石に漱ぎ流れに枕す(いしにくちすすぎながれにまくらす)

 晋(しん)の時代に孫楚(そんそ)という人がいました。孫楚はまだ若い頃、早くも俗世間(ぞくせけん)を捨(す)て、隠居(いんきょ)して山林(さんりん)の中に隠(かく)れ住もうと思いました。そこで、そのことを友人の王済(おうさい)に決心(けっしん)を打ち明けました。その時に、「石に漱ぎ、流れに枕するような生活をする。」と言いました。

 すると、王済はが言いました。

「石で漱ぐことは出来ないし、流れに枕することは出来ないよ。それを言うなら、『石を枕にし、流れで口を漱ぐ』だろう。」

 孫楚はあわててこじつけを考えて言いました。

「いや、石に漱ぐというのは歯を磨(みが)こうと思ったからさ。流れに枕すをいうのは耳を洗(あら)おうと思ったのだ。」

 孫楚は負(ま)け惜(お)しみで言ったのですが、なかなか上手(うま)い返事(へんじ)だと言うことで、この故事から「漱石枕流(そうせきちんりゅう)」という言葉が負け惜しみの強いことを表すようになりました。

 日本の文豪(ぶんごう)、「夏目漱石(なつめそうせき)」の名もこの故事からつけられています。また、「流」と「石」という字をとり、本来(ほんらい)の意味(いみ)とは違(ちが)っていても上手なシャレであるという事で、日本では「流石」を「さすが」と読むようにもなりました。

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