目的

序盤の流れ

クルーとの交流

艦内での生活

戦闘

ギャラリー



世界設定

メカ設定

艦内図

キャラクター紹介



メカデザイン設定図

αシステム ホームページ

PV

芝村戦記


Home



第15回「最低接触戦争(3)」
常時交通事故とも言える高加速に悩みながら、BALLS暴走の原因を追いかけて太陽系最外縁まで到着したジョージ・タフト少佐は、ついた先の宇宙空間で、予想外の光景を見ることになる。

宇宙戦争である。

目の前でミサイルが飛びかい(1年ほど前に仕掛けられたものだろうが)レーザーが炸裂する(いや、レーザーは肉眼では見えないのだが)光景と、BALLSが巨大な兵器工廠をいくつも建造して一分に一隻の割合で300m級の宇宙戦艦を建造している光景を見て、タフト以下はひっくりかえると言うよりも、宇宙空間でぐるぐる回転した。

ちなみにタフトの所属するアメリカ航空宇宙軍でも、そんなクラスの兵器は建造したことはなかった。
数隻あれば世界征服できそうだなとつぶやいたタフトは、まだこの頃、宇宙の広さを、感じてはいない。

本国に連絡を取る一方、数日遅れで到着した他国の知類と、連絡を取り合うタフト。
太陽系外縁に存在する知類は僅か30数個体。タフトは仮想敵だとかなんだとかを棚にあげて、この未曾有の事態をまずはどうにか理解しようとした。
戦争なのはわかる。だが相手は誰だ。誰なのか。

こうして初めて、前年くらいから戦争がおきていたと思われると、まことしまらない記述で歴史書に書かれることになる事件が勃発した。異星人とのファーストコンタクトが、そのままはじめての宇宙戦争となったため、最低接触戦争とも言われる。

この、太陽系始まって以来、はじめてとなる宇宙戦争は、これまでのいかなる戦いとも異なって、人間がはじめたものではなかった。
それは、BALLSがはじめたものであった。BALLSは太陽系知類には良くしたがったが、宇宙人相手ではまったくそうでなかったのである。

これをBALLSのせいにするのは酷であろうとは、歴史家の評である。BALLSが作られた21世紀には、宇宙人とのファーストコンタクトは、想定に入っていなかった。
BALLSは敵からの攻撃を環境の変化と位置づけて自動対応して自衛しただけだという意見である。
この意見は、太陽系では2255年現在も、2224年当時も広く受け入れられた。
この意見がBALLSに生活を依存する知々の間では一番怖くない解説だったのだと、歴史家、ミズキ・ミズヤは辛辣に書いている。

戦争は、続いている。誰の目から見てもBALLSの劣勢ははっきりしていたが、タフト以下の知類は、これを座視もしていなかった。
殴られれば殴り返せ、できれば徹底的に、が、太陽系の歴史そのものともいえる、知類共通の本能的感情である。
幼い頃から隣を転がっていたBALLSが破壊されていく様を、誰もよしとはしなかった。

タフトは取り急ぎ本国に帰って議会で報告せよという命令にめちゃくちゃ文句を言い、腸を煮えくり返らせて戦争に飛び入り参加することになる。
行く前の発言と実際の言動がまるで違うが、それが人知類というものかも知れない。

自分の家の庭で暴れている暴漢を見たときのようなものだとは、20年後のタフトの述懐である。

タフトが宇宙服を着て文字通り飛び入りをかけて宇宙戦艦に乗ったその日からが、人知類にとっての最低接触戦争開始である。
無人で運行される宇宙戦艦でも、いつか、知類が来る時のために艦橋に艦長席に、以下居住区が用意してあった。タフトはこの時ほど、BALLSからの愛を感じたことはないと日記に書いた。それはずっと待っていたのだ。主人の到着を。

タフトに続いて、各国の士官、民間人が宇宙戦艦に乗り込み始めた。
そして当然のように共同で戦争指揮をはじめた。戦いが得意でないBALLSに武器の建造法を伝え、何千年も戦い続けた戦術と戦略を、駆使しはじめた。

こうして、太陽系連合どころか地球統一政権が出来るずっと前に、太陽系総軍が生まれることになる。その数は40名に満たないが、士気は高かった。

知類とBALLSの連合は瞬く間に続々と敵の戦術を研究し、技術を研鑽し、改良型と新設計型の兵器を、続々と開発しては進歩を開始しはじめる。

同時に、タフト以下の檄文が地球に届いたことで、もう一つの動きがあった。
血気盛んな人知類以下の誰も彼もが、血を沸騰させて太陽系最外縁を目指し始めたのである。
太陽系総軍の名で最初に地球に届いた言葉、
「太陽系知類の諸君、その一員として私は言う。兄弟を助けろ」
ほど、この時代を動かしたスローガンもない。この後15年先までに3億をはるかに越える知類が戦争のために移動したのである。

その時代の空気を伝えるものとしてもう一つあげる。
タフトはたまたま最初の一人だったから有名であったにすぎないと、後の歴史家達が口をそろえて言う言葉がある。これはまったく正しい。
タフトでなくても、結局は誰かが、殴られたら殴り返していただろうし、そしていずれはだれかが栄光に彩られた太陽系総軍を、打ち立てたろう。
知類は皆兄弟と、物好きが言い始めて1世紀半。時代は、兄弟に満ち溢れていたのである。

[ BACK ]