9月30日(木)



ゴメス、また爆発6打点

逆転満塁一掃打&連夜の36号

3点適時打を放ったゴメス 逆風を、プレッシャーを、ひと振りで吹き飛ばした。4番打者のプライドがチームをマジック「1」、11年ぶり悲願まで、あと1勝にまで導いた。

 レオ・ゴメス内野手(32)が連夜の大爆発だ。2点ビハインドの6回2死満塁。五十嵐の150キロの真っすぐをたたき右中間突破、走者一掃の逆転打。7回には2試合連続、だめ押しの36号3点弾。チームの全得点中、実に6点を1人でたたき出した。

 前夜の決勝2点弾と合わせ、2日で8打点の荒稼ぎ。今季通算では108打点。76年、マーチンが記録した104打点を抜き、中日球団の外国人選手としての新記録達成だが、ここまで来ればもう個人記録には興味はない。「記録を作ったということはうれしいことだが、チームが勝ったということが何よりだ」

 怒りが、痛みが、殊勲打の原動力だった。初回無死満塁、先制の絶好機で見逃し三振に。判定に激高して佐々木球審に詰め寄ったが、実は照れ隠しだった。雪辱を期した3回の打席では、右足くるぶしに死球。「大丈夫」と言ったが、激しい痛みは続いていた。

 チームは5回まで6安打4四死球、2失策で12人の走者を送りながら無得点。自らつくった悪い流れが続いていたとあっては6回2死から、関川、李、福留がつないでおぜん立てしてくれた打席で、燃えないわけにはいかなかった。この時だけ、痛みは忘れていた。

 「あした優勝を決めたい? 当然だよ。チャンピオンシップの価値は日本でも、アメリカでも変わらないからね。大リーグでできなかったシャンパン、ビールかけを楽しみにしているよ」

 昨年は9月の声を聞くと同時にチームは失速、横浜にペナントを譲った。ゴメス自身も、その月前半の残留決定の報に安心したのか、3割は打ったがわずか2本塁打、4打点とチームに歩調を合わせたが、今年は違う。

 今月だけで6本塁打、打点は何と26点。7連勝のラストスパートに十二分に貢献している。当然、30日もさらに数字を上乗せするつもり。そしてボルチモアで待つ家族に電話、こう話すつもり。「パパはチャンピオンになった。夢を実現させたんだ」と。

【写真】ヤクルト−中日 6回表2死満塁、ゴメスは右中間へ3点適時打を放ち1塁を回る=神宮球場で



前田奮闘、堂々5回2失点

5回2失点の力投を見せた前田 立派な主役だった。ヒーローインタビューのマイクの前に立った前田幸長投手(29)は目を細めて「福岡の実家に大きなお土産を持って帰れます」。その左腕でたぐりよせた勝利に酔った。

 山本昌が登板前日になって体調不良に。それでも慌てる必要はない。二の矢、三の矢が用意されている竜投の象徴的な出来事だった。「急っていえば急だけど、5イニングを1、2点という自信はあった」。9月11日以降3度の先発でかつてのリズムを取り戻していた左腕に不安はなかった。

 山田久投手チーフコーチも「スタミナの問題はあるが、調子はずっとよかった」と迷いなく起用。期待通りに4回まで零封。5回、先制の2点を与えたが、それまで味方打線が得点できなかっただけ。「先発というより、一番最初に投げる投手。その責任は果たせたと思う」と前田は満足そうに振り返った。

 しかも代打を送られた6回に打線が大逆転。「負け投手が勝ち投手になっちゃった」。さらに6打点のゴメスが足を痛めてお立ち台を拒否。スポットライトを浴びるおまけまでついてきた。「きょうは代役の1日でしたね」と言ってまた大笑い。「明日は(優勝決定後)一番最初にマウンドへいくぞ。雨、降らないよね」。大役を果たした前田の気分は、早くも胴上げモードだ。

【写真】ヤクルト−中日 5回2失点の力投を見せた前田=神宮球場で



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