堀被告らによる「闇サイト殺人事件」の被害者・磯谷利恵さんの母親・富美子さん。事件から12年、堀被告の死刑を求め続けていた富美子さんは、彼が関与した愛知県碧南市の夫婦殺害事件の最高裁判決をどんな思いで迎えたのでしょうか。

磯谷富美子さん(67):
「20日に娘の13回忌の法要を行うので、そのお返しの品を購入しに」

 20日は、娘・利恵さんの誕生日。“あの日”から12回目の夏を迎えようとしています。

 2007年8月24日、闇サイトで知り合った堀被告ら男3人により車で拉致された利恵さん。現金6万円を奪われた末に殺害され、岐阜県の山に遺棄されました。

 3人を死刑に…。しかし、富美子さんの思いに立ちはだかったのが「司法の壁」でした。

 強盗殺人の場合、判例では被害者が2人以上で死刑、1人では無期懲役が妥当とされていました。

署名活動中の磯谷さん:
「1人の命でも尊いのです。それを1人の命では極刑は難しいなどと誰がいうのでしょうか」

 事件後、磯谷さんは3人の死刑を求めて街頭に立ちました。集まった署名の数は33万。

 30年間支え合って生きてきた母と娘…。磯谷さんは娘の無念を晴らしたいという一心でした。

 しかし、闇サイト殺人事件で示された司法の判断は1人が死刑、堀被告ら2人は無期懲役。「被害者が1人のこの事件は、死刑を選択するほど悪質ではない」といった理由でした。

磯谷さん:
「裁判はやっぱり被害者目線では見てくれません。どうして加害者の目線で裁判はあるのか、裁いていくのか、私は悔しくてたまりません。殺された方の目線から見てほしい。利恵ちゃんごめんなさい。お母さん、何もやってあげられなかった」

 ところが、刑の確定直後、堀被告は別の2つの事件に関わっていたとして、逮捕されました。

磯谷さん:
「この12年間はずっと堀の死刑判決を願っていた12年だったなっていうことを感じますね。ただ、(今回で)もう裁判とは縁が切れると思うと本当にほっとします」

 そして19日…。

記者:
「堀被告の上告が棄却されたそうです」

磯谷さん:
「ありがとうございます。やっぱり違う。ちゃんと聞くのと聞かないのと」

 堀被告への死刑判決が確定へ…。

磯谷さん:
「娘の事件で無期懲役になって、もうなす術はないと悔しい気持ちでいっぱいでしたが、きょうその日が迎えられて本当にうれしいですし、明日は娘が生きていれば43歳の誕生日になります。ちょうど13回忌の法要を行う予定でしたので、その前日にこのような判決が下されて、すっきりした気持ちで執り行うことができるんじゃないかと思って、本当にほっとしています」
(最終更新:2019/07/19 19:04)