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強まる資金繰り不安説 袋小路のNOVA商法

(2007/08/21)
経済産業省から業務停止命令を受けたNOVA。7月来、再三の支払い遅延を起こし、窮地に陥っている。(『週刊東洋経済』8月25日号より)

 英会話教室最大手のNOVAに資金繰り不安説がささやかれている。14日に発表した第三者割当増資の調達額はわずか1000万円。引受先となった東京電力の社内ベンチャーは「提携について以前から協議していたが、増資の話は8月に入ってから持ち出された」と打ち明ける。なりふり構わず異例の少額増資に走るほど、懐具合は窮しているのか。nova

 信用調査会社によると、実際にNOVAは取引先に対して再三の支払い遅延を起こしている。銀行への約定返済がストップしたほか、7月末には印刷関連の支払いが滞り、広告代理店に対しては8月10日の支払いについて猶予を要請した。従業員への給料も7月分は遅配となった。生命線である外国人講師への給料支払いは毎月15日。8月は乗り切れるか危ぶまれたが、7日に私募債7億5000万円を発行して一息ついた。

新規生徒が急減

 資金繰りが逼迫したのは独自の“自転車操業モデル”が瓦解したためだ。同社は全国1000カ所近くまで教室を急拡大してきたが、その資金源は主に生徒から前払いで徴収した受講料だった。生徒募集でかき集めた前払金を拠点開設に投じ、さらなる生徒募集を行い、さらに……。これこそがNOVA商法の核心だ。

 ところが、今年6月に経済産業省から一部業務停止命令を受け、その歯車は逆転した。新規生徒が減少、中途解約者への返金がかさみ始めたのだ。「繰延駅前留学サービス収入」との科目で負債計上された前払金は昨年3月末に316億円にも上ったが、1年間で60億円も縮小した。これは銀行から融資の引き揚げに遭っているのと等しい。

 オーナーの猿橋望社長は強烈な個性で有名だ。あるベンチャー経営者は「午後3時から翌朝5時までお茶もなしにぶっ通しで会議をした」と逸話を語る。一方で「お茶の間留学」向けテレビ会話システムを販売するファミリー企業との取引など、オーナー経営特有の不透明な体質も残る。

 今のNOVAにとって頼みの綱は猿橋社長その人だ。ファミリー企業のノヴァ企画からは昨年度に4億円の資金融通を受けた。猿橋社長は7月下旬、資金作りのため持ち株の一部を都内の中小証券に差し入れてもいる。どこまで粘り腰を見せられるか、だ。

(書き手:高橋篤史)
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