SF年間マイベスト

SF年間マイベスト


 毎年、《SFマガジン》誌上(2000年からは『このSFが読みたい』上)で行われる年間ベスト投票。93年以前は手書きで入稿していたので、94年分からということで。
 単に堺三保の好みがわかるだけで、その年の時評とはなっていないところがなんともはや……。


2002年
●海外作品
  1. 『グリーン・マーズ』キム・スタンリー・ロビンスン
  2. 『最果ての銀河船団』ヴァーナー・ヴィンジ
  3. 『90年代SF傑作選』山岸真・編
  4. 『イリーガル・エイリアン』ロバート・J・ソウヤー
  5. 『ダイヤモンド・エイジ』ニール・スティーヴンスン
【コメント】
 国内と同じく海外作品も今年は傑作がずらりとそろった。選外では、『航路』コニー・ウィリスと『クリプトノミコン』ニール・スティーヴンスン(どちらもSF的要素が少ない)、『戦乱の大地』デイヴィッド・ブリン(三部作の真ん中)、それに快調な宇宙活劇である『ミラー・ダンス』ロイス・マクマスター・ビジョルド、『航宙軍提督ハリントン』デイヴィッド・ウェーバー、『太陽の闘士』ショーン・ウィリアムズ&シェイン・ディックスなどがおもしろかった。
 また、ファンタジーでは、『ダークホルムの闇の君』ダイアナ・ウィン・ジョーンズ、なつかしの『塵よりよみがえり』レイ・ブラッドベリなどが楽しかった。だが、最大の喜びは(半月遅れで今年ではなく来年の選考対象となってしまったが)、『七王国の玉座』ジョージ・R・R・マーティンが刊行されたこと。数ある異世界ファンタジーの中でも群を抜く傑作の翻訳がついに始まったことを喜びたい。

●国内作品(順不同)

【コメント】  今年は傑作、佳作が多くて嬉しい悲鳴。五作の枠からはみだしてしまったが、『永久帰還装置』神林長平、『今池電波ゴミマリア』町井登志夫、『アラビアの夜の種属』古川日出男、『UMAハンター馬子1 湖の秘密』田中啓文、『海を見る人』小林泰三、『真世の王』妹尾ゆふ子、『ウロボロスの波動』林穣治、『あしたのロボット』瀬名秀明、『竜とわれらの時代』川端裕人が、いずれも印象に残っている。


2001年
●海外作品
  1. 『20世紀SF』全6巻 中村融&山岸真編
  2. 『タクラマカン』ブルース・スターリング
  3. 『祈りの海』グレッグ・イーガン
  4. 『ハッカー/13の事件』ダン&ドゾワ編
  5. 『変革の序章』デイヴィッド・ブリン
【コメント】
 珍しくほとんど短編集となってしまった。別格の『20世紀SF』はもちろん、どの短編集もおもしろく、偶然ではあるが通読すると現代SFの在りようが見えてくる感があるところがまた良し。『変革の序章』は今後の展開への期待票込み。
 また今年は、ハリー・ポッターはもちろん、『キング・ラット』チャイナ・ミーヴィル、『ネバーウェア』ニール・ゲイマン、『不眠症』スティーヴン・キングなど、現代を舞台にしたファンタジーに傑作が多かった。

●国内作品(順不同)

【コメント】
『20世紀SF』各巻末の中村融による解説もそうだが、『SFが読みたい! 2001年版』SFマガジン編集部編、『新・SFガイドブック』早川書房編集部編、『図説 ロボット』野田昌宏、『図説 ロケット』同上、『パルプマガジン 娯楽小説の殿堂』荒俣宏等々、今年はガイド系のノンフィクションがおもしろかった。ついつい20世紀を振り返ろうとする2001年効果のおかげかも。
 また、『新世紀未来科学』金子隆一、『宇宙世紀科学読本』永瀬唯、『ロボット21世紀』瀬名秀明は、SFアニメ関係者必読ということで。


2000年
●海外作品
  1. 『エンディミオンの覚醒』ダン・シモンズ
  2. 『太陽の王と月の妖獣』ヴォンダ・N・マッキンタイア
  3. 『フューチャーマチック』ウィリアム・ギブスン
  4. 『斜線都市』グレッグ・ベア
  5. 『フレームシフト』ロバート・J・ソウヤー
番外.『失われた宇宙の旅2001』アーサー・C・クラーク

【コメント】
 物語としてのおもしろさと、SFとしての設定のおもしろさのバランスが取れているものを上位に、バランスは崩れているがいかにも「SFらしい」ものを下位に持ってきた。ベアは、『ダーウィンの使者』のリーダビリティやアイデアのおもしろさを認めながらも、『斜線都市』の真摯に構築された未来社会の圧倒的なディティールを推す。

●国内作品(順不同)

