ニコニコ動画(RC)

ニコニコ宣言(仮)~すべてのニコニコしたいネットユーザにむけて~

 ニコニコ動画という現象はとにもかくにもネット界に大小いくつもの問題提起をしたことは疑いなく、さまざまな角度からの意見や分析がいろいろなブログでいろいろなひとによって語られています。非同期チャットのもつ、コミュニケーションの新しい可能性を示したことは、もちろん、コメントを右から左へ流して元のコンテンツに重ねるというコンセプトはニコニコ的とすら表現されて、いくつものニコニコ的サービスが登場しました。youtubeよりアクセスを遮断されたことはweb2.0的なマッシュアップサービスのもつ本質的な脆弱性をも明らかにしました。また、ニコニコ動画にネットとテレビの融合の未来の姿を感じたり、動画へのアノテーションの新しい手法として捉えられたかたもいらっしゃれば、もっと単純な反応として、ニコニコ動画というサイトの細かな部分に暖かみや人間くささを感じた意見も多く見られました。それらのどれもが真実を含んでいるに違いありません。
 どこか節目となるタイミングで、われわれニコニコ動画をつくった側からもニコニコ動画とはなにが本質であると考えているのか、どういう世界観に基づいたものなのか、ネットがニコニコ動画あるいはニコニコ動画的なものによってどのように変わっていくと予測しているかを発表したいと、ニコニコ動画普及委員会のメンバーは、オンライン上、オフライン上で議論を重ねてきました。

 いささか、仰々しくはありますが、ここにその議論の現時点の結論をニコニコ宣言(仮)としてまとめます。

第一宣言 ニコニコは無機的な集合知ではなく人間のような感情を備えた集合知を目指します

 web2.0の本質は地球規模のwebを媒体とした集合知をつくりあげることであるといわれてますが、われわれはその集合知に人格や感情を備えさせることを目指したいと思います。いまのネットが目指している多くの集合知とは、個々の人間の労力や行動を部品として機械的に収集して構成されます。それはいわば現実世界の歴史における大運河やピラミッドのような仮想世界においての人間の叡智と労力がうんだ歴史的偉業にたとえられるかもしれません。ですが、現実世界に生きる人間と同じように、仮想世界に生きる人間も別に歴史的偉業をおこなうためだけに生きているわけではなく、ただ、楽しいことがあれば笑い、悲しいことがあれば泣くような日常を生きています。
 われわれはそのような仮想社会に生きる等身大の人間そのものの姿を投影した集合知をつくることを目標とします。感情と人格を持ち、そして生命そのもののように変化し、流れていき、寿命をまっとうし、また、新しいものが生まれる。そういった集合知です。われわれの集合知は真実にむかって収束することを目指すものではなく、人間のパートナーとして共に苦しみや悩みも共有しつづけて永遠に完成することのない集合知です。そんな人間的な暖かさをもつ集合知が人間と共存するような未来のネット社会を目指します。

第二宣言 ニコニコはすべてのものにコメントをつけられるサービスを目指します

 われわれは人間から知識だけを分離して抽出、精製する集合知はめざしません。われわれが収集するのは知識ではなく人間の感情そのものです。人間がなにか対して思った感情を表現することは、人間が社会のなかで生きるという行為そのものにほかなりません。われわれは人間の生きるという行為をネット上での新しいコミュニケーション手段を提供することで実現します。それはライフログとしてデータをとることが目的では決してありません。人間の営みの記憶としてデータが生成されるだけなのです。データを保存するのは分析・集計するためではなく、フォトアルバムのように思い出を残すためでしょう。
 上記を実現するために、まずネットで人間の感情を表現するもっとも基本的なコミュニケーション手段としては、なにかにたいしてコメントをつけるという行為を選択しました。今後、人間の感情表現の手段という文脈から、コメントをつけるという概念はもっと多様化され拡張されるかもしれませんが、われわれが追求しつづけるものは人間の生きるという行為をネット上でいかに実現するかということです。

第三宣言 ニコニコはネット上に人間本位の仮想世界を構築することを目指します

 ネットが最初に一般大衆のものとなったのはパソコン通信時代に遡るのでしょうか。そのとき、ネットは人間同士がつながる新しいコミュニケーションモデルを提示しました。人間が現実世界でなく仮想世界においても生きることができることが証明されたのです。やがてインターネットが普及しはじめ、ネットのもつ潜在的な可能性や価値が明らかになるつれ、ネットは人間のコミュニケーションの場というよりも、新しいビジネスモデルが提示される場所へ変わり、人々の感情のふれあいではなく、巨大なお金がとびかう世界になりました。それはネットという巨大な新世界の秩序が形成される過程では仕方がなかったことかもしれません。しかし、それも一段落し、Web 2.0時代の到来などと声高に叫ばれる今日、われわれはもういちどネットを人間同士のコミュニケーションの場として再構築することに挑戦します。われわれはWeb 2.0とは技術革新でも新しいビジネスチャンスでもなく、人間本位の仮想社会をとりもどすいわばwebルネサンスとでもいうべきものとして定義します。

第四宣言 ニコニコはネットサービスをユーザと双方向につくりあげる作品として提供します

 ニコニコが提供するネットサービスは人格と世界観をもちます。われわれが提供したいものは便利なインフラではありません。ユーザーと対等の立場で相互にコミュニケーションをすることにより完成されるひとつの作品です。われわれがつくりたいものは万人が受け入れるサービスではありません。われわれがつくるネットサービスは個性をもち、新しい価値観をユーザーになげかけます。人間の顔をした作品としてのネットサービスがわれわれがめざすものです。ネットという仮想世界において、すでに電気や上下水道や道路などのインフラは整いました。これからは仮想世界での文化であったりエンターテイメントが必要とされるのでしょう。ニコニコが提供したいのは人間が生存するためだけであれば、きっと必要のないものかもしれませんが、仮想世界においてユーザーが人間らしく生きるために大切にしたいと思うようなサービスです。

2007年6月1日
ニコニコ普及委員会

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