俗説?「痴漢冤罪回避方法」の概要
かつて、痴漢冤罪回避方法といわれた俗説がネット上に出回っていました。どこに本家サイトが存在するかは全く分かりませんが、原文らしき内容を見つけることができたので、それをそのままお借りすることにします。 出所:痴漢冤罪逮捕の回避方法
もし、貴方が痴漢恐喝女に嫌疑をかけられ、駅員に引き渡されそうになったら・・・
★駅員「痴漢ですか?事務室で事情を聞きましょうか?」 ○貴方(身分証を提示、名刺を渡す) 「私は痴漢ではありませんし、住所・氏名を明らかにしました。 刑事訴訟法217条により、私を現行犯逮 捕することは違法です。」
※刑訴法第217条[軽微事件と現行犯逮捕] 三十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、二万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪の現行犯については、犯人の住居若しくは氏名が明らかでない場合又は犯人が逃亡するおそれがある場合に限り、第二百十三条から前条までの規定を適用する。 (身元を明らかにしている人間は現行犯逮捕できない
★駅員「いいから、話を聞くだけですから来て下さい!」 ○貴方「それは任意ですよね?でしたらお断りします。失礼!」 ★駅員「ちょ、ちょっと!(引き止める)」 ○貴方「どうしても連れて行くというのであれば、現行犯逮捕をしているという事になりますが、刑事訴訟法 217 条を無視して現行犯逮捕するんですか?アナタとこの女性(痴漢恐喝女)が刑法 220 条の逮捕監禁罪に問われますよ?」
※刑法 220 条[逮捕監禁罪] 不法に人を逮捕又は監禁したる者は3ヶ月以上5年以下の懲役に処す。 (開放を拒んだり、力づくで事務室に連れて行く事はできない。)
・・・・・それでも、むりやり駅員室に連れて行かれた。 (しかし、この時点で上記2法2条に違反しておりアウト!民事での勝利は確定しました。) すると、鉄道警察が飛んできて尋問される。さて、最初が肝心です! 「黙秘します。」 「当番弁護士を呼んでください」 これをいきなり言ってはいけません。 警官が「あなたには黙秘権が有る」「必要ならば弁護士を呼んでもいい」 と最初に言わなかったら…またもアウト!なんです
★警官(いきなり)「おたく、名前は?痴漢やったの?」 ○貴方「黙秘権、弁護士について触れずにいきなり尋問を始めましたね?刑事訴訟法198条違反です。この駅員室に居る方すべてが証人 です。」
※刑事訴訟法198条[被疑者の出頭要求・取調べ] 検察官、検察事務官又は司法警察職員は(取り調べに際して)被疑者に対し、あらかじめ、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を 告げなければならない。 (取り調べに際して、まず黙秘権があることを伝える義務がある)
後は「当番弁護士をよんでください。以後は黙秘します。」 ・・・と言って何を言われてもガンとして黙っておこう。 注意しなくてはいけないのは「絶対口を開いてはいけない」ということ。 「ちがいます」「間違いです」などもダメ。相手はそこに付けこんで口を割りにかかってくる 。
やがて弁護士が来たら、ここまでの違法逮捕の経緯を説明する。 間違い無く即時開放されるので、その後は訴訟を起こし、不名誉と不利益を挽回しよう
※即時開放される → 刑事訴訟法198条[被疑者の出頭要求・取調べ] 被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる。 (身元を示した時点で、現行犯逮捕の要件を満たさず、既に違法逮捕の状態である事が弁護士から恐喝女・駅員・警官に伝えられる。青くなった彼らを置いてバイバイ。)
最後に・・・ 恐喝女はもちろん訴訟の対象なので弁護士を通じて住所・氏名を確かめておこう。 鉄道は会社なので、マズいと思ったら(つーかアウトだが)示談に持ちこんでくる。さて、いくら取れるだろう? 198条に抵触したドキュソ警察は法廷でコテンパンにやってしまい、厳重注意&減俸にしてしまおう |
上記の冤罪回避の要旨は、逮捕監禁、取調べに関する違法性を指摘することで釈放されるというものです。
