イギリス EUに離脱を正式に通知へ

イギリス EUに離脱を正式に通知へ
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イギリスのメイ首相は29日、EU=ヨーロッパ連合に対して離脱を正式に通知する見通しで、これを受けて、双方はEU史上最も困難とも言われる離脱交渉を始めることになります。
イギリスが去年6月の国民投票でEUからの離脱を決めたことを受け、メイ首相は29日、EUのトゥスク大統領に書簡を送り、離脱を正式に通知することにしています。

書簡の中でメイ首相は、離脱交渉に臨むイギリスの基本的な方針を伝えるものと見られ、これを受けてEUのトゥスク大統領は、48時間以内にほかの加盟国に交渉に臨むEUとしての方針を伝えることにしています。

ヨーロッパでは、1985年にデンマーク領のグリーンランドがEUの前身であるEC=ヨーロッパ共同体から離脱したことがありますが、イギリスのような経済規模を持つ加盟国が離脱した前例はなく、EU史上最も困難な交渉になると言われています。

交渉にあたって、イギリスのメイ首相は「悪い合意なら決裂したほうがましだ」として、EUからの離脱後も関税などで加盟国に近い待遇を求める構えですが、EU側もほかの加盟国が離脱する事態を避けるため厳しい姿勢で交渉に臨むものと見られます。

イギリスに進出する各国の企業や金融機関は、EUの単一市場へのアクセスがあることを前提しており、交渉の結果次第では経営戦略の転換を迫られるだけに、交渉の行方に注目しています。

離脱交渉は早ければことし5月にも本格的に始まり、2年を期限に行われ、激しい駆け引きが予想されます。

離脱に関する取り決めは「リスボン条約」50条に

EUからの離脱に関する取り決めは、EUの基本条約「リスボン条約」の50条に定められています。

それによりますと、離脱に向けた手続きは、イギリスがEUに離脱を正式に通知することから始まります。その後、イギリスとEUは、離脱後の新しい関係について交渉に入り、単一市場へのアクセスや資本の移動をどうするのかなど今後のルールを一つ一つ決めていきます。

リスボン条約の50条がひとたび発動されると後戻りはできず、離脱を通知してから原則として2年の間で「離脱協定」を結ぶことが求められています。

もし協定がまとまらなければ、EU首脳会議の全会一致で交渉期限を延長することも可能ですが、延長が認められなければイギリスは新しいルールがないまま、EU加盟国としての権利を失うことになります。

交渉は序盤から紛糾も

離脱交渉では、EUの試算で最大600億ユーロ(日本円でおよそ7兆3000億円)に上る、過去に約束したEUの予算の分担金の扱いや、イギリス国内のEU加盟国の市民やEU域内のイギリス人の権利をどう守るかが当面の焦点となるものと見られます。

さらにイギリスは、将来のEUとの自由貿易協定や企業の経営環境が急激に変わるのを避ける移行措置などについても、早い段階から協議したい考えです。

しかし、EU側は分担金の解決を含む離脱の条件を定めた協定を結ぶことが先決だとしてイギリスの求めには応じない構えで、交渉は序盤から紛糾することも予想されます。

日本企業に欧州での事業戦略見直す動き

イギリスのEU=ヨーロッパ連合からの離脱に向けた交渉が正式に始まるのを前に、日本企業の間では、ヨーロッパでの事業戦略を見直す動きも出始めています。

ヨーロッパで事業を展開する多くの大手金融機関は、EUの1つの国で認可を得れば、ほかの加盟国でも金融サービスを提供できる「単一パスポート」と呼ばれる制度を利用していますが、この単一パスポートをイギリスで取得している金融機関はEU域内での取引が制限されるおそれがあります。

このため、大和証券グループ本社は早ければことしの夏に、現在のロンドンに加えてドイツのフランクフルトにも拠点を立ち上げ、ドイツに対し単一パスポートを申請する方針を固めています。

同じように、単一パスポートをイギリスで取得している三井住友銀行も、イギリス以外の国で単一パスポートを取得したり、新たな拠点を設けたりする必要があるかどうか検討を進めています。

また、日本の自動車メーカーでは、トヨタ自動車と日産自動車それにホンダの3社がイギリスに工場を置き、EU各国への輸出も行っています。

このうちトヨタ自動車は、今月16日、イギリスの工場に新たに340億円以上を投資して、最先端の生産設備を導入することを発表しました。また、日産自動車は去年、イギリス政府から支援の約束が得られたとして、自動車の生産を続ける方針を表明しています。

ただ、各社とも、イギリスからEUへの輸出に高い関税がかかるようになれば、生産体制の見直しを含めて対応を迫られる可能性があり、今後、貿易のルールがどう変わり事業にどのような影響が及ぶのか、離脱交渉の行方を注視しています。

日本からイギリスへの直接投資は、おととしの12月末時点で10兆7448億円に上り、アメリカ、中国、オランダに次いで第4位と、経済面で深いつながりがあります。

このため、日本政府は、貿易や投資などのルールの見直しによる日本企業への影響を最小限に抑えられるよう、イギリスとEUへの働きかけを強めていく方針です。