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安倍内閣総理大臣記者会見


平成18年9月26日

記者会見を行う安倍新総理の写真

【安倍総理冒頭発言】

 第90代内閣総理大臣を拝命いたしました、安倍晋三です。どうぞよろしくお願いいたします。

 私は、自由民主党・公明党連立政権の下、戦後生まれ初の総理大臣として、しっかりと正しい方向にリーダーシップを発揮してまいります。日本を活力とチャンスと優しさに満ちあふれた国にしてまいります。本日より、新しい国づくりに向けてしっかりとスタートしてまいります。

 私は、特定の団体、特定の既得権を持った人たち、あるいはまた特定の考え方を持つ人たちのための政治を行うつもりはありません。毎日、額に汗して働き、家族を愛し、地域をよくしたいと願っている。そして日本の未来を信じたいと考えている普通の人たち、すべての国民の皆様のための政治をしっかりと行ってまいります。そのために、本日、「美しい国創り内閣」を組織いたしました。

 まず初めに、はっきりと申し上げておきたいことは、5年間小泉総理が進めてまいりました構造改革を私もしっかりと引き継ぎ、この構造改革を行ってまいります。構造改革はしばらく休んだ方がいい、あるいは大きく修正をした方がいいという声もあります。私は、この構造改革をむしろ加速させ、そして補強していきたいと考えております。

 頑張った人、汗を流した人、一生懸命切磋琢磨し知恵を出した人が報われる社会をつくっていきたいと考えております。公正でフェアな競争の中で生れてくる活力が日本の経済と国の力を押し上げていきます。しかし、人間ですから失敗をすることもあります。一回失敗したことが人生を決めてはならないと思います。負け組、勝ち組として固定化されてはならない。何度でも人生のいろんな節目にチャンスのある社会をつくっていかなければいけません。

 単線的な人生から、多様な機会のある、そしてまた多様な価値を求めることができる複線的な人生が可能な社会に変えていきたいと思います。そのために、再チャレンジ推進施策をしっかりと実行してまいります。

 また、地域によってはなかなか未来を見つめることができない、頑張っているけれども大変だ、そういう方々や地域があることを私は知っております。地域の活力なくして国の活力なし、この考え方の下に魅力ある地方づくり、魅力ある地域づくりをしっかりと推進してまいります。頑張る地域をしっかりと支援していきたいと考えております。そのためにも、しっかりと地方分権を推進してまいります。また、道州制についても視野に入れながら議論を進めていく考えでございます。

 財政をしっかりと再建していく、これも私の内閣の大きな使命であります。成長なくして財政再建なしとの考え方の下に成長戦略を実施し、そしてまた更に無駄遣いを省き、歳出の改革、削減を進めてまいります。2011年に国と地方を併せてプライマリーバランスを黒字化する、この目標に向けてしっかりと前進してまいります。

 来年度の予算におきまして、新規国債発行額を今年度の発行額以下に下回るようにしてまいります。しっかりと無駄遣いを省いていく。また、その中で隗より始めよとの考え方の下、私の総理の給与を30%カットいたします。また、国務大臣の皆様の給与につきましても10%カットする。まず、私たちが範を示したいと考えています。

 昨年から日本の人口が減少し始めたわけでありますが、減少局面においてもしっかりと成長していく国を目指していきたいと思います。そのためには、やるべきことは3つあります。

 一つは人材の育成であります。もう一つはイノベーション、画期的な新しい技術の革新、新しい取組み、新しい考え方、このイノベーションに力を入れていく、またイノベーションに投資をしていくことで生産性を上げていくことができると思います。減少していく労働力を補って余りある生産性の向上を目指していきたいと思います。

 また、オープン、社会や経済や国を開いていくことであります。そのことによって海外から多くの投資が行われます。また、有為な人材がどんどん日本にやってくる、このことは活力を生み出します。また、国同士がお互いを開いていく、FTA、EPAを進めていくことによって、アジアの成長を日本の成長に取り入れていくことも十分に可能性があると思います。しっかりと人材の育成、そしてイノベーション、オープン、やるべきことをきっちりやって成長していく経済を目指していきたいと思います。今日よりも明日がよくなる、今日よりも明日がより豊かになっていく、そういう国を目指していきたいと考えています。

 また、私の内閣でしっかりと進めていく重要な政策の一つが教育の再生であります。すべての子どもたちに高い水準の学力と、そして規範を身に付ける機会を保障していかなければなりません。そのためには、だれもが通うことができる公立学校をしっかりと再生していきたいと思います。

 まずは、この臨時国会において教育基本法の改正を成立させ、そして叡知を集め、内閣に教育再生会議を発足させたい。そしてしっかりと教育再生改革に取り組んでまいりたいと思います。

