批判的な読者への返答は明快だった。〈戦争、原発、言論圧力、沖縄差別、まっぴら御免。こんな『まっぴら』を左翼だとおっしゃるのなら、左翼でけっこうです〉

▼雑誌「通販生活」は2016年の参院選で〈今回ばかりは野党に一票を〉と呼び掛けた。すると、読者172人から「左翼雑誌になったのか」「買い物雑誌に政治を持ち込むな」と手紙が届く。冒頭は誌面に載せた返答の一文。今度は逆に激励の手紙が400通近くが寄せられた

▼立場を鮮明にすることで経営に影響もあるはず。読み物担当の平野裕二さんは「支持する人もいれば離れる人もいる。政治的主張も含めて企業理念を分かった上で買い物してほしい」と語る

▼通販生活を発行するカタログハウスが、子どもの貧困解消を支援する「沖縄こども未来プロジェクト」に770万円を寄付した(1日付30面)。古くは28年前の中国残留婦人に始まり、チェルノブイリ原発事故、阪神大震災、福島の子の甲状腺検査などで支援を呼び掛けてきた

▼〈お金儲けだけ考えて、政治の話には口をつぐむ企業になりたくない〉。社会に向き合う社の姿勢は一貫している

▼創業者の斉藤駿さんはかつて、支援を募る行為を「過去と未来を重ね合わせていく活動」と説いた。今を生きる私たちにできることを真摯(しんし)にみつめている。(西江昭吾)