番外.『虚無回廊?』小松左京

【コメント】
 今年はSFらしいSFが豊作の年で大変嬉しい。二十一世紀が二十世紀に続くSFの世紀であってほしいと願う筆者としては、大いなる光明が見えた想い。来年もこうだといいなあ。

【おまけ】
1990年代SFベスト10

【海外作品】

  1. 『レッド・マーズ』キム・スタンリー・ロビンスン
  2. 『知性化戦争』デイヴィッド・ブリン
  3. 《ハイペリオン》《エンディミオン》四部作 ダン・シモンズ
  4. 『ドゥームズデイ・ブック』コニー・ウィリス
  5. 『ホーリー・ファイアー』ブルース・スターリング
  6. 『スタープレックス』ロバート・J・ソウヤー
  7. 『火星転移』グレッグ・ベア
  8. 『宇宙消失』グレッグ・イーガン
  9. 『時間的無限大』スティーヴン・バクスター
  10. 『ジュラシック・パーク』マイクル・クライトン
【国内作品】(順不同)
1999年
●海外作品
  1. 『スタープレックス』ロバート・J・ソウヤー
  2. 『宇宙消失』グレッグ・イーガン
  3. 『ダスト』チャールズ・ペレグリーノ
  4. 『エンディミオン』ダン・シモンズ
  5. 『新艦長着任!』デイヴィッド・ウェーバー
【コメント】
 1位と2位はSFらしい奇想のおもしろさを大いに買う。3位は、余計なサービスに筆が滑ることもあるものの、基本として安易なラマルク説に流れない進化論SFとして、また壮大な破滅SFとしてのスケールを買う。4位は好調ながら完結編ではないのでこの順位。5位は現代的なミリタリーSFの新標準としてお奨めしたい。
 なお、ファンタジーでは『ゾッド・ワロップ あるはずのない物語』ウィリアム・B・スペンサー、ホラーでは『ドラキュラ戦記』キム・ニューマンが印象に残った。

●国内作品

  1. 『私と月につきあって』野尻抱介
  2. 『夢の樹が接げたなら』森岡浩之
  3. 『クリスタルサイレンス』藤崎慎吾
  4. 《ブギーポップ》シリーズ 上遠野浩平
  5. 『チグリスとユーフラテス』新井素子
【コメント】
 例年、SFらしいSFを選ぼうとすると、5作選ぶのが難しくなってしまう国内作品だが、今年は迷いに迷ったあげく、ようやく右記の5本に絞ることにした。ファンとしては嬉しい悲鳴であり、日本SF活性化の兆しを素直に喜びたい。
 また、ホラーでは『肉食屋敷』小林泰三、『水霊 ミズチ』田中啓文、『邪神帝国』朝松健、そして牧野修の『屍の王』、『偏執の芳香 アロマパラノイド』、『リアルヘヴンへようこそ』が、ファンタジーでは妹尾ゆふ子の『風の名前』および《魔法の庭》三部作が印象に残った。


1998年
●海外作品
  1. 『ホーリー・ファイアー』ブルース・スターリング
  2. 『レッド・マーズ』キム・スタンリー・ロビンスン
  3. 『スノウ・クラッシュ』ニール・スティーブンスン
  4. 『スロー・リバー』ニコラ・グリフィス
  5. 『極微機械ボーア・メイカー』リンダ・ナガタ
選外 【コメント】
 終わってみれば、今年も毎月のように傑作・佳作が読めて、SFファンとしては幸せな年だった。
 転じてホラー/ファンタジイに目を向ければ、なんといってもキングの『デスペレーション』と『レギュレイターズ』の同時刊行が嬉しい。その他、ナンシー・A・コリンズの女吸血鬼ソーニャ・ブルー・シリーズの最新刊『ブラック・ローズ』、ダン・シモンズの『エデンの炎』、ピーター・S・ビーグルの『ユニコーン・ソナタ』、ゾンビものばかりを集めたアンソロジー『死霊たちの宴』が印象的だった。
 また今年は、真に革新的なアメコミの傑作が相次いで翻訳された決定的な年でもあった。スーパーヒーローたちの繰り広げる悲喜劇をシリアスに綴った『ウォッチメン』、『バットマン ダークナイト・リターンズ』、『マーヴルズ』、『キングダム・カム』といった作品群は、超人テーマSFの一つの頂点だし、奇才ニール・ゲイマンが物語を担当した『サンドマン』は、ダーク・ファンタジイの傑作である。これら良質の作品群によって、アメコミ翻訳が日本に真に根付くことを期待したい。

●国内作品

  1. 『あ・じゃ・ぱ・ん』矢作俊彦
  2. 『天使の囀り』貴志祐介
  3. 『ベクフットの虜』野尻抱介
  4. 『彗星狩り』笹本祐一
  5. 『クロスファイア』宮部みゆき
【コメント】
 今年のイチオシといえば、小野不由美待望の新作『屍鬼』なのだが、これはまごうかたなきホラーなので、SFベストには推せないところがつらい。さらには井上雅彦監修の〈異形コレクション〉、そして東雅夫編集による〈ホラー・ウェイブ〉と、ホラーは元気に溢れていて、羨ましいかぎり。
 選外としては、川端裕人の『夏のロケット』が、SFではなく一般小説ではあるが、ロケットに対するあこがれと、若者から中年になろうとしている世代の夢の復権を描き、清々しい読後感が印象的だった。


