Expo見聞録
【米国,サンフランシスコ】 1月12日――
このことが正しいことすでに証明されている。展示会の成功は,ブースで配られる小物の価値と多彩さで判断できる。この基準で見れば,終わったばかりのMACWORLD Expoは大成功だった。
Iomegaは1年以上にわたり売上げ不振に苦しんだあとで,業績が回復したことを証明しようと,とてもシックな黒いベレー帽を大量に配っていた。Lexmark Internationalは,マッチ箱のようなミニチュアのレーシングカーを大量に用意して,無料で配っていた。ベレー帽とリムーバブルストレージ,あるいはレーシングカーとプリンタにどのような関係があるのだろう。誰も立ちどまって尋ねる者はいない。来場者はショッピングバッグに戦利品を集めるのに忙しすぎた。
Corbis (Bill Gates氏が所有するストックフォトの会社) のスタッフも他社に負けじと,'60年代のグラマー女優Elizabeth Taylorのセクシーな写真を見ることができる'60年代スタイルのフォトビューワを配っていた。もちろん,いつものヨーヨー,ベン,バッジ,音を出すおもちゃ,誰も読みはしない何Mバイトものマーケティング資料を収めたCD-ROMも配られた。
だが,なかには貴重なデータを収めたCDもあった。ウェブオーサリングソフトや事務用アプリケーションの「ライト」バージョン,またフル機能のパッケージを収めたものもいくつかあった。たとえば,エンジニアや開発者はLinuxPPCのブースに集まり,PowerPCユーザー向けのMac版Linux「LinuxPPC 1999 Q3」をわれ先に手に入れようとしていた。
また,無料でハードやソフトを提供するくじ引きもあった。賞にiMacを用意したいくつかのコンテストはもちろん歓迎されていたが,今年すごかったのはMetrowerksで,3,000ドル以上するSonyのロボット犬AiboをExpoの最後にプレゼントした。
会場での愚行
Steve Jobs氏はExpoの基調講演のステージに立つときは愛想よく,自信たっぷりに振る舞うが,6日午後,展示会場をまわる足を止めて,Appleのロゴ入り腕時計を販売するAppleWatches.comブースのスタッフを人前でしかりつける姿に,来場者はApple CEOの別の一面を見た。
目撃談によれば,Jobs氏が両手を振りかざして,ブースをただちに閉じるように大声で要求するのを聞いて,ブースのスタッフはあっけにとられていたという。大物CEOは,流行の時計がAppleにとって「恥だ」といったらしい。AppleWatches.comは,彼の前任者であるGil Amelio氏が認めたライセンスのもとで営業していることを知らなかったようだ (ライセンスは2001年まで有効) 。また,時計のデザインはすべて,Appleの認可を受けているのだ。とんだ失態だった。
明るい話題では,最もよく働いたブースのスタッフを称える賞が,GCC Technologiesブースの女性に贈られる。彼女はじつに仕事熱心で,GCCのプリンタのプラスチックのケースを (トレイともども) ブラウスの上からかぶり,ケースには頭と両腕を出すための穴がわざわざ開けられていた。彼女はその奇妙な物体を何時間も身につけていながら,しじゅう楽しそうだった。
だが,Palm ComputingとHandspringの関係を表現するに,「楽しそう」という言葉は不適切だ。両社は同じ有能なデベロッパーによって設立され,両社のハンドヘルド製品は同じPalmOSで動くが,両社のブースのスタッフは競争意識とは距離を保とうとしていた。だが,両社は混同しそうだった。どちらのブースもデザインとレイアウトがそっくりだったのだ。サードパーティPalmOSデベロッパー用の小さいブースまで似ていた。
このExpoが先例となるかどうかはわからないが,ブースのスタッフもベンダーも,今年は例年と違って展示会が土曜日まで開催され,土曜にも来場者が大勢訪れたことによい印象を持ったという。
ほとんどのExpoで,展示会場の会期は火曜日から金曜日までだが,今年は2000年を迎えるパーティーと心配に備えて,1日日程をずらした。新年が土曜日から始まった今年,ベンダーはその翌日に仕事を片づけて,サンフランシスコに向かうのを嫌がったのだ。また,飛行機で移動する際の2000年問題を心配する声もあったという。その結果,会期が土曜にかかり,来るつもりはなかったかもしれない何千人ものベイエリアのコンシューマーが展示会を訪れた。
[John Batteiger,MacWEEK.com]
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