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“年末は満員御礼”も今は昔…消える「トラ箱」

12月16日17時34分配信 産経新聞


 半世紀近くにわたって泥酔者を収容し続けてきた警視庁の「トラ箱」(正式名称・泥酔者保護所)が、年内いっぱいで歴史に幕を下ろす。最盛期には都内4カ所で年間約1万3000人の泥酔者を収容し、12月の忘年会シーズンには“満員御礼”になることもあったが、昨年お世話になったのはわずかに500人強。駅のホームや路上など場所を選ばずに酔いつぶれる“大トラ”の減少に伴い、都内で唯一残っていた鳥居坂保護所(東京都港区)が閉鎖され、トラ箱はその歴史的使命を終える。(森浩)

 ●一時は都内4カ所

 警視庁地域指導課によると、トラ箱は昭和35年に鳥居坂(港区)と日本堤(台東区)の2カ所で開設。その後、45年に三鷹(三鷹市)、52年に早稲田(新宿区)と順次設置された。47年にはトラ箱に収容された泥酔者は年間1万2798人にのぼり、最盛期を迎えた。

 泥酔者は警察署の保護室でも保護されるが、専用のトラ箱を設置しているのは全国でも警視庁だけとされる。

 「花見や忘年会のシーズンは満員となることもあった。大暴れしていても、酔いがさめれば頭を下げて感謝して帰っていくのが日常の風景だった」。警視庁地域部関係者はこう振り返る。

 泥酔者を「トラ」と呼ぶのは酒を「ササ」と呼ぶことにちなむという。日本画のモチーフで虎と笹の取り合わせが多いことから、「トラ」が酒酔いの異名になったとみられている。

 しかし、昭和から平成へと時代が変わる中、保護される泥酔者は徐々に減少。昨年1年間に都内の保護所や警察署で保護された泥酔者は9660人で、最も多かった昭和51年の3万5109人と比べて約7割も減った。

 「警察署にも保護室が1〜2部屋あり、トラ箱を使わなくても間に合うようになってきた」(警視庁幹部)。そのため、平成に入ってから、鳥居坂を除く3カ所の保護所が順次閉鎖されてきた。さらに、鳥居坂保護所の現在の収容者は1日平均1・4人に対し、警察官は6人が3交代で勤務するという効率が悪い状態となっていた。

 こうした状況を受け、今年6月には唯一残っていた鳥居坂保護署も閉鎖が決定した。

 ●酒類の消費は増加

 東京・麻布の一角に位置する鳥居坂保護所は15の保護室を備え、部屋ごとに水洗い可能なマットとクリーニングされた毛布が備え付けてある。所内には洗濯室もあり、担ぎ込まれた泥酔者の汚れた服を洗濯していた。「かつては警察官が古着を持ち寄って着せて帰すこともあった」と警視庁幹部は振り返る。

 警察庁によると、鳥居坂保護所の閉鎖により、泥酔者保護はすべて警察署に移行するという。

 泥酔者保護が減っている理由について、警視庁地域指導課では「飲酒以外の娯楽の多様化も背景にあるのではないか」と分析している。

 国税庁によると、平成17年の国内の酒類の消費量は、都内の泥酔者保護数がピークだった昭和51年と比べて約1・5倍に増加。酒類の消費が増えている。にもかかわらず、泥酔者が減っている理由はどこにあるのだろうか。

 「“飲みニケーション”の形が変わってきた」と解説するのは、現代人のコミュニケーションについて研究をしている第一生命経済研究所の宮木由貴子副主任だ。「若年層には『倒れるまで飲むのは格好悪い』という意識があるほか、上司である中高年は『最近の若者は飲みたがらないのではないか』と考え、あまり酒席に誘わない傾向もある。会社内に女性が増えたこともあり、飲み会の重要性が変わってきたのではないか」と分析している。

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最終更新:12月16日17時37分

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