1997年
●海外作品
  1. 『火星転移』グレッグ・ベア
  2. 『致死性ソフトウェア』グレアム・ワトキンス
  3. 『グローバルヘッド』ブルース・スターリング
  4. 『天使墜落』ニーヴン&パーネル&フリン
  5. 『大暴風』ジョン・バーンズ
【コメント】
 コメントがわりに、注目した作品をさらに5作、順不同で以下に記す。
●国内作品
  1. 『星は、昴』谷甲州
  2. 『天使は結果オーライ』野尻抱介
  3. 『光の帝国 常野物語』恩田陸
  4. 『斎藤家の核弾頭』篠田節子
  5. 『星界の戦旗I』森岡浩之
【コメント】
 未来や宇宙が舞台でなくてもSFにはなり得るが、未来や宇宙が出てこないとファンとしては寂しいこともある。とかくSFというものは難しい。だからおもしろいんだけどね。というようなことを考えてしまった今年のベストであった。


1996年
●海外作品
  1. 『さよならダイノサウルス』ロバート・J・ソウヤー
  2. 『星界への跳躍』K・J・アンダースン&D・ビースン
  3. 『無限アセンブラ』K・J・アンダースン&D・ビースン
  4. 『ハッカーと蟻』ルーディ・ラッカー
  5. 『神の鉄槌』アーサー・C・クラーク
【コメント】
 SFらしいアイデアとストーリーのバランスを考えて選んでみたつもりです。クラークは、私にとっては特別な作家なので、迷わず入れてしまいました。なお、ファンタジーおよびホラー関係では、以下の作品が特に印象に残りました。
  1. 『ローズ・マダー』スティーヴン・キング
  2. 『ジャッキー、巨人を退治する!』チャールズ・デ・リント
  3. 『天使の牙から』ジョナサン・キャロル
  4. 『M・D』トマス・M・ディッシュ
  5. 『肉体泥棒の罠』アン・ライス
(この年は国内作品は無投票)


1995年
●海外作品
  1. 『赤い惑星への航海』テリー・ビッスン
  2. 『ハイペリオン』二部作 ダン・シモンズ
  3. 『ドゥームズデイ・ブック』コニー・ウィリス
  4. 『時間的無限大』スティーヴン・バクスター
  5. 『デウス・マシーン』ピエール・ウーレット
【コメント】
 コメント代わりにSF以外の作品のベスト5を以下に記す。
他ジャンル(ファンタジー、ホラー等)ベスト
  1. 『黎明の王 白昼の女王』イアン・マクドナルド
  2. 『ドラキュラ紀元』キム・ニューマン
  3. 『サマー・オブ・ナイト』ダン・シモンズ
  4. 『太陽と月のアラベスク』リサ・ゴールドスタイン
  5. 『デッドガールズ』リチャード・コールダー
●国内作品 【コメント】
 国内作品は、フィクションとノンフィクションを均等に選んだので、順位をつけていない。均等に配点していただきたい。


1994年
●海外作品
  1. 『ブルー・シャンペン』ジョン・ヴァーリイ
  2. 『シェイヨルという名の星』コードウェイナー・スミス 
  3. 『フリーゾーン大混戦』チャールズ・プラット
  4. 『ヴァーチャル・ガール』エイミー・トムスン
  5. 『ワイルド・カード3:審判の日』J・R・R・マーティン編
(次点) 【コメント】
 去年までのベスト3形式だと、SF、ファンタジー、その他から各一作ずつという割り切りができたのだが、さすがに今回はそうもいかず、SF中心でまとめてみた。こうして振り返ってみると、なかなかに豊作の年であったように思う。ちなみにファンタジー、ホラーでは『ニードフル・シングス』S・キング、『ブルー・ワールド』R・R・マキャモン、『ゴースト・パラダイス』T・プラチェットを推す。

●国内作品

【コメント】
 日本SFはすでに私の好む狭義のサイエンス・フィクションの範疇を離れて久しい。特に今年は昨年以上にサイエンスの香りが薄れ、ファンタジイの大海の中へと漕ぎだして行ってしまった感が強く、私のようなジャンル小説マニアの若輩者にはつらいものがある。
 そんなわけで、国内作品は去年通り三作として、SF、ファンタジイ、ノンフィクションから、それぞれのベストを選んだ。ご容赦願いたい。なお、興隆著しい架空戦記においては、佐藤大輔氏の諸作が、戦術、戦略、作戦の各レベルでの考察をバランス良く行って作品のリアリティを支えており、大変おもしろかった。


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