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【社会】

27歳、生産緑地で夢実現 日野の女性、新法律で新規就農1号

生産緑地を借りて新規就農する川名さん=東京都日野市で

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 税金が優遇されている都市部の農地「生産緑地」の貸し借りをしやすくした新法を活用し、東京都日野市の川名桂(けい)さん(27)が三月から、市内の生産緑地を借りて農業を始める。農林水産省によると昨年九月の新法施行以降、新規就農者としては全国で第一号の認定。将来はハウスを作りトマト栽培をする予定で「夢を実現できてうれしい。農業活性化のため精いっぱい頑張りたい」と抱負を語る。 (松村裕子)

 十五歳から父親の出身地の日野市に暮らす川名さん。東京大に入学後、「人間として本質的なことをしたい」と農業の道を志し、三年から農学部に進んだ。卒業後は千葉県の農業法人に勤めたが、「生産者と消費者が遠い」と感じ、都市農業を模索。そんなときに新法の存在を知り、市に相談したところ、体調を崩して耕作が難しくなった農家を紹介された。法律に基づく事業計画を提出し、今月十五日に市の認定を受けた。

 借りるのは日野市内の約千百平方メートルの生産緑地で、期間は三十年間。今は東京都清瀬市の農家でトマトの栽培や販売について研修を受け、三月以降にジャガイモやコマツナの栽培を手掛ける。作った野菜は近所の人に直売する予定。来年にも、トマト用のハウスを建てたい考えだ。

 川名さんは「長期間、貸してもらえるので設備投資もできる。農業が大好きな貸主さんの思いを引き継ぎたい」と意欲的。大坪冬彦日野市長は「後継者が不足する中、若い人が農業に飛び込んでくれてうれしい。都市農業の発展のため、全力を挙げて応援したい」と歓迎する。

◆貸した後も所有者優遇継続

 生産緑地は都市部に残る農地を保全するため、市区町村から指定を受けた市街化区域にある農地。所有する農家は三十年間、農業を続ける必要がある一方、固定資産税の減免や相続税納税の猶予などの優遇措置を受けられる。現在は東京、大阪、名古屋の三大都市圏を中心に約一万三千ヘクタールある。

 制度が始まって二〇二二年に三十年を迎えるため、大半の所有者が近く継続するかどうかを判断する。高齢化などで宅地に転用されるケースが増え、都市部の緑地の減少が予想されることから、政府が対策を検討。借り主が市区町村に事業計画の認定を受ければ、用地を貸した後も所有者の優遇措置が継続する新法を成立、昨年九月に施行した。

 都市部の就農者が増えることが期待され、農水省都市農村交流課は「貴重な緑を残すのも目的。活用してほしい」としている。

 

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