グラナダ


 「ウルフチーム」の第一印象はとにかく最悪だった。X68版の「アークス」が1万円もするというのに、思わず目を覆わんばかりのひどい出来(アークスそのものの内容は別として)だったからだ。その最悪な印象を豪快な爆発音と共に吹き飛ばしたのがこの「グラナダ」だった。

 そもそも俺は戦車ゲームが好きだ。戦車というもの自体には特別な興味も知識もないのだが、戦車ゲームは昔からかなり好きだった。旅館とかにあった、戦車の模型を操縦して、砲身をターゲットにぶち当てるゲームなんかも好きだった(なんだそれ)。当時の記憶を正確に手繰り寄せる事は出来ないが、おそらくこの「グラナダ」も「戦車ゲーム」だったからこそ着目し、発売日に購入したのだと思う。(もっとも、X68のソフトのリリースが少なかったことが最大の理由だろうけど)

 さて、ゲーム内容は真上視点の任意8方向スクロールシューティング。各ステージごとに設定された特定の敵を全て破壊した後、ボス戦となる。
 基本となる攻撃方法は2種類で、ひとつは強烈な連射力を誇るバルカン(?)、もうひとつが、「方向固定」のトリガーとの同時押しによる「主砲」である。実にシンプルだが、これの使い分けはなかなか面白く、人によってその使用比率は結構違っていたのではないかと思う。
 それ以外に、各ステージごとに異なったオプションパーツが用意されていて、これをゲットする事によって戦いを有利に進める事が出来た。このオプションが自機の弾を当てるとそれを反射して、他の方向にばら撒くもの、誘導ミサイル、自機の回りを回転してガードしてくれるもの、遮蔽物を付きぬけて攻撃できるものなど、実に多彩だった。しかもものによっては「同時押し」によって普段と違う機能が発揮されるものもあり、各ステージの戦略性を高めていた。

 敵の攻撃もザコ、ボスともに非常に多彩で、素直に「面白いシューティング」と言えるゲームである。特に6面ボス、ラスボス戦はかなり熱い。ラスボスは外見もなかなかの迫力だし、攻撃方法も多彩(だったと思う)なのでぜひ一度見て頂きたいものである。
 システム的なことを詰めていくと、シールドの回復方法がない事や、任意スクロールがゆえのタルさといった問題も少なくない。また、操作性もお世辞にも「良い」という部類に入るものではないのだが(特に障害物にひっかかる感じがかなり不快)、そういう粗さを鑑みても、全体としてはなかなかよくまとまっていた。開発当初からメガドライブへの移植が考慮されていたではあろうが、「X68000オリジナルゲーム」として、このレベルのゲームが発売された事はなかなかの事件だったのではないかと思う。(これより前、89年に「ジェノサイド」が出ているが…)

 各ステージの趣向にも見るべきものは多い。特にステージ2の、ジャングル上空を飛行する巨大輸送機上の戦闘はゲーム史に残る名シーンのひとつと言っても過言ではない。その輸送機のエンジンを次々に破壊していくのだが、冷静に考えると(考えなくてもか)自殺行為に他ならないわけだが、とにかくそのビジュアル的なインパクトにはものすごいものがあった。他にも視界の悪い地下や、「アサルト」を思い出さずにいられない自然豊かなステージなど、どれも個性的だった。森林のステージでは水上の移動もあるのだが、これが地上を走るのよりも遥かに移動速度が速く、驚かされたもんである。(明らかにおかしいのだが…)

 グラフィック部分で言うと前述のステージ2のインパクトが最強であると思われるが、随所にソフトウェアによるスプライトの拡大縮小・回転が行われていて、これもなかなか見物である。(思いっきり「擬似」らしいが)
 惜しむらくは自機の小ささ…なのだが、これがでかけりゃでかいでゲームバランス的にどうか、という問題もあるので、これでよかったのであろう。
 オープニングデモは、テンポが悪いところもあるのだがBGMとのマッチングが良く、、雰囲気を盛り上げるのに一役買っていた。このデモの中で主人公らしき男が女と別れるシーンが描かれたりして、「この主人公にはなんかドラマがあるらしい」というのを、「なんとなーく」伝えるのは後に発売される「FZ戦記アクシス」のオープニングにも継承されるノリだったりする。

 また、ステージクリア後のローディングの際に1枚絵が表示されるのだが、これがまたなんともおかしい。数種類ある中に明らかに「ヘタクソ」な絵があるのだ。中でも印象的なのが、自機に人間が吹っ飛ばされてる絵なのだが、その人間が…なんと言えばいいか…「頭は丸、体や手足は棒線」、みたいな感じなのである(「保田圭の絵みたい」、でわかる人にはわかるだろう)。俺も絵心のない人間だが、この人よりはマシだ、と思えるほどの、ハッキリした「素人絵」である。なんと大胆にもオープニングデモのラストカットもその人の絵が描いていた。グラナダ最大のナゾと言える部分である。

 さて、「グラナダ」を語る上で絶対避けて通れないのがサウンドの事である。先にも少し述べたが、オープニングの曲がいきなり名曲である。特に冒頭、カメラが移動して、敵戦車が見えた瞬間のバイオレンスな咆哮とも言えるようなあの音がたまらない。と言ってもこれはあくまでも内蔵音源の話で、MIDI音源バージョンのモノは正直小奇麗すぎて、あまり魅力を感じない。これはハッキリ言って好みの問題で、ことゲームミュージックに関して俺は概してちょっとざらついた音の方が好きなようだ。とにかく機会があればぜひ聴き比べて頂きたい。

 他にも2面や4面〜最終面の曲はどれも好きである。また、ステージクリアのファンファーレが、ボス敵の爆発と同時に鳴り響くのだが、このタイミングが非常にキモチイイのである。シューティングの「演出」というのは、ある時期から「進歩」が著しいと思われるが、このゲームのステージクリア時のような、細かい部分でのプリミティブな快感というのはむしろ無視されがちになってるような気がしないでもなく、少々残念である。

 しかし、このゲームのサウンドで最も重要なのは効果音であると言い切ってしまおう。まず、メインの攻撃となるバルカンの発射音だが、これが結構重厚で迫力がある。連射力が強い通常攻撃というのは概して「シャカシャカ系」が多いと思うが、このゲームでは「チュドドドド系」だ。俺は自機の発射音は結構でかめが好きなので、「グラナダ」ではその点大満足であった。
 そして何よりも、硬い敵を破壊したときの「バコーン!!」(「ガァコオオンン!!」かな?)という、乾いた爆発音、これに尽きる。ちっこい敵を倒した「じゅわっって感じの音もグラフィックとマッチしてて結構気持ちいいのだが、「バコーン!!」の快感と比べるとそんなものは文字通り吹っ飛んでしまう。この「バコーン!!」という音を作った人は一体誰なのだろうか?そんな事を知りたくなるくらい、「バコーン!!」は俺にとって魅惑的な爆発音なのである。このゲームが出た頃は効果音もPCMが増えてくる頃で、ともすれば個性が失われてしまう時代に差し掛かっていたのだが、その中でこの「バコーン!!」は今なお、俺の心を捉えて放さない、最高の「爆発音」のひとつなのだ。もっとも、当時「うるせー」という意見があったことも一応付記しておこう。

 とにかく「グラナダ」は俺がX68でプレイしたX68オリジナルゲームの中で1、2を争うほど好きなゲームだ。X68オリジナルのアクション系優良ゲームを作ったソフトハウスというと「ZOOM」や「エグザクト」を挙げる人が多いと思うが、「グラナダ」がある以上、俺は「ウルフチーム」の名を挙げるしかないのである。

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