老舗のジャズ喫茶が無くなるという話がよく新聞に載ったりするが、60年代から70年代に青春真っ只中だった音楽ファンにとって、ジャズ喫茶は生活の一部だった。ロックのレコードしか買わないくせに何故かジャズ喫茶には通ったものだ。そんなジャズ喫茶で気になるジャケットを良く見てみると