Kyoto Shimbun 1998.3.17

 「考える人」輝き再び
  京都国立博物館 酸性雨サビ除去

  
緑青の跡が涙のように
も見えた [考える人」
(97年1月撮影)
   制作当初の黒いつやがよ
みがえった「考える人」

 酸性雨などの影響で全身に緑青の青白い筋が流れる無残な姿になっていた京都国立博物館(京都市東山区)のロダン作のブロンズ像「考える人」が十六日までに、薬品処理により制作当初の黒いつやのある色合いを取り戻した。化粧直しを終えた不朽の名作は、再び庭園の池畔で陽光に輝いている。

 フランスの巨匠、オーギュスト・ロダン(1840―1917)の彫刻「考える人」は国内に四体あり、京都国立博物館には一九五〇年に寄託された。以来、博物館のシンボルとして親しまれていた。

 ところが、酸性雨や排気ガスなどの影響で、三十数年前から像全体に緑青がつき、最近ではいく筋にも跡がついて「泣いているよう」な姿に。彫刻を削る訳にもいかず、同博物館が保護策を検討していた。

 今回の修復では、緑青を元の黒色に化学変化させる硫黄化合物の薬品を使用し、二カ月かけて表面全体を処理したうえ、最後にワックスをかけて仕上げた。また、地震に備えて、像にステンレス製の棒を取り付け、台座に埋め込んだ。

 同博物館の伊東史朗資料調査研究室長は「いずれは排気ガス対策も必要だが、しばらくは名作の輝きを保つことができる」と話している。



 卒業証書に元号はいや
 京の小学生と父親 あすにも人権救済申し立て

 卒業証書の日付を希望通り西暦で表記しないのは、「子どもの権利条約」の「思想、良心、宗教の自由」「意見表明の自由」などに反し人権侵害だとして、京都市西京区の市立福西小六年の児童(12)と父親は十八日にも、京都弁護士会に人権救済の申し立てを行う。

 児童の父親によると、児童と父親は二月十八日、「元号は国民主権とは違う。卒業証書は自分が選んだ西暦表記にしてほしい」と、卒業証書の日付と生年月日を西暦で表記するよう奥村威校長に申し入れた。しかし、奥村校長が「日本人として元号を使うべき」などととして受け入れなかったため、申し立てを行うことにした、という。

 児童の父親は「在日外国人と家族ぐるみの付き合いをし、西暦表記に慣れている。一生の記念になる卒業証書は、子どもの希望をかなえてほしい」と説明。一方、奥村校長は「市教育委員会の指導もあり、校長名で学校から出す文書は全て元号を使っており、特例は認められない。子どもの権利条約に反すると考えたことはなく、戸惑っている」と話している。

 同小では二十三日に卒業式が行われるが、西暦表記が認められない場合、児童側は卒業証書を受け取らない方針という。

 卒業証書の年号表記について、市教委は一九九六年二月二十九日付の通知で、外国人の児童、生徒の生年月日に限って西暦表記を認めたが、卒業証書などの発行年月日は元号表記を続けている。



 京都大、旧制三高時代の正門 新調へ

 京都市左京区の京都大総合人間学部で、旧制三高時代の面影を伝える木製の正門の新調工事=写真=が進んでいる。今月末に完成、新たな装いで新入生たちを迎える。

 現在の京大本部構内にあった三高は明治30(1897)年、京都帝国大の創立に伴い、東一条通を隔てた現・総合人間学部構内へ移転した。正門はその際、門番所とともに建てられた。学内でも、残り少ない三高時代の遺構となっている。

 正門は、学園紛争時はバリケードで封鎖されるなど京大の歴史に立ち会ってきた。近年、傷みが目立ってきたため、4本の門柱やアーチ型の扉などの意匠を残したまま新調することにし、先月下旬から工事を始めた。



 学研・高等研
 新 理 事 長
関西経済界で支援
  専務に関経連常任理事

 関西文化学術研究都市の国際高等研究所(京都府相楽郡木津町)の理事会と評議員会が十六日、京都市下京区のホテルで開かれた。来年度からの新体制が正式に決まり、新理事長に選任された新宮康男関西経済連合会会長(住友金属工業会長)らが抱負を述べた。

 理事会後の記者会見で、新宮氏は「けいはんな学研都市の中核である国際高等研究所が発展すれば、学研都市(全体)の発展につながる。微力ながら全力を尽くしていきたい」と述べ、「一時的に(運営)基金に食い込んでも、研究を進めていきたい」と研究推進に意欲を見せた。

 二期四年間務めた岡本道雄現理事長は、奥田東元理事長と共に、今回新設された特別顧問に就任する。専務理事には、稲盛和夫京セラ名誉会長に代わり、関経連の関淳常任理事が選ばれた。岡本氏は「産官学の協力で研究所は発展した。推進力のある産業界からは、さらに力をちょうだいしたいと思っていた。関西財界のリーダーに(理事長を)お引き受け願い、思い残すことはない」と述べた。

