大江健三郎非難の大混乱


「金曜日」が創刊された年に大江健三郎がノーベル文学賞を受賞しました。この受賞にたいして「金曜日」は毎回のような大江批判(非難?)を繰り広げて反応しました。

大江健三郎が進歩的文化人であることを疑う人は普通いませんが、「金曜日」は彼が「”御用週刊誌”を出している二つの出版社」(本多勝一)、新潮社、文芸春秋社と特殊な関係にあり、彼らを擁護していることを繰り返し繰り返し非難しました。

私は、主に本多勝一によって行われた、明らかに常軌を逸した非難がそもそもどのような意図で行われたものか理解できませんでした。

何より、この出版社の主宰する文学賞の選考委員になることや、本を出版していることが非難の対象になるのならば、なぜ当時の編集委員である井上ひさし氏は非難されないのかが、全く理解できませんでした。

もっと不思議なのは、新聞雑誌で大江健三郎の受賞を歓迎する談話を発表していた当の井上ひさし編集委員が、自分が呼びかけて創刊した雑誌のこの記事に何の反応も公表しなかったことでした。

私はつぎのような手紙を書きました。


ブンとフン、表裏源内蛙合戦、道元の冒険、ドン松五郎の生活、日本亭主図鑑、偽原始人、新釈遠野物語、浅草鳥越あずま床、下駄の上の卵、月なきみそらの天坊一座、四捨五入殺人事件、私家版日本語文法、薮原検校、吉里吉里人、自家製文章読本、イーハトーボの劇列車、腹鼓記、しみじみ日本・乃木大将、國語元年、コメの話、泣き虫なまいき石川啄木、どうしてもコメの話

言わずと知れた編集委員の一人、井上ひさし様の著書のリストの一部です。注意を喚起したいのは、これらがすべて、「”御用週刊誌”を出している二つの出版社」(本多勝一)の一つ、新潮社から出版されているということです。

47号の本多勝一氏の編集後記は、一体ノーベル賞に当てられたものなのか、それとも大江健三郎氏に当てられたものなのか不分明な、「ガキの作文」の典型ですが、新潮社を舞台に活躍していることが非難の対象になるのならば、まず足下の共同作業者であるはずの井上ひさし様に、批判の刃は向けられるべきでしょう。仲間ボメ・かばいあいほど醜いものはありません。

編集部内の井上ファンのみなさんも、こんな不規則発言を許していていいのですか。

功成り名を遂げると厳しい批判の対象からはずれることを、「横綱化」「家元化」と呼ぼうと思っていますが、本多勝一先生も本多流家元にでもお成りか、最近の思い上がった文章は、まともな神経とは思えません(後略)。


もちろんこのようなことで大江たたきが収まるはずもありませんでしたが、私が何より失望したことは、これから程なく井上ひさし氏が「多忙」を理由に編集委員をしりぞいたということでした。

彼は創刊の呼びかけ人であり、編集委員でありながら、ついに誌上で自分の考えを発表しないまま雑誌をさりました。

編集委員としての不誠実さとともに、編集委員会が本当に機能しているものかどうかさえ疑わしくなりました。

金曜日問題第3章 同性愛差別、エイズ問題大誤報事件の真相へ


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