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【科学】

<続 身近なエイリアン>鈴木欣司 キョン 房総半島大にぎわい

2007年12月25日

体サイズから千葉県産は台湾亜種(タイワンキョン)に近い

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 キョンの原産地は中国南東部と台湾。小型のシカ科の動物で、体重はオスで一〇キロ、メスは九キロほど。国内での野生化は飼育施設(観光や動物園)からの逃亡が主な原因で、千葉県房総半島南部と東京都伊豆大島に生息している。

 キョンは二〇〇五年に施行された外来種被害防止法において、特定外来生物に指定された。本土でのキョン移入は千葉県だけで、移入時期は四十数年前ごろからとされる。その後、外房観光の人気スポットだった行川アイランド(〇一年閉園)で放飼されていたものが逃げ出した。

 千葉県では、地域の固有の生態系に深刻な影響を及ぼしかねないとし、速やかに取り除くための対策方針が比較的早い時期に示された。外来種の防除には莫大(ばくだい)な費用と時間と、多くの人々の協力が得られないと成功しない。もしキョンの防除に成功すれば千葉県は面目躍如となる。

 〇七年の千葉県の調査報告書によれば、房総半島南部におけるキョンの生息域は五百七十平方キロと推定され、勝浦市、いすみ市など九市町に分布。〇二年の調査よりも、生息域の西端にある鋸南町と、東端にある御宿町・いすみ市で生息域が広まった。推定生息頭数は約千四百−五千四百(約三千四百±二千)頭とされ、前回の約千頭と比べ、生息頭数はこの五年間で約三・四倍に増加した。

 実態は不明だが、「何」を食べているのか。キョンは年間を通して木本とグラミノイド(イネ科植物ほか)が主食で、秋は落ち葉やドングリを嗜好(しこう)している。キョンは非常に警戒心が強く、性格は憶病。日中は茂みに座ったまま反芻(はんすう)を交えて長い食休みをする。通常は薄明のころ活発に行動するのだが、人を避けるように夜間になってから中山間地の耕地や庭まで下りてきて、ついでに野菜類、イネ、大豆などの作物を食い荒らす。

 望まれてやってきたのに、人間の身勝手から野生化したキョンを自然から排除するには忍びないが、平均頭数が約三千四百頭まで爆発的に増えてしまった以上、防除もやむを得ない。

 外来種については、各地で作物の食害に対する有害鳥獣捕獲(駆除)が実施されているが、計画的、科学的な防除や調査などの取り組みまではとられていないのが現状だ。 (動物写真家)

  =おわり

 

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