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『ヘブン・アンド・アース』中井貴一 独占インタビュー
『ヘブン・アンド・アース』中井貴一 独占インタビュー 紀元7世紀の唐王朝を舞台に、遣唐使として中国に渡った日本人と、反逆者のらく印を押されたかつての英雄の間に芽生えた熱き友情を描いた中国映画『ヘブン・アンド・アース』に出演した中井貴一さん。共演は『紅いコーリャン』や『鬼が来た!』で知られるチアン・ウェンに、『少林サッカー』のヴィッキー・チャオなど中国映画界のトップスターたちの中で、たった一人日本人俳優として参加した彼の撮影秘話などを語ってもらった。

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Q:非常に大変なロケだったと聞いていますが、そもそもこの作品を選ばれた理由は?
2000年12月に、今回の監督であるフー・ピン監督が来日した時、アジア映画について話し合うことがあったんです。その2週間後、「映画に出てくれないか」と電話があって。ところが、台本がない。それじゃあ、出演するも、しないも決められないと思ったんですが、ちょうどそのころ、役者として何か壁にぶち当たっているような気がしていたんです。今のまま、日本で仕事をしていたら、それなりに飯を食っていけるかもしれない。だけど、僕はそれなりになるために役者になったんじゃない。役者って、常に何かに挑戦していないと意味がないと思ってて……。でも、中国のへき地とも言われる新疆(しんきょう)ウイグル自治区での撮影。日本人俳優は僕一人で、4か月のロケなんて、大変に決まっている。どうしようかなと思いつつも、自分が壁にぶつかっていると思っているような時に、こんな話が来るというのは挑戦をした方がいいということじゃないかなと思ったんです。それで、僕はこの仕事を受けるべきかどうかについて、高倉健さんにご相談申し上げたんです。高倉さんは海外の映画の出演経験も多いし……。そうしたら、「どんなにつらい事があっても、引き受けるべきだ」と言われて。それで、思い切って引き受けたんです。

Q:スタッフから聞いたのですが、フー・ピン監督は以前、中井さんが出演されたNHK大河ドラマの『武田信玄』を見ていて、「この俳優は耳がいい。だから、きっと中国語もモノにできるだろうと思って、自分の映画に起用したいと考えた」そうですが……
え? そ、そうなんですか? それは僕は知らなかった(笑)。ただ監督が「武田信玄」を見ていたのは確かで、その時の僕の演技が気に入って、この映画での役をオファーしてくれました。

Q:実際に中国語を話すということはどうだったのでしょうか? 学生時代に習ったとか、過去に中国語を話した経験は?
全然ないです、本当にゼロ(笑)。それに、セリフを一応覚えましたが、もうだめですね。中国語って話せるようになるのに、10年はかかる。ハンパじゃなく、難しいんですよ。

Q:でも、撮影現場で監督や俳優、スタッフなど中国人とやり取りするうちに、基礎会話ぐらいはできるようになったのでは?
僕もできるようになるだろうと期待していたんですけど、まるで無理でしたね。時間がたつにつれて、まあ、監督の言っていることは何となくわかるようになってきましたけど、こちらから能動的に話すことは不可能でした。というのも、中国語の発音には“四声”というんですが、4つのタイプの音があって、同じ言葉でも発音が違うと全然意味が違ってしまう。たとえば、自分では「トイレ、どこですか?」と言っているつもりなのに、発音が違うと、中国人は「何聞いてんだ、お前」みたいな顔を露骨にする。意味を理解してくれるなんて優しいことは一切ないんです。

『ヘブン・アンド・アース』中井貴一 独占インタビュー

『ヘブン・アンド・アース』中井貴一 独占インタビュー
Q:「役者として挑戦しなくては意味がない」から、今回の映画に出演を決めたとおっしゃいましたが、実際にやってみたら、「止めておけばよかった」なんて後悔したりしませんでしたか?
挑戦しなきゃよかったとは思わなかったんですけど、「あちゃー、すごい所に来てしまったな」とは思いましたね(笑)。

