8月30日に東京地裁へ民事再生法の適用を申請し、同日に保全処分命令および監督命令を受けた(株)日本アイコム(資本金1000万円、広島市中区中町1-24、代表野上和政氏、従業員17名)は、9月4日午後1時より「TKPガーデンシティPREMIUM広島駅前」(広島市南区)で債権者説明会を開催した。
会社側から野上社長のほか、申請代理人の山崎良太弁護士、監督委員の山川萬次郎弁護士などが出席した。申請代理人から民事再生手続きの流れや申し立てに至った経緯、今後の方針などについての説明に続き、質疑応答が行われた。概要は以下の通り。
【申し立ての経緯】
当社は、2002年から自社ブランドでのマンションの開発・分譲販売を開始し、順調に業容を拡大してきた。2014年9月期以降は外部環境の好転を好機ととらえ、積極的な自社ブランドマンションの開発・分譲を進めてきたが、建築費の増加や取得したマンション用地に障害が発見されるなど想定外の支出がかさみ、採算性が悪化した。その後、2017年9月期の年売上高が2016年同期の約3分の1にまで落ち込み、厳しい資金繰りを余儀なくされていた。
こうした状況が続くなか、今年8月末に支払期限が到来する債務(約16億円)の支払いについて、資金手当ができなくなり、自主再建を断念した。
【今後の方針】
当社は、スポンサーからの支援を受けて再建を図る方針であり、代理人などを通じてスポンサー候補者への打診を開始している。自社ブランド「CLARS」は広島県を中心とする瀬戸内地方において一定のブランド力がある強みからスポンサーを確保できることは確実であると考えている。現在、複数のオファーを受けている状況であり、今後はできる限り早期にスポンサーを確定し、計画外事業譲渡を行うことで再建を図る方針。
【今後のスケジュール(予定)】
2018年
9月5日(当時):再生手続き開始決定
9月中旬頃:スポンサー企業の選定、スポンサー契約書の締結、裁判所に対する許可申請
9月下旬頃:債権者説明会(スポンサーからの支援内容に関する説明)、スポンサーによる支援(裁判所からの事業譲渡許可の発令)
10月4日:債権届出の期限
10月初旬頃:スポンサー企業への事業譲渡の実行
11月下旬頃:再生計画案を作成・提出
2019年
1月下旬頃:債権者集会の開催(再建計画の認可決定)
2月下旬頃:再建計画の確定、再生計画に沿った更生債権の支払い開始
【主な質疑応答】(一部抜粋)
○申し立てがなぜ広島地裁ではなく、東京地裁なのか
最終的な受理の判断は裁判所が柔軟に行っている。今件は申し立ての数日前に依頼を受けたため、非常に短時間での受理、保全処分命令、監督命令の発令を出してもらえる裁判所として東京地裁へ申し立てを行った。また、相当数の債権者やスポンサー候補が東京にいる。
○受任の経緯を教えてほしい
端的に申し上げると、相談している会計事務所からの紹介である。
○スポンサーを選定中とのことだが、スポンサーになる条件や基準はあるのか
民事再生手続きにおいて債権者への弁済の極大化が第一の基準である。履行が確実であることなどの要素もある。監督委員の同意を得て債権者の意見を聴取したうえで裁判所が許可するかどうかの判断をするというプロセスになる。スポンサーとして名乗りをあげるのであれば後ほど代理人に話してください。債権者だからスポンサーになれないというわけではない。
○社長の責任(今後)についてはどのように考えているのか
現時点で確定的に申し上げられることはない。当然、経営責任を負っている立場であるので、その責任に見合うかたちでの処遇や今後の進退が判断されることになるだろう。
○今期の業績見通し(売上高)はどうだったのか
50億円程度の見込みだった。
○業績が持ち直しているように思えるが、なぜ民事再生法の適用申請に至ったのか
直接的な原因は8月末の支払いに対する資金が不足していることである。前の期から売り上げが増えている分だけ運転資金需要が高まり、資金繰りがつかなくなったためである。複数の金融機関から追加融資を受けられなかった事実はある。
○計画外事業譲渡による事業再生とは具体的にどういうことをするのか
再生計画案の提出の前に裁判所の許可に基づいて事業譲渡を行う再生方法である(スケジュール参照)。申立てから最低でも6ヵ月かかる再生計画案の認可が確定しないと支援が実行できない既存の会社にスポンサーが出資する増減資型と違って、早ければ1ヵ月~1ヵ月半でスポンサーが事業を執行できる。マンション事業の価値が毀損することを防止する観点でこの方法を選択した。
○併営しているフットサル競技場の運営はどうなるのか
現在も営業を継続している。今後も継続をしていく前提でスポンサーにマンション事業と一緒に承継してもらうか、新たなスポンサーに承継してもらうことになるだろう。