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同一と差





1896 米 プレッシャー判決。黒人と白人の区別がなされていてもなかみが実質的に平等であれば差別ではないという判決(分離すれども平等 separete but equal)。横田[1991:14]

1890 英 公聴会71回、参考人291人、調査範囲14産業都市および、17の職業部門からなる「搾取」制度に関する調査報告の発表。@賃金率が労働者の生活必要をあがなうには足りず、労働の成果に対して均等を得ていない。A労働時間が過当に長いB家屋は寺宝に非衛生的であるとの報告(長沼[1947:34-5])

1906 英 ロンドン・デイリーニュース誌が、家内労働の実情を一般に紹介する大規模な展覧会を開催。大きな反響を呼ぶ。→私設団体「搾取反対連盟」結成。政府が「家内労働委員会」設置。その委員アーネストエイヴスがオーストラリアに出張し、賃金委員会制度を十汁適否の研究に従事し、1908年に報告結果を公表する(長沼[1947:36-7])

1907 オーストリア 連邦調停裁判所長ヒンギスが賃金の標準家族説をはじめて唱える。その節によると、基本賃金は、労働者本人、その妻および家族3人からなる生活の必要を満たしうるものでなければならないと論じた(長沼[1947:10])

1909 英 賃金委員会条例(Trade Bords Act)。賃金委員会を設置すべき職業の範囲、委員会組織および運営の方法を規定する。(長沼[1947:33])

1912 英 炭鉱労働者最低賃金法(Coal Mines Minimum Wage Act)。(長沼[1947:33])

1912 英 ニューサウスウェイルズ産業調停法。同一の労働に従事しているものはまた雇用者に対して同一の利潤もしくは同一の価値を与える労働に従事しているものに対しては、男女の別を問わず、同一の賃金を支払うべしという要求がなされる。(長沼[1947:5])

1916 英 クウィンズランド産業調停法にもニューサウスウェイルズ産業調停法と同じ条項が記載される(長沼[1947:5])

1919  ヴェルサイユ条約(第13編第2款第427条)「同一価値の労働に対しては男女同額の報酬を受くべき原則」が掲げられる。(長沼[1947:4])

1922 オーストリア ヴィクトリア州調停裁判所が、「男女の別なく同一賃金を支払うべし」という(前年8月25日に同州商業使用人賃金委員会が下した)決済を棄却する。その根拠は、賃金の最低率は、労働者の労働の成果ないし、価値に関わらず、それ以下には下ってはならない限界点、生活必要費を基準とするものであるとする。(長沼[1947:8])

1923 ハンガリーおよびウルグアイ 農業労働者に関する最低賃金法制定。(長沼[1947:32])

1924 英 農業賃金条例(最低賃金法)(Agricultural Wages Act)。(長沼[1947:33])

1926 スペイン 同一の職業における同一労働の賃金については、男女によって差別をつけてはならない胸の規定が定められる。(長沼[1947:5])

1938 米 公正労働基準法。時給25セントの最低賃金を定める。(Anderson[1989=1994:275])

1941 米 大統領行政命令8802(ルーズベルト大統領)で、防衛産業・政府機関における雇用差別の禁止(横田[1991:21])

1944 国連 ILO(国際労働機関)フィラデルフィア宣言。「一部の貧困は、全体の繁栄にとって危険である」(玄幡[2005:10])

1956 米 市民サービス委員会が連邦雇用における年齢差別条項を削除し、応募資格の年齢制限を撤廃する。(玄幡[2005:15])

1961 米 大統領命令10925(ケネディ大統領)で、アファーマティヴ・アクションという言葉がはじめてつかわれる(横田[1991:21])

1963 米 雇用年齢差別禁止法。賃金平等法。年齢を40-65歳の従業員に対する年齢差別の禁止。同一条件の下での同一の熟練、成果、責任にたいする同一労働同一賃金を定める。Anderson[1989=1994:140]

1964 米 アメリカ公民権法「憲法上の投票権を実施し、公共施設における差別に対する差し止め救済を与えるため、合衆国地方裁判所に裁判権を付与し、公共機関、公教育における憲法上の権利を保護するため、訴訟を提起する権限を司法長官に授権し、公民権委員会を拡大し、連邦援助計画における差別を防止し、平等雇用機会委員会を設置する等の目的のための法律」制定。年齢差別反対政策特別命令。人種・宗教・性・出身国・皮膚の色を理由とする雇用上の差別の禁止。(玄幡[2005:15,1-7],Anderson[1989=1994:263])

1965 日 同和対策審議会答申「同和地区に滞留する停滞的加工人口を近代的な主要産業の生産過程に導入することにより生活の安定と地位の向上をはかることが、同和問題解決の中心的課題である」(横田[1991:11])

