総会に提出し、去年12月に113か国の賛成多数で決議は採択されました。

日本は「核軍縮は核保有国とともに段階的に進めるべきだ」として、採決では反対に回り、唯一の戦争被爆国として核廃絶を掲げながら、条約に反対する姿勢を打ち出し、波紋を広げました。

交渉に先立ち、先月、国連本部で開かれた準備会合には、決議を主導したオーストリアなどの核兵器の非保有国に加え、中国やインドといった一部の核保有国が参加しましたが、最大の保有国であるアメリカとロシアのほか、アメリカの核抑止力に依存するNATO=北大西洋条約機構の多くの国や日本も欠席しました。

27日に始まる交渉には100か国以上が参加する見通しですが、核保有国はいずれも参加せず、日本も交渉の前の演説で立場を説明するのにとどまり、交渉そのものに参加する可能性は低いと見られています。

米の対応は

核兵器を法的に禁止する条約に対し、アメリカ政府はオバマ前政権の時代から反対し、トランプ政権も同様の姿勢を鮮明にして、ほかの国に条約に反対するよう働きかけるとしています。

アメリカのホワイトハウスで核不拡散などを担うフォード上級部長は今月、首都ワシントンでの講演で、核兵器を法的に禁止する条約について、「このような条約はただの1発も兵器をなくすことなく、何十年にもわたる安全保障上の戦略的な安定を低下させる」と述べ、非難しました。

アメリカ政府は、主な反対の理由として4つを挙げています。

第1に核保有国の参加が見込めないため、実質的な核兵器の削減につながらないこと。

次に核保有国と非核保有国の間の隔たりを大きくして、政治的な合意の形成を難しくし、核軍縮に向けたこれまでのNPT=核拡散防止条約などの枠組みを弱体化させる可能性があること。

さらに、核軍縮や核不拡散の取り組みを検証する実効的な体制が確立されていないこと。

最後に現在の安全保障情勢では、核兵器は世界の平和と安定に役割を果たしているとして、核による抑止力の必要性を指摘し、条約をめぐる議論は非現実的だとしています。

一方で、核軍縮に向けた取り組みについて、アメリカ政府は2011年に発効したロシアとの新たな核軍縮条約「新START」により、来年までに戦略核弾頭の配備数を1550発に減らすなど、冷戦時代に比べ核兵器の大幅な削減を進めてきたという立場です。

しかし、「新START」に続くロシアとのさらなる核兵器の削減交渉は進んでいないほか、核実験を全面的に禁じるCTBT=包括的核実験禁止条約についても、共和党内には反対意見が多く実現の見通しは経っていません。

広島の被爆者は条約制定に期待

核兵器禁止条約の交渉が始まるのを前に、現地でNGOの集会に参加した広島の被爆者は「被爆者の心からの叫びに耳を傾け、核兵器のない世界へ確かな一歩を踏み出そう」と述べて、条約の制定に強い期待を示しました。

集会は、国際NGOのICAN=核兵器廃絶国際キャンペーンが主催して、現地時間の26日、ニューヨークで行われました。

この中で、1歳4か月の時に広島で被爆し、国連での交渉初日に発言を行う予定の藤森俊希さんが「核保有国の強烈な圧力で実現しなかった条約をつくろうという会議がいよいよ始まる。無差別で大量に殺りくし、生き延びた者に放射線障害を強いるという核兵器の非人道性を告発し、再び被爆者をつくるなと訴え続けてきた被爆者の声と、それを受け止めた無数の人々の声が、核兵器を禁止しようというエネルギーになっている」と話しました。

そのうえで、藤森さんは「17万人の生存被爆者は、大なり小なり障害を抱えて、死に至るまで重い十字架を背負い続けている。再び被爆者をつくるなという、被爆者の心からの叫びに耳を傾け、核兵器のない世界へ確かな一歩を踏み出そう」と述べて、核兵器禁止条約の制定に強い期待を示しました。