 理事長、所長と合わせ、京都色が強いといわれてきた同研究所は、今回の交代により、関西経済界全体で支える体制が強まった。

 任期は二年で、就任は四月一日から。



 美しく祇園の風情 守りたい
 飲食店経営者ら「パトロール会」結成

 祇園の飲食店の経営者やスナックのママさんたちが、キャッチ・バーなど悪質業者の増加や不法駐輪、ごみの散乱などの問題から祇園町を守ろうと「祇園パトロール会」を結成。初の具体的活動として十六日、桜の名所として知られる白川・巽橋付近の清掃を実施した。メンバーは花見シーズンを前に「美しく風情ある祇園のイメージを守りたい」と、白川の流れに入って空き缶やごみを拾い集めた。

 京都を代表する祇園の界わいでは近年、不法就労の外国人ホステスの増加や自転車・バイクの不法駐輪、ファッション・マッサージなどの風俗店の進出などさまざまな問題が起きている。鴨川の西の木屋町周辺では昨年、少年グループによる事件が多発、祇園町でも治安の悪化を懸念する声が出されている。

 そこで、二、三十年以上前から祇園に店を構える経営者たちが、自分たちの手で祇園のたたずまいを守ろうと、二月末に同会を旗揚げ。半月ほどの間にスナックやクラブ、料理店などの経営者約三十人が結集した。

 初の具体的な実践活動となったこの日は、メンバーのほか、若い板前さんや従業員も含め四十五人が参加、白川や岸の植え込みに捨てられた空き缶やナイロン袋、弁当やそうざい類のパックなどを拾い集めた。

 同会では今後、半月に一回ほど会合を開いて地域の問題の解決方法や、祇園町の活性化につながるイベントの開催などを話し合う。道端に散乱するごみの掃除や、治安を守るための自衛パトロールなども行うことにしている。

 呼びかけ人の源田勝さんは「祇園の風情を大切にして、安心して遊べる町にしたい。花街のおかみさんたちにも参加を呼びかけ、ネットワークを広げていく」と意気込んでいる。



 平山画伯の絵 寄贈
 50号の大作「宇治平等院」
 「生まれ育った宇治市へのお礼に」と会社役員

平山氏の「宇治平等院」と、
寄贈者の鬼界安一さん(左)
 京都府宇治市が宇治橋近くに建設を進めている「源氏物語ミュージアム」の今秋開館を記念し、同市宇治の会社役員鬼界安一さん(74)が十六日、日本画壇の巨匠、平山郁夫氏に制作を依頼した日本画「宇治平等院」を同市に寄贈した。

 「宇治平等院」は50号の大作。黄色がかった空を背景に、淡緑色の池に浮かぶ鳳凰堂の優美で穏やかな姿を描いている。

 鬼界さんは九四年、平等院を題材にした平山氏の別の作品に感銘を受けた。地元へのミュージアム建設の話が持ち上がり「生まれ育った街、長年仕事をさせてもらった社会へのお礼として、平山氏の絵をミュージアムに寄贈できれば」と思い立った。翌年、平山氏に趣旨を伝えて平等院の絵を依頼し、このほど完成したという。

 鬼界さんは「世界の文化財保護に力を尽くしておられる平山さんが世界文化遺産を描いた作品には、特別の意味があると思う」と感慨深げ。受け取った久保田勇市長は「平山氏は鬼界さんの感謝の念に打たれ、特別に筆を取って下さったのだろう。エントランスホールに展示し、大勢に見てもらいたい」と喜んでいた。



 京都教育大
 辻教授が情報処理センター長に

 京都教育大は十六日までに、新しい情報処理センター長に辻朗教育学部教授(55)を選んだ。任期は四月一日から二年。このほかの同大学人事(四月一日付)は次の通り。

 兼付属京都小校長(教育学部教授)和田尚▽兼付属幼稚園長(付属環境教育実践センター教授)梁川正▽教育学部教授(教育学部助教授)川口容子▽教育学部助教授(付属桃山中教諭)水山光春▽同(教育学部講師)佐竹伸夫▽同(教育学部助手)梶原裕二▽同(同)大澤弘之▽同(教育学部講師)中比呂志▽同(同)中峯浩▽同(大阪府立三国丘高教諭)鈴木壽一▽同(教育学部講師)徳岡慶一



 京都大で生体肝移植 右葉では2例目

 京都大医学部付属病院の移植外科(田中紘一教授)は十六日、肝硬変の静岡県の女性(48)に、夫(52)の肝臓の右葉を使った生体肝移植を行った。京大の右葉移植は今年一月に「医の倫理委員会」が承認して以来二例目。

 生体肝移植では通常、臓器提供者の負担を軽くするため小さな左葉を移植に使っている。今回の患者は体重が六十二キロあって左葉では肝容量が不足なため、大きな右葉を使ったという。


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