 また、このたびの総裁選挙を通じまして、多くの国民の皆様から社会保障制度をよろしくお願いします、もっとわかりやすい制度にしてもらいたい、大丈夫なんでしょうか、こういう声をいただきました。私は国民の安心である社会保障制度をしっかりと守っていきたいと考えています。そのためにも、一体的な改革が必要でしょう。年金、介護、医療、あるいはいざというときのための生活保護といった社会福祉、一体的な改革を行ってまいります。また、やはり社会保障制度においては、公平な制度であることが大切であります。官民格差があると言われている共済年金と厚生年金の一元化を進めてまいります。

 やはり信頼を得るためには、社会保険庁の解体的な手直しが必要であると考えております。また、わかりやすい制度にしていくためにも、例えば年金で今まで幾ら払ったのか、どれぐらいの期間払っていたのか、そして将来は一体幾らもらえるのか、こうした点をわかりやすく国民の皆様に説明をしていく必要があります。

 こうしたことについて、国民の皆様に親切に通知をしていく仕組みを1日も早く構築をし実行してまいりたいと考えております。

 外交について申し上げます。日米の同盟関係はまさに日本の外交、安全保障の基盤であります。この日米同盟をしっかりとお互いの信頼関係を高めていくことによって強化していきたいと思います。そのためにも、お互いが信頼感を増す、双務性を高めていく必要もあると思いますし、またお互いにいつでも話ができる体制も構築していきたいと考えております。

 日本はアジアの国であります。しっかりとアジア外交を重視してまいります。近隣国である中国、韓国、またロシアなどの国々との関係を更に緊密化していくための努力を行っていきたいと思います。

 中国、韓国につきましては、韓国はまさに日本と同じ価値観を持っております。自由、民主主義、基本的な人権、日韓がしっかりと信頼のきずなで結ばれて、互いに将来発展していくことができるように努力をしてまいりたいと思います。また、平和に発展をしていく中国は、日本にとっても大切な、そして重要な国であります。中国の発展は日本にとって大いにプラスであると考えております。日中関係をより発展していくために、私も努力をしていきたいと考えております。

 アジアにおいて、日本と同じ価値観を持つ国々、自由、民主主義、基本的な人権、そして法律の支配、こうした価値観を共有する国々、インドやオーストラリアもそうでありますが、そういう国々との関係を更に強化してまいりたいと思います。

 日本がしっかりと主張していく外交を展開していきたいと思います。それはやみくもに日本の国益を主張することではなくて、地域や世界のために日本は何をすべきか、世界は何を目指すべきかということを主張する外交を展開してまいりたいと考えております。

 日本が国連の場において、しっかりと国連改革に力を発揮し、そしてまた安保理の理事国として、更に国連をすばらしい国連にしていくために、その責任を果たしたい。そのために国連の安保理常任理事国入りを目指していきたいと思います。

 私は、日本が持っているすばらしさ、また日本の目指していく方向を世界に発信していくべきではないかと考えております。そのためにも、日本の外に発信する力、広報していく力を強化していきたいと思います。

 日本が世界の国々から信頼され、そして尊敬され、子どもたちが日本に生まれたことを誇りに思える「美しい国、日本」を創ってまいりたいと思います。

 どうぞよろしくお願いいたします。

【質疑応答】

【質問】
 美しい国創り内閣ということで、政権構想も美しい国、日本をつくるということですが、国民の間にも具体的なイメージがわきにくいという指摘があります。今日総理になって、日本をどういう国にしたいのか、そのために何をして国民の生活がどうなるのかということを具体的にわかりやすく説明していただきたいと思います。

【安倍総理】
 まず、美しい国について申し上げますと、これは立候補したときの記者会見でも申し上げたことでありますが、まず、その姿の一つは、美しい自然や日本の文化や歴史や、そして伝統を大切にする国であると思います。しっかりと環境を守っていく。そして、またそうした要素の中から培われた家族の価値観というものを再認識していく必要があると思います。

 また、自由な社会を基盤として、しっかりと自立した、凛とした国を目指していかなければならないと考えています。そのためにも教育の改革が必要でしょう。そして規範を守る経済でなければならないと思います。

 そして、今後力強く成長していく、エネルギーを持ち続ける国でなければならないと思います。冒頭申し上げましたように、今日よりも明日がよくなっていく。みんなが未来に希望を持てる国にしていきたい。しっかりと成長していく経済、強い経済をつくってまいりたい。そのために、イノベーション、オープン、人材の育成が大切であると思います。そして、世界の国々から尊敬され、愛される、リーダーシップを持つ国でなければならないと思います。世界に対して日本の、言わば国柄、カントリー・アイデンティティーをしっかりと発信をしていく国を目指していきたい。そして、多く国々が、また多くの人たちが日本を目指す。そういう方々に日本に来ていただける環境をつくっていくことも重視をしていきたいと思います。

