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2021325日()

天瀬町にパワースポット? 顕徳坊尊で磁力を持つ岩石発見

磁力を持つ珍しい岩石を計測する森山利秋湯山自治会長(左)ら=天瀬町湯山の顕徳坊尊
磁力を持つ珍しい岩石を計測する森山利秋湯山自治会長(左)ら=天瀬町湯山の顕徳坊尊
  • 磁力を持つ珍しい岩石を計測する森山利秋湯山自治会長(左)ら=天瀬町湯山の顕徳坊尊
  • 温泉街を見下ろす高台にある顕徳坊尊のお堂

 【日田】日田市天瀬町湯山の顕徳坊尊(けんとくぼうそん)で磁力を持つ珍しい岩石が見つかった。専門家は「約110万年前の輝石安山岩。磁鉄鉱が多く含まれ、磁力が強い」と分析する。地元の住民は「パワースポットではないか。参拝客を増やし、天ケ瀬温泉街の復旧復興につなげたい」と期待している。
 温泉街を見下ろす標高485メートルの高台にある。岩は高さ約1メートル、直径約2メートル。お堂の後ろの遊歩道にある。
 地元では、いぼ岩などと呼ばれ「岩の水を塗ると、体のいぼが消える」といった言い伝えがある。表面のくぼみに雨水がたまり、子宝に効くとの伝承も。磁力のある岩は遊歩道、鳥居前などに計7カ所にある。
 最初に見つけたのは大橋信夫さん(83)=同町本城。神社巡りが趣味で、昨年5月、偶然黒い岩に方位磁石をかざすと針が180度回転した。磁力計は約2・3ガウス(磁力の単位)以上で強さはいぼ岩、鳥居前の順だった。
 顕徳坊尊の由来は江戸時代後期にさかのぼる。旅の僧が亡くなる前に「せめて故郷(山形県米沢市)が見える所に埋葬してほしい」と要望。住民が周辺で一番高いお堂に祭った。地元の小野博文さん(86)は「言い伝えが残り、大切にしてきた」と参拝や清掃で月数回通う。万年山(はねやま)や、くじゅう、釈迦岳、英彦山を見渡せる景勝地でもある。
 湯山自治会の森山利秋会長(77)は「顕徳坊尊の由来を詳しく調べ、市の名所にしたい。参拝客が増えれば温泉街の復旧復興のお役にも立つ」と語る。

■「たたら製鉄」天瀬町でも?
 輝石安山岩は火成岩の一種で噴火とともに地表に噴出、風化して土になり、中の磁鉄鉱は砂鉄となる。昔から日本の鉄は「たたら製鉄」で作り、砂鉄が原料だった。高熱で鉄の純度を上げたのが玉鋼(たまはがね)で、日本刀となった。
 この製鉄が「天瀬町でも行われていたのでは」というのは日田市立博物館の行時志郎館長。顕徳坊尊の湯山地区に隣接する馬原地区に「多々良」、近くの合田地区に「多々良木」の地名が残っているからだ。資料によると、市内には昭和初期までたくさんの「鍛冶屋さんがあった」という。
 大分地質学会員の木戸道男元久留米大講師(火山、構造地質学)は「いぼ岩がある高台はゆっくり溶岩が噴出した」とする。「溶けた鉄が磁力を帯びる温度約770度以下で冷えた。当時地軸が逆転していたので岩石が北を南と認識してしまった」と解説する。地軸の逆転はこれまで11回あり、最後の逆転は約77万年前とされる。
 さらに「近くの地域とともに台地を形成、長い時間がかかって浸食され現在の地形になった。今でも残った台地があれば同じ岩石があっても不思議ではない」という。約9万年前の阿蘇山の大噴火、大火砕流跡でも磁力は「0・1から0・4」という。磁鉄鉱が多い岩石に落雷しても磁石化するという。
 方位磁石が回転する同じ安山岩があるのは「押戸(おしど)石の丘」(熊本県南小国町)。「ミステリースポット」として知られるが回転する岩は1カ所のみという。

※この記事は、3月17日 大分合同新聞 19ページに掲載されています。

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