Q:2001年の9月8日からスタートした4ヶ月のロケ中、過酷な環境での撮影で苦労し、また9.11同時多発テロが起こり、中井さんにとって恩師であり、親友でもあった相米慎二監督が亡くなるようなつらい事もあったのに、撮影を最後まで無事乗り切れた原動力は何だったのですか?
それはやっぱり、日本人の俳優が一人で行ったということですね。もしも、10人で行っていれば、「俺はちょっと休んでるけど、お前、頑張って」みたいになっていたと思う。でも、僕一人だから、自分が今、ここで弱いところを見せたら、そこにいる中国人俳優やスタッフは僕を見て、これが日本人だと思う。「日本人って、弱いよ」と。そういうことは思われたない。今回の仕事で中国に行った当初、スタッフの中には日本人を知らない人や、日本人に対して学校教育の中で嫌悪感を抱くようになった人などに出会ったんです。当然、初めは差別されるわけですよ。監督は一生懸命僕を守ってくれたり、フォローしてくれたけれどね。そんな中で僕がへこたれると、日本人に対しての印象がますます悪くなるだろうという気持ちがあった。それと、僕は撮影に入る前、最初の挨拶で彼らに、「僕はあなたたちにケンカを売りにきました。日本人の俳優がどこまでやれるか見てください」って。まあ本当にケンカを売りに行ったわけではないし、後になって思ったんですが、僕は心のどこかで、もっと中国と日本が密接な関係になるべきだと思っていたんだと思う。「今の日本人って、あなたたち中国人が思っているような日本人ではない」ということをどこかで見せたかったんですね。

Q:最終的には中国人俳優やスタッフたちとの関係はどうなったんですか?
すっごく良くなりましたよ。英語が少し話せる人とは英語まじりで何とか話し、全くダメという人とはボディ・ランゲージ。指で相手を指したりして、映画『ブッシュマン』のニカウさんみたいに、必死になって話を通じさせる。で、お互いが分かり合おうとすると通じてしまうもんなんですよ。あとは絵で書いて説明したり、漢字を書いたりとか。ただ同じ漢字でも中国と日本ではその意味が違うことはあるんですけどね。

Q:日本の時代劇で何度も立ち回りを経験されていますが、中国映画ではずいぶんと勝手が違ったのでは?
そうですね。まず刀の重さが違いますね。日本刀に比べて、重いし長いし。もちろん立ち振る舞いも違う。劇中、馬にまたがって刀をさばきをしなければならないのですが、手綱を左手で持って、右手に刀を持つでしょう。で、馬をガーッと力いっぱい止めて、方向をひっくり返して、また反対の方向に走っていくというシーンを何十テイクも撮っていると、握力がなくなっちゃうんですよ。で、僕は役柄的に手袋ができないので、摩擦で手の皮がすりむけてしまう。だから、刀は布で手に縛り付けたり、大変でしたね。


Q:劇中の中井さんを見ると、かなり精かんな感じですが、やはり過酷なロケ生活でやせた部分もあるんですか?
体重はすごく落ちました。行く前に5キロ落としたんですけど、で、撮影中はちゃんと食べていたんですよ。なのに、4、5キロやせた。全部で10キロ近くは落ちましたね。今は半分戻りました。でも、それ以上はもう戻らないように努めてますけど。

Q:ロケが終わって日本に帰れたら、まず何をしたいとか、これを食べたいとか考えませんでしたか?
不思議とね、思わないんですよ。たとえば、1週間とか5日間とか仕事で日本を離れると、帰ってきた時に、「何か変わったことない?」って人に聞いたりする。よく考えると、ほんの数日ぐらい海外に行ったからって、その間で何かが大きく変わることはないのにね(笑)。ところが、ポーンと4か月も離れるともう気にならなくなる。実際、僕がウイグルに行ってた時には9.11同時多発テロが起こっていたけど、向こうではそんなニュースも入ってこないし。ただ、中国の食事に飽きてきました。だからと言って、日本に戻ったときに無性に日本食が食べたいとも思わなかった。

Q:ウイグル自治区はイスラム圏なので、羊ばかりの食事だったと聞きましたが、イヤにならなかったんですか?
まったくそんなことないですね。今、BSEでアメリカの牛肉が入らなくなってきているじゃないですか。代用として、羊とか注目を浴びている。知ってます? 羊って脂肪を燃焼させる力があるそうなんです。僕がロケ中、しっかり食べていたのにやせたのは、羊のせいかも。毎日、羊しか食べないですから。で、向こうの羊は臭みがなくておいしいんです。いいかもしれないですね、これからの時代は羊を食べて、ダイエットってね(笑)。

厳しくしんどいロケにもかかわらず、ひょうひょうと話してくれた中井さん。そんな4か月に渡るロケ生活をつづった初の著書『日記』(キネマ旬報社刊・¥1,500)も2月14日に出版した。「俳優は常に挑戦しなくては意味がない」と語る彼が、今後どんな挑戦を見せてくれるのか、楽しみにしていきたい。

『ヘブン・アンド・アース』中井貴一 独占インタビュー
取材・文:前田かおり
『ヘブン・アンド・アース』は2月21日よりニュー東宝シネマほか全国東宝洋画系にて公開

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