1965 米 大統領行政命令Executive Order11246によって雇用におけるアファーマティヴ・アクションが要求される(ジョンソン大統領)。連邦政府機関と、10万ドル以上の政府請負額かあるいは従業員100人以上の請負業者及び下請業者が、雇用の条件として人種や肌の色、宗教、出身国を下に差別することを禁じた。合衆国高齢者法。(横田[1991:20],Anderson[1989=1994:263])

1967 米 雇用年齢差別禁止法。→1978年修正。報酬、雇用機関、雇用条件、特典の面で40-70歳の個人に対して差別待遇を行うことを違法と定める。(玄幡[2005:13],Anderson[1989=1994:260])

1969 米 大統領命令11478で、連邦政府雇用関係にアファーマティヴアクション導入が指示される(横田[1991:22])

1970 米 職業安全衛生法。国内におけるすべての男性及び女性従業員が安全で衛生的な労働条件を可能な限り確保し、わが国の人的資源を保全すること」が目的とされる。(Anderson[1989=1994:260])

1972 日 勤労婦人福祉法制定。努力規定。

1972 米 アラバマ州裁判。アラバマ州の警察は、黒人警官の割合が25%になるまで、白人を一人採用するごとに、黒人を一人採用しなければならないというアファーマティヴアクションを裁判所が提示する。(女性労働問題研究会編[1992:52])

1975 英 性差別禁止法Sex Discrimination Act →1986改正

1975 英 同一賃金法Equal Pay Act →Ammended 1984

1976 EC 「男女均等待遇に関する協議会指令」(玄幡[2005:36])

1977 米 公共企業雇用法。州・地方の公共事業のための連邦補助金の10%をマイノリティの企業に支出するよう定める。(横田[1991:31])

1978 英 雇用保護統合法Employment Protection and Consolidation Act

1978 米 妊婦差別禁止法。(Anderson[1989=1994:270])

1979 国連「婦人に対するあらゆる形体の差別の撤廃に関する条約」

1980 米 ECOCがセクシャル・ハラスメントの撤廃を目指す説明書を発行する。(Anderson[1989=1994:279])

1981 国連 ILO156号条約

1982 日 婦人少年問題審議会労働部会で男女雇用平等法の内容が審議される。(岩波書店[1984:21])

1985 日 女子差別撤廃条約批准

1986 日 男女雇用機会均等法施行

1986 米 雇用年齢の条件について、すべての上限が撤廃される。連邦公務員は78年の法改正により年齢制限が撤廃。航空管制官、消防士、警察官など特別な職種、年間2万7000ドル以上の退職年金受給者には例外的に定年制を認める。(玄幡[2005:19])

1992 日 育児休業法

1999 EU 11月、欧州委員会が「一般雇用均等指令案」「人種・民族等指令案」。各種の雇用差別を禁じる指令案を提案(玄幡[2005:30])

2000 EU EU指令「雇用における均等処遇」。EU加盟国が2006年をメドに差別禁止法導入を決める。(玄幡[2005:31])


2001 米 改正雇用対策法「その年齢にかかわりなく均等な機会を与えるよう努めなければならない」努力規定→2004高齢者雇用安定法で説明義務に法改正(玄幡[2005:11-2])

2003 蘭 年齢差別禁止法制定(玄幡[2005:32])



2004 日 経団連2004年版経営労働政策委員会報告「高付加価値経営と多様性人材立国への道」発表(玄幡[2005:11])

2004 日 1月、厚生労働省労働政策審議会職業安定分科会「今後の高齢者雇用対策についての報告」

2004 日 6月、高齢者雇用安定法改正。65歳までの雇用の確保。中高年齢者の再就職の促進。高齢者の多様な働き方に応じた就業機会の確保。

・同一労働同一賃金・類似労働同一賃金・同一価値労働同一賃金

・随意的雇用理論(任意雇用慣行)

 

 

◆性差

★岩波書店編集部編 (1984) 『雇用の平等と女と男』 岩波書店 岩波ブックレット29

 日経連は「雇用平等法反対」生命を用意していました。「先進各国では認められていない生理休暇や、深夜労働の禁止などの女性保護規定の撤廃がむしろ先決であり、現状のままでは法の成立を強行すると、わが国の労働慣行を根底からくつがえし、終身雇用制にも影響を及ぼすおそれがある」というものです。(p.20.毎日新聞1983.9.28夕刊)

 職場で女子労働者への特別保護=母性保護は、生む性に対する社会的保障です。男女の平等とは、機械的なものではなく、両者のちがいをちがいとしてみとめたうえで、それぞれの性を生かすことで成り立ちます。いいかえれば、男女の平等とは、母性保護を前提として成り立つということです。(p.24)

 千葉県や埼玉県の女性タクシードライバーのグループは、「稼ぎ時の午後10時以降に働けないのは死活問題だ」と、深夜業を認めるよう労働省に陳情を繰り返しています。また保護が足かせになっているとの意見は、記者・編集者・建築士・コンピュータ技術者など専門的職種や管理職のあいだにもあります。しかし、圧倒的多数の女たちは「健康で安全にはたらくためには、いまの労働基準法は必要最低限の基準だ」と、力説しています。(p.26)