冤罪防止の実効性はあるか
もし、貴方が痴漢恐喝女に嫌疑をかけられ、駅員に引き渡されそうになったら・・・
★駅員「痴漢ですか?事務室で事情を聞きましょうか?」 ○貴方(身分証を提示、名刺を渡す) 「私は痴漢ではありませんし、住所・氏名を明らかにしました。 刑事訴訟法217条により、私を現行犯逮 捕することは違法です。」
※刑訴法第217条[軽微事件と現行犯逮捕] 三十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、二万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪の現行犯については、犯人の住居若しくは氏名が明らかでない場合又は犯人が逃亡するおそれがある場合に限り、第二百十三条から前条までの規定を適用する。 (身元を明らかにしている人間は現行犯逮捕できない |
この著者は初めに刑事訴訟法217条の軽微事件に関する逮捕の規定で説明していますが、これを読む限りでは本来、痴漢行為で逮捕されることはまずないはずです。
しかし、現実には逮捕・収監という事態が当たり前のように起こっているのですから、どこかに矛盾があるのでしょう。そもそも痴漢行為は刑法においてどのような罪に該当するのでしょうか。
「電車の痴漢犯罪対策室」というサイトによると、痴漢行為は強制猥褻(きょうせいわいせつ)罪または迷惑防止条例違反に該当すると説明されています。
仮に迷惑防止条例違反として考えた場合、東京都においては「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」が定められていますから、明らかに軽微事件を超えています。
つまり、刑事訴訟法217条違反を主張することは、ちょっと無理ではなかろうかといったところでしょう。
★駅員「いいから、話を聞くだけですから来て下さい!」 ○貴方「それは任意ですよね?でしたらお断りします。失礼!」 ★駅員「ちょ、ちょっと!(引き止める)」 ○貴方「どうしても連れて行くというのであれば、現行犯逮捕をしているという事になりますが、刑事訴訟法 217 条を無視して現行犯逮捕するんですか?アナタとこの女性(痴漢恐喝女)が刑法 220 条の逮捕監禁罪に問われますよ?」
※刑法 220 条[逮捕監禁罪] 不法に人を逮捕又は監禁したる者は3ヶ月以上5年以下の懲役に処す。 (開放を拒んだり、力づくで事務室に連れて行く事はできない。) |
一般人または駅員など、警察官ではない者(私人)が逮捕する行為そのものが即違法となるかというと、実はそうではありません。痴漢行為をしたことが事実だと考えるに足りる客観的な証拠(証言や状況証拠)さえあれば、単なる思い込みであっても逮捕の合理的理由になってしまいます。痴漢となれば駅員も職務上は取り逃がすわけにいかなくなりますから、刑法220条を適用できると考えるあたりも怪しいものです。
・・・・・それでも、むりやり駅員室に連れて行かれた。 (しかし、この時点で上記2法2条に違反しておりアウト!民事での勝利は確定しました。) すると、鉄道警察が飛んできて尋問される。さて、最初が肝心です! 「黙秘します。」 「当番弁護士を呼んでください」 これをいきなり言ってはいけません。 警官が「あなたには黙秘権が有る」「必要ならば弁護士を呼んでもいい」 と最初に言わなかったら…またもアウト!なんです
★警官(いきなり)「おたく、名前は?痴漢やったの?」 ○貴方「黙秘権、弁護士について触れずにいきなり尋問を始めましたね?刑事訴訟法198条違反です。この駅員室に居る方すべてが証人 です。」
※刑事訴訟法198条[被疑者の出頭要求・取調べ] 検察官、検察事務官又は司法警察職員は(取り調べに際して)被疑者に対し、あらかじめ、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を 告げなければならない。 (取り調べに際して、まず黙秘権があることを伝える義務がある) |
結論から言えば、黙秘権のことを知っている人に、わざわざ黙秘権のことを伝えなかっただけの形式的な違反の指摘に過ぎません。このことが直接痴漢行為を否定するだけの意味は持っていませんから、やや蛇足的な主張と考えてよいでしょう。
