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社説(2007年5月13日朝刊)

[復帰35年調査]

語り継ぎたい「沖縄戦」

本土復帰の評価定着か

 沖縄が本土復帰してから三十五年になる。復帰して何が変わったのか。世代によって抱く感慨も違うはずだ。

 「核抜き、本土並み」の掛け声はかき消され、今も在日米軍の再編や、普天間飛行場の移設など米軍基地問題が沖縄の人々が直面する最大の課題である。その基本構図に変化はない。

 県民意識はどのように変わったのだろうか。沖縄タイムス社の復帰三十五年世論調査によると、復帰して「よかった」と答えた人が89・3%、「よくなかった」は3・8%だった。

 一九九二年四月の調査(復帰二十年)では88%、二〇〇二年四月の調査(同三十年)でも87%が「よかった」と答えている。九割近くが復帰を肯定的に評価するようになった。

 「沖縄らしさ」が残っているものは「伝統文化」「助け合いの心」など。逆に「沖縄らしさ」が失われたものでは「自然」「方言」などの順。

 将来にわたり沖縄が大切にしていくべきだと思う点は「平和・戦争を忘れない」が42・1%で最多。「助け合いの心」(21・6%)などが続く。

 本土の人と接した時、自分たちと違う面があると感じることがあるかとの質問では「感じる」が62%を占めた。一九九七年調査時は68%が「感じる」としており、6ポイント減少した。

 伝統文化に沖縄らしさを感じ、歴史が異なる点など本土との違いを実感している―。沖縄の歴史・文化の独自性に対する県民のこだわりは今なお健在だと言っていいだろう。

 一方、沖縄と本土との格差について「あると思う」が87・1%で五年前の前回調査より13ポイント増えた。「思わない」は10・9%で、11ポイント減っている。本土との格差を感じている人が五年間で増えた。その理由として所得、基地問題などを挙げている。

 米軍基地に対しては「段階的縮小」を求める人が70%、「ただちに全面撤去」は15・4%、「いままで通り」は12・5%だった。この質問では、復帰二十年以降の各調査結果を見ても、ほぼ同様のすう勢を示している。

 約85%の人々が、何らかの形で米軍基地の縮小が進展することを求めていることに大きな変化はない。

検定には超党派で反発

 文部科学省による高校の歴史教科書検定で、沖縄戦の「集団自決」についての日本軍関与の記述が削除・修正された。県内で反発が広がり、市議会などで撤回を求める動きも出ている。

 今回の調査で日本軍関与の記述・削除への賛否を聞いたところ、「反対」が81・4%、「賛成」が8%、「分からない」が10・6%だった。

 反対理由は「沖縄戦の歴史を歪曲するから」(52・4%)「『集団自決』の現実を伝えていないから」(37%)などの順に多い。

 約八割が検定結果に疑問を投げており、支持政党の党派の枠を超え、反発が広がっているのが大きな特徴だ。

 沖縄戦について、日々の暮らしの中で「よく話す・聞く」「時々話す・聞く」が合わせて58%だった。

 「沖縄戦の体験について次の世代に語り継ぎたいか」との質問では、「すすんで語り継ぎたい」(51・3%)、「尋ねられたら話す」(40・1%)と九割余が継承の必要性を感じている。

 教科書検定の動きに反応したのか、「すすんで語り継ぎたい」が十年前調査と比べて15ポイント余も増えた。

 沖縄戦をどう継承していくかが問われているが、歴史の事実を直視する重要性について、県民の間で共通認識ができつつあると言えよう。

内実を問い返す動きも

 二〇〇一年の9・11テロ後、米国はアフガニスタン、イラクで対テロ戦争を進めてきた。冷戦崩壊後も沖縄を取り巻く環境が様変わりし、沖縄の基地の在り方にも影響を及ぼしている。

 復帰三十年以降、県内では復帰への評価や復帰運動の内実などをあらためて問い直す動きも出ている。こうした問題意識は教科書検定や歴史認識の在り方などにも深くかかわっている。

 一九七二年に生まれた子供たちはもう三十五歳だ。復帰前の沖縄を記憶する人は四十代半ば以降になり、今後は復帰を直接体験していない新たな世代が増えていくことになる。

 復帰をめぐる調査についても、今後はその性格や位置付けなど、より総合的な分析や評価がますます重要な作業になっていくのは確かだ。

 沖縄の基地の現状が変わらない限り本土復帰の内実を多角的に問い直していく動きがやむことはないだろう。


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