【質問】
 人事についてお尋ねいたします。今回の一連の人事に当たって、どのような点に留意されたかお尋ねします。

 それと、美しい国創り内閣とおっしゃいましたが、自民党内においては、今回の人事について論功行賞という声も上がっております。総理は、総裁選出馬時点の会見において、党内の意見をよく聞き、最後は自分で決めるとおっしゃいましたが、実際に党内の意見を聞くという局面はあったでしょうか。また、あった場合はどのような形で反映されたのでしょうか。

 以上、お尋ねします。

【安倍総理】
 まず第1点でありますが、やはり適材適所、その分野に精通した方、あるいは、例えばその分野をずっと客観的に見てきて優れた見識を持っている方を配置したと思います。自民党には雲霞のごとく有為な人材がいます。ですから、勿論それぞれのポストに就いて、自分だったら十分に務まるという方は恐らくおられるだろうと思います。そこがなかなか人事の難しいところでありますが、今の時点において私が考えた適材適所ということで配置をさせていただきました。

 そして、これは論功行賞人事では決してないと思います。政治は結果が大切です。しっかりと結果を出せる、そういう方々を私は選んだと思っております。

 党内からはいろんな声があります。だれを使ってくれということは、今の時代はもうないわけでございます。私は広く同僚また先輩の議員の皆様を見渡しながら、いろいろな方々からこういう仕事ができる人がいいというお話を伺いながら、その中で最後は自分一人で決定をいたしました。

【質問】
 アジア外交についてお尋ねします。中国、韓国との関係ですが、年内にも首脳外交を再開するようなお考えはお持ちでしょうか。その場合、中国、韓国は靖国神社参拝問題、あるいは歴史認識問題等を、なお問題視しているようですけれども、どのように説得され、何を材料に外交を動かしていかれるお考えでしょうか。

【安倍総理】
 小泉内閣時代に、私も官房長官を務めておりました。日本は常にドアを開いております。首脳会談、これは、日本側は決して拒否をしているわけではありません。やはり国同士、お互いに国が違えば利害が対立することもありますし、認識が違うこともありますが、やはりそういうときこそ首脳同士が会って、胸襟を開いて話をしていくことが大切ではないかと思います。そのために、私も努力をしていきたいと考えています。是非とも両国にも一歩前に出てきていただきたいと思います。

【質問】
 人権擁護法案と皇室典範の改正についてですが、これまで総理は、この2つの法案に対して慎重な姿勢を示しておられましたが、今後、政府としてどのように2つの法案を取り扱うお考えなのかお聞かせください。

【安倍総理】
 まず、人権擁護法案でありますが、この法案については、党でもいろいろな御意見がございました。法務省において、しっかりと前回の法案の際にあった議論を吟味しながら慎重に議論を進めてまいりたいと思います。

 また、皇室典範の改正についてでありますが、安定的な皇位の継承は極めて重要な問題であると考えています。また、重要な問題であればあるからこそ、国民の中で納得されるものでなければならない。慎重にしっかりと議論を重ねていく必要があると考えています。

【質問】
 先ほど日米同盟の双務性向上を高めるとおっしゃっておりましたけれども、総裁選で集団的自衛権に関して研究が必要であるとおっしゃっておりました。そこで、首相としてのスケジュール感をお伺いしたいんですけれども、憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使、それから御自身がおっしゃっている5年をめどとした自主憲法の制定と、その辺に向けてどのように推し進めるお考えなのかということと、そもそも集団的自衛権の行使を研究することが、どうして双務性を向上することにつながるんでしょうか。

【安倍総理】
 まず双務性というのは、考えればすぐわかることだと思いますが、双務性というのはお互いがお互いを助け合っていく、お互いがお互いを必要なときに多用していくことが双務性を高めていくことにつながっていくと思います。それこそが、まさに同盟においては極めて重要ではないかと思います。

 その観点から、幾つかのケースについて具体的な事例を申し上げました。その中で研究していくべきことは研究していかなければならないのではないかと思います。研究すること自体がいけない、あるいは考えを呈させてはいけないということにはならないと思います。私は、総理大臣として日本の国民の命を守っていかなければならない、そして平和をしっかりと守っていかなければいけないという大きな使命があります。その中で研究すべきは研究し、解釈についてより日本が、地域が平和で安定していくために成すべきことは成していかなければならない。今までも既に政府内において研究をしてきたわけでありますが、更にしっかりと進め、それについて結論を出していきたいと考えております。

 憲法については、もう既に何回か総裁選挙で述べてきたとおりでありまして、しっかりと政治スケジュールに乗せていくべく、総裁としてリーダーシップを発揮したいと思います。ただ、今後は基本的には党が中心になって、他の党と協議を進めていくことになると思います。