後は「当番弁護士をよんでください。以後は黙秘します。」 ・・・と言って何を言われてもガンとして黙っておこう。 注意しなくてはいけないのは「絶対口を開いてはいけない」ということ。 「ちがいます」「間違いです」などもダメ。相手はそこに付けこんで口を割りにかかってくる 。
やがて弁護士が来たら、ここまでの違法逮捕の経緯を説明する。 間違い無く即時開放されるので、その後は訴訟を起こし、不名誉と不利益を挽回しよう
※即時開放される → 刑事訴訟法198条[被疑者の出頭要求・取調べ] 被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる。 (身元を示した時点で、現行犯逮捕の要件を満たさず、既に違法逮捕の状態である事が弁護士から恐喝女・駅員・警官に伝えられる。青くなった彼らを置いてバイバイ。) |
逮捕されるまでの過程では不合理といえる部分がないので、たったこれだけでは弁護士といえども拘束を解くだけの力はありません。
結論としては、殆ど冤罪回避の実効性を持たないといっていいでしょう。というよりは、これで逮捕を免れることができるのなら、まさに痴漢天国のフリーパスを手に入れるようなものです。
本旨で争うことの意義
仮に貴方が痴漢現場に居合わせ、女性の訴えを聞いて痴漢と思しき人物を正義感に任せて取り押さえたとします。そのとき、取り押さえられた男性が痴漢行為を完全に否定していたとしたら、その場の状況で貴方が取る行動はいったいどれに当てはまるでしょう?
(A)有無を言わさず、そのまま駅員(または警察)へ引き渡す。
(B)事実無根である可能性もあるが、それは当事者で話し合うように促した上で、念のため男を駅員(または警察)へ引渡す。
(C)男性の主張を聞き入れ、すぐに解放してあげる。
恐らく、(C)を選択する人は少数派となるでしょう。つまり、立場を入れ替えれば、ひとたび痴漢の嫌疑をかけられたら状況は著しく不利なのです。
明らかに身に覚えのないことであれば無実を主張すればよいだけのこと、と考えてしまうかもしれませんが、実際はそれで事が済む程生易しいものではありません。
第一の証拠は被害者の証言; 何もないところへ痴漢被害が生まれることはなく、被害を訴える女性がいれば、その痴漢行為を行った加害者がいることになります。女性がある男性を加害者として特定すると、それ自体が最初の証拠(証言だけでも証拠能力はあると考えられている)になってしまいます。 そして、既に被害女性と加害男性という二者要件が成立していれば、とりあえず取り調べへと進まなければ事実関係も明らかにならないわけですから、どの道容疑が確定するまでは拘束されることになります。
不幸にも心証を悪くする条件; 女性が被害を訴えているという状況を客観的に見れば、特定された男性が痴漢行為を否定する態度がとても許しがたいもののように映るかもしれません。取調べを行う側も、女性が被害を訴えたという「第一の証拠」を盾に自白を求めてくるわけですから、本当にやっていない行為であっても「やっていない」と否認することは、いわば「反省の色なし」として取調官の心証を悪くするだけということになります。
悪質と見なされ起訴; 無実でありながら「やりました」と嘘の供述をさせることは常識的に考えれば誰でも抵抗します。身に覚えのないことで実刑となっては洒落にもなりませんから、被疑者としても徹底的に無実を主張し続けます。これがいわゆる「否認事件」となって、自動的に起訴されることになります。
こうして考えると、話の分かる人はどこにもいないように感じられます。十分な証拠がなくても、女性の証言だけで有罪が確定してしまう危険性が非常に高いのですから、毅然とした態度で無実を主張することにどれほどの意義があるか考えされられます。 少なくとも、取り調べの段階でほぼ有罪が確定したも同然に取扱われますから、嫌疑をかけられたら一生を棒に振るつもりで応戦しなければならないことを意味しています。これが痴漢冤罪の恐ろしいところです。
痴漢冤罪回避法はあるか
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