Vol.1

「ビリビリ!キーン!」
体内にものすごい電波のような衝撃を感じ、トールは目がさめた。
そこは緑色のモヤのような空気のたちこめている20畳ほどの細長い部屋のような気がした。
生まれてこのかた見たこともないような空間ではあったが、なぜかトールは懐かしい郷愁を感じていた。
トールの左前方にはアンテナがついたヘッドフォンのようなものを耳につけた男が、なにやら黒い箱のようなモノに向かって体を大きく揺らしていた。右後方では身長2メートル以上と思われる2人の大男が、なにやらワケの分からない言語で激しく言い争いをしている。

「アニイ!久しぶりジャン!」
そこに現れたヒゲ面の男はトールになれなれしく話しかけてきたが、トールは初対面のその男のことをよく知らなかった。よく見るとその男の耳にもアンテナがついていた。

「アニイにもあげるよ!」とその男にわたされたアンテナを耳につけてみてビックリした。
まさにヘッドフォンのようなものからは低音のきいた心地よいグルーブが聞こえてきた。

5分位聞いていただろうか。黒い箱の男が
「どーかな?こんなかんじで?これにアニイのドラムが入ればOKだと思うんだけど。」
とたどたどしい日本語で話しかけてきた。

「オレ、アレックスってゆーんだけどヨロシク!」
男は自己紹介すると握手をもとめてきた。

「あそこにいる外人がオレ達のバンドのメンバーなんだけど後で紹介するよ。」
といいながらテキーラを一気に飲みほした。
ヒゲ面の男もテキーラを飲みながらこっちに来た。どこか見覚えのあるこの男。トールは愛想笑いしながら必死に彼が誰だったか思い出す努力をしていた。

「何年ぶりになるのかなー?30年ぶりか?元気そーじゃん。どーなの最近は?」
トールはまだ彼を思い出せずにキョトンとしている。

「ホセだよ!ホセだよ!ガキの頃一緒に遊んだの忘れたのかよ!今回ヨシザワさんからたのまれてアニイと一緒にやることになったんだけどヨロシク!」
トールはうっすらと彼のことを思い出したのと同時にヨシザワさんからそんなよーな話を聞いたよーな気がしていたが、ハッキリとは思い出せなかった。とりあえず握手をして、彼がくれたテキーラを一気に飲みほした。
ふと時計を見ると深夜の3時過ぎだった。知らない間に大男達の姿は見えなくなっていて、空間にはアレックスとホセとトールの3人になっていた。

「ところでアニイはどんなカンジがいいんかなー?」とアレックスが唐突に聞いてきた。

とりあえずトールは持っていたテープと詩が書いてあるノートに目を通しながら
「ロックンロール!」と一言つぶやいた。

「OK!じゃオレ達の思っているのと一緒ジャン!」とホセ。

「それだけ確認できれば充分だ!今日はもー遅いから作業はやめにしよう。」
とアレックスは再びヘッドフォンをつけた。
トールもホセもヘッドフォンを耳につけてモヤモヤした緑色の空気の中で大音響のロックンロールを聞き続けた。

・・・つづく
 
                                       illust:Yagami Toll
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