 女性は「産む性」として、男性の代わりようのない社会的・生理的機能を持っているのですから、「母性保護」を差別の理由として半裸図、文化国家にふさわしい保護を、当然の前提としたものであることがもとめられています。(p.30-1)


★女性労働問題研究会編 (1992) 『国際シンポジウム 雇用平等の最前線』岩波書店 岩波ブックレット277 ISBN4-00-003217-8

…女性の経理の主張は、男と女はちがうということで否定され続けてきました。その根拠となったのが、特性論・役割論です。たとえば選挙権の主張に対しては、政治は女に向かないという特性論、女性の役割は家庭をまもることだから、その役割を果たすのが重要であって、政治のことなんかに参加をするために家庭を出るべきではないという役割論。この二つによって、女性の参政権の主張は否定され続けてきたのです。(p.3)

 コンパラブル・ワースというのは、このような女性職の低賃金を高めようとする概念なわけです。女性職、男性職という考え方をこわしてしまおうという概念ではないわけです。”秘書はほとんど女性だというのが現状だ。そして、現在その賃金が低いから、この賃金を引き上げよう”というのがコンパラブル・ワースです。それにたいして、”こういうところに女性が集中していて、ほかの職種に行けない。それは平等ではない。それを打ち壊すべきだ”という考え方が、あとでお話ししますアファーマティブ・アクションなわけです。(p.44-5)

 


★横田耕一 (1991) 『アメリカの平等雇用 アファーマティヴ・アクション』 部落開放研究所

 差別を解消するための、人種・性・出身国など従来差別の理由とされてきた標識を考慮に入れた、形式のみならず結果を考慮に入れた、差別が解消されるまでの暫定的な、積極的努力(p.3)


◆年齢・世代

★玄幡まみ (2005) 『年齢差別 仕事の現場でなにが起きているのか』 岩波書店 岩波ブックレット649 ISBN4-00-009349-5

人種、性別、年齢、障害などの各々について「合理的な差別」が認められている。年齢問題でも、職務と年齢や適応能力のいかんが問われてくる。例えば連邦の規定では、民間パイロットの定年は60歳となっている。乗客の生命の安全や効率的な運行を行う上で、年齢基準を設ける補とは必要と考えられる。同様に、警察官や消防士が市民の生命や生活を守る上において、体力測定などを含む一定の年齢基準が求めら得ることは納得できる。そういう意味で職場における区別(米国法律的にいえば合理的差別)は存在する。(p.26-7)


★長沼弘毅 (1947) 『同一労働同一賃金論について』 ダイヤモンド社


第一章 「同一労働同一賃金」の意義
 第一節 除雪 −問題の焦点
 第二節 「生活必要」原則との関係
 第三節 「同一労働同一賃金」の意義 「同一賃金」とは何か 「同一労働」とは何か


第二章 各国における賃金統制の変革
 第一節 概説
 第二節 各国における実例 イギリス・アメリカ・オオストラリア フランス・ノルウェイ・その他の国


第三章 男女間の賃金
 第一節 序説
 第二節 女子の生活費

 われわれは、賃金問題の指導原理の一種として、別に、「生活必要原則」(Princile of Living Need) 即ち、賃金は、「各人の生活の必要に応じて」(to each according to his need)という原則を持っている。ところで、同一労働に対して同一の賃金を与えるという原則と、賃金は生活の必要に応ずべきものであるという原則とは、全く、相背馳するものであるという説が、広く行われている。われわれは、これを、どれをどう考うべきものであろうか。(p.7-8)

 概括的にいえば、この説(五人標準説)に対しては、次のような判決が与えられたと考えて、大過はない。
 1 五人標準は、各国の実情からみれば、事実に符号せない。にもかかわらず、成年男子労働者に対して、一律に五人標準の賃金を与えることは、三人家族の世帯に、五人分の食糧を配給すると同じことである。
 2 存在せない家族を承知の上で、これに、五人標準の賃金を、あえて支給しよう、という倫理的社会的間t年からの主張があるが、かような観点からしても、五人は、飽く迄も、一種の擬制であるから、それ以上の子供を持つものには不利となり、それ未満の子供を持つものは、過当に利得することとなる。
 3 国民所得の総額からいっても、産業一般についてみても、一律に五人標準の賃金を支給するだけの負担能力は、全然ない。
 4 仮に、右の賃金支給を強行したとすれば、産業の倒産は続出し、物価は奔騰し、結局、労働者の生活向上は、ぜんぜん期待しえないこととなる。(p.13)
 そこで、各国のジル低を見ると、基本賃金の算定標準としては、労働者本人一人(稀に、本人およびその妻)の生活の必要をとり、家族負担に対s知恵は、その実数に応じて、家族手当を支給するという方法によって、妥協する国が大勢を占めるに至った。(p.13-4)

 

 

 


◆060903作成




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