Designer’s Note #1


アカネイアの国々



 大陸南東部の中原地帯を支配するアカネイア聖王国は、千年王国と言われるようにもっとも歴史の長い豊かな王国です。
 100年前の戦い(第一次ドルーア戦争)ではドルーア帝国の前にあえなく破れ一度は滅亡するのですが、唯一生き残ったアルテミス王女と名門貴族の若者カルタスによって再建されました。

 マルスが生まれた頃には他の6王国の宗主国として、また多くの自由都市・開拓都市の守護者として強大な力を誇っていました。
 パレスを支配する王家の他に、広大な自治領を擁する五つの有力貴族があります。
 ディール候シャロン(ミディア)・レフカンディ候カルタス・アドリア候ラング・メニディ候ノア(ジョルジュ)・サムスーフ候ベントと呼ばれ、これらの有力貴族は王家に従属しながらも独立した兵力を擁し、他の王国に匹敵する程の勢力を誇っていました。

 しかし暗黒戦争の初期においてラングとベントは王家を裏切り、最有力のカルタスはお家騒動の混乱から兵を動かせず、やむなくシャロンとノアだけが王国を守って戦う事になります。そして結局ジョルジュとミディアは父を失い、裏切り者達の手によって捕らえられる事になったのです。

 パレス魔道宮(魔道の学院)の最高司祭ミロアは魔道士達を率いて王都パレスを守ろうとしますがカダイン魔道軍の前に敗退、自らもガーネフとの対決で娘リンダをかばって倒れます。
 滅亡したアカネイア運命は悲惨なものでした。
 王家に連なる者はニーナ王女を除いてすべて処刑され、後にカミユが市政官として赴任するまで血みどろの粛正が繰り広げられたのです。



 アリティア王国はもともと大陸中央の湿原地帯にあった開拓都市が、第一次ドルーア戦争の後にアカネイアの援助を得て独立したものです。
 救国の英雄アンリの血を引く王家は国民から絶大な支持と尊敬を得ており、小国ながらその騎士団の強さには定評がありました。
 北方の蛮族の攻撃から民を守り続けられたのも、精鋭をもってなる宮廷騎士団の力によるものなのです。

 アリティアの不幸は建国王アンリが生涯妻を迎えず子をもうけなかった事でしょう。そのため彼の死後に国が割れてグラの独立を許してしまいました。
 アリティアはアンリ王の弟マルセレスの系統に移り、マルセレス→マリウス →コーネリアス→マルスと代を重ねます。

 そしてアンリが残した言葉「アリティアは聖王国(アカネイア)の盾となれ」
 を国是とするがゆえに、やがて戦乱の渦中に巻き込まれてゆきます。
 思えば英雄アンリのアルテミス王妃への思慕が、アリティアのその後の運命を狂わせたのかも知れません。



 そういう意味ではグルニアもまた不幸な国と言えるでしょう。
 ドルーア帝国(第一次)の崩壊後その広大な領土に二つの国が誕生しました。
 その一つがグルニア王国です。

 初代国王はアカネイア自由騎士団のオードウィンという老将軍でした。
 オードウィンは騎士団長であったカルタス候を助けて多くの戦いに勝利し祖国解放に貢献したのですが、彼の名声があまりにも高まる事を恐れたカルタスによって辺境のグルニアへ追いやられたのです。
 しかし将軍を慕う多くの人々があとを追ってグルニアに集まり新国家の建設を成し遂げます。国民気質は剛直にして単純。生き残ったマムクートに対しても優しく接して共存をはかったと言われています。そして侵入する蛮族や盗賊と戦いながら痩せた土地を耕す過酷な日々の中で大陸随一の勇猛果敢な騎士団を育て上げるのです。

 しかし時の王ルイは祖先に似ずあまりに気弱でした。
 復活したメディウスに恐れをなしてドルーア再興に協力してしまい、その結果、幼い子供達(ユベロとユミナ)をガーネフにつれ去られてしまいます。
 ガーネフの操り人形になったルイは、やがて精神に変調をきたし悲惨な末路を迎えます。
 それとも知らず国民は打倒アカネイアを叫び自ら兵士となって前線へ赴きます。
 それは長い間アカネイアによって虐げられてきたこの国の人々の、心からの叫びだったのかも知れません。



 そんなグルニア王国に隣国のマケドニアは共感を持っています。
 マケドニア王国はグルニアとは違いアカネイア王家の全面的な支援を受けてきました。

 それには複雑な事情があります。
 マケドニアは旧ドルーア帝国の奴隷であったアイオテが興した国です。
 アイオテは他の奴隷達を率いて反乱を起こし7年もの間帝国と戦い続けました。
 困難な戦いの中で目はつぶれ腕を失い、歩く事さえできなくなったのですが、それでもまだ戦い続けたと言われています。

 ドルーア滅亡後、解放された奴隷達はこの地にマケドニア王国を建国し国王としてアイオテを選んだのです。アカネイア王となったカルタスはアイオテの勇気を讃えて多大な援助を行いました。しかしその裏にはマケドニアの建国によってグルニア王国の勢力拡大を阻止せんとするカルタス王の遠大な計画があったのです。

 パレスの人々にとってマケドニアなど奴隷や流民が集まった辺境の野蛮な国に過ぎず、番犬に餌を与えるようなつもりで接してきたのでしょう。
 しかしマケドニアの民はそのような屈辱にも堪え忍びました。そして過酷な自然の中で田畑を切り開き確実に国力を蓄えていったのです。
 ミネルバが生まれた頃のマケドニアはすでに強力な竜騎士団と豊かな国土を持つ大国へと成長しつつありました。
 それなのにアカネイア王国のマケドニアに対する姿勢は以前となんら変わりありません。低俗な下級役人が内政に干渉し、時には武力をちらつかせて賄賂を要求したりします。
 そのたびにマケドニア王オズモントは床にひれ伏して情けを請うのです。
 その哀れな父の姿を見ながらミシェイル王子は成長しました。
 彼の心の中にアカネイアに対する恨みが蓄積していったのは言うまでもありません。



 レフカンディの北にはオレルアンと呼ばれる緑豊かな草原地帯が広がります。
 かつてこの地方はいくつもの騎馬部族が相争う辺境の地でした。

 王国の統一を成し遂げたカルタス王は、この地にも一軍を差し向けて平定を行います。
 そして自分の一族の者を王に任命して新たに国を興したのです。
 しかしオレルアンは近年に至るまで抗争の中にありました。
 征服者であるアカネイア貴族と先住民でありながら奴隷身分に落とされた騎馬部族との間で激しい戦いが続いていたのです。

 それがようやく落ちついたのは王家に一人の英雄が現れたからです。
 彼は病弱であった兄王を助けて国制の改革を行います。
 騎馬の民を奴隷身分から解放し、さらに王族の若者達を自らの騎士団に迎えて領主としての地位を与え、無能な貴族達を追放します。
 貴族達はアカネイアの後押しを得て反乱を企てますが、騎馬部族を配下に従えた若き王太子の武力は彼らの及ぶところでなく各個撃破されて内乱はあえなく終結しました。
 草原の狼と呼ばれたその若者・・・名をハーディンと言います。



 グラ王ジオルは強欲で尊大な領主でした。
 思うままに領民から搾取し、美しい娘と見れば手当たり次第につれ去りました。
 それでもなお彼の野心はおさまりません。
 また隣国アリティアのコーネリアス王の声望が高い事にも嫉妬していました。

 そんなときカダインの司祭ガーネフがジオル王のもとを訪れます。
 「近々カミユ将軍率いるグルニア軍がアリティアに侵攻する
  当然コーネリアスは同盟国であるグラにも出兵を促すだろう
  貴公は戦いのなかばでアリティア軍の背後を突け
  コーネリアスを倒せばアリティア王国は貴公のものだ」

 カミユは名将とうたわれたコーネリアスとの名誉ある戦いを望んでいたのですが、グラ国軍の裏切りによって勝敗はあっけなく決します。
 その行為に怒ったカミユは軍を引き上げるのですが、結局アリティアはガーネフとグラの軍勢の前に滅亡してしまうのです。
 こうしてグラ王国はジオルという無能な王を持ったばかりに時代の流れに翻弄されやがて滅亡する事になるのです。



 最後にタリスについてお話しましょう。
 この王国の成立は最も新しく初代の国王がシーダの父親であるモスティン王です。
 もともとこの島国にはいくつかの部族が割拠して抗争を続けていました。

 若くして小部族の長を継いだモスティンはタリス島の統一を目指し、ついに平和な王国の建設を成し遂げます。
 しかしパレスなど中原の人々にとってタリスが辺境の蛮土であることには違いなく、そんな王国があることすら知らない人がほとんどです。
 ですが、それ故にマルス王子をはじめとするアリティアの残党が、二年もの間ドルーア帝国の監視の目からのがれ続ける事ができたとも言えます。
 いずれにしても他国にとっては侵略するほどの価値もない、貧しく遅れた国である事だけは間違いないようです。



 他にもいくつかの自由都市や地域がありますので簡単に説明します。

 カダインは大賢者ガトーが興したと伝えられる砂漠の魔道都市。
 ラーマンは守護神ナーガを祭る古代の神殿
 テーベは死の砂漠マーモトードにあるという古の幻の街。
 ワーレンは異世界からの貿易船が入る自由(自治)港湾都市。
 ノルダはパレス王宮の城下町。
 ガルダは辺境の開拓都市。ペラティはアカネイアの流刑地・・等です。



(FEデザイナーズノート第1回、終わり)