根強いファンを育てる「顧客情報活用」〜より結果に近いデータ分析とは〜
Cambridge Technology Partners
 12月1日に東京・青山ダイヤモンドホールで、日経情報ストラテジー「マネジメントスクール」が開催された。7回目となる今回のセミナーのテーマは、「根強いファンを育てる『顧客情報活用』」だ。ここでは、その中から特別講義を担当したケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ株式会社の平 安彦氏の講演内容を紹介する。

根強いファンを作るには

 

ケンブリッジ・テクノロジー・
パートナーズ株式会社
アソシエイトディレクター
平 安彦 氏

 一般に『ファン』(固定客)といえば、阪神ファンやApple、CHANELなどのように、他に代替品を求められないところで差別化を図っているケースが多い。しかし、ビジネスにとってのそれは、基本的に安定的に継続購入してくれる顧客を『ファン』と考えるべきだ。それは、裏を返せばオンリー・ワンの製品を必ずしも提供する必要はないということにもなる。したがって、毎日のようにスーパーに買い物に来てくれる顧客は、間違いなく『ファン』と考えてよいだろう。

 では、どうやって『ファン』を育てるかだが、顧客には固定客とそうでない顧客がいる。そこで、固定客でない顧客を固定客化するには、『ファン予備軍』と『偶然購入した客』に分類して、前者の『ファン予備軍』を見つけることが重要になる。

 その意味で、我々にとって改めなければならないことが1つだけある。それが、『分析はマーケティング部門の仕事』という誤った考え方だ。マーケティング部門は調査・分析から戦略・立案を担当し、それをセールス部門が実行する。問題は、この2つの部門の間のコミュニケーションが断たれているケースが多いということだ。

 「戦略を実施した結果や、それに対してセールスの現場がどのように考えているかといったことを、まずはマーケティング部門へフィードバックする。そして、その結果を受けてマーケティング部門は新たに調査・分析を行う。この一連の作業が、変化する顧客のニーズに対応するためには欠かせません」(平氏)。

 まずは、このマーケティング決定に至るプロセスを連係することが、『ファン予備軍』を探し出すための第一歩となる。



図1 企業のマーケティング決定プロセス

顧客との関係性を進化させる

 

 データ分析の対象となるデータには、属性データとトランザクションデータがある。このうち、分析の対象としてよく使われるのは購買などのイベントごとに更新されるトランザクションデータのほうだ。

 「注意すべきは、このトランザクションデータです。実際には、広い意味でとらえたほうがよいでしょう。トランザクションデータが、企業と顧客の関係を示す貴重なデータであることは確かです。また、顧客にマーケティング的なアプローチを仕掛けることで得られた受注データも、顧客との関係性を知る重要な手掛かりとなります。しかし、分析対象となるのは、なにも購買時のデータがすべてではありません」(平氏)。

 平氏の指すところは、現実には顧客と企業との関係は様々なところで発生しており、その中からも顧客の動向をとらえることができるのではないかということだ。

 例えば、スーパーで顧客が入店する際には、カードをリーダにかざしてもらい入店時間を記録する。あとは、レジで清算すれば売上とともに滞在時間も記録することができる。これにより、特定した製品に対して顧客が購買に要した時間を割り出すことができる。こうした行動の積み重ねが、データの分析能力を向上させることになる。

 顧客が購買に至る以前に、どのようなデータを顧客から提供してもらえるか。そのような顧客と企業の関係をとらえることが、データ分析を進化させる重要な要因となる。


購買前の顧客のプロセスを把握する

 

 顧客が購買に至るプロセスの中で、多くの企業がこれまでに力を注いできたことは製品を知ってもらう『認知』のためのマーケティング活動だ。そして、その後は製品を購入した顧客の購買データから、『認知』と『購買』の関係性をデータ分析でとらえようとしている。

 ところが、現実には顧客が『認知』しても『購買』に至らないケースは多々ある。例えば、ホームページで自社のパソコン製品を気に入った顧客が量販店へと出かけた。すると、同じ仕様で安価な他社製品を見つけ、思わずそちらを購入してしまったケースなど。

 また、『認知』から『購買』に結びついた例でも、そこに至るまでには色々なパターンが存在する。

 「今日のデータマイニングなどの分析ツールやソリューションは、その対象がこれらの混沌としたデータであることを知っておく必要があります。しかも、その手法は購買のデータをもとに、『認知』から『購買』に至る多数の動きの中から共通性のあるパターンを見つけ、その法則性を導き出すことにあります」(平氏)。

 『認知』から『購買』の間の経路をブラックボックス化したのが今日のデータ分析ツールのソリューションである一方、前述の滞在時間を計るような工夫によりその間の顧客の行動を把握する方法もある。『ファン予備軍』をファンに近づけるためには、後者のような活動が必要になってくる。



図2 顧客の購買決定プロセス

マーケティングとセールスの連携

 

 では、顧客が購買に至る前のプロセスを把握するにはどうしたらいいのか。その答えは、冒頭で述べたセールス部門からマーケティング部門へのフィードバックにある。

 「マーケティングの本来の狙いは、『認知』から『購買』に至る途中でどのように顧客が行動を起こしたかをトランザクションデータからとらえることにあります。したがって、トランザクションデータに必要なデータが見つからないときには、そのためのプロモーションのトライアルを行うべきで、そこにはセールスとの連携プレーが欠かせません」(平氏)。

 先のパソコン購入の例でいえば、キャンペーンを実施してホームページで見た製品をプリンタで出力して店に持っていけば景品がもらえるようにする。さらには、自社の製品を購入した場合は別の景品を提供するようにしておくことで、購買の前後の顧客の動向を把握できるようになる。

 売上げに直結しているデータだけが、顧客と企業の関係性のすべてではない。購買前の顧客の行動を把握して、そのための対策を考えること。それが、根強いファンを作る顧客情報分析を広げていくためのきっかけとなる。


 なお、本講演の主題である「顧客情報活用」についての詳細を知りたい読者は、ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズのWebサイトから問い合わせすることができる。




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第1回 顧客情報の有効活用方とは
第2回 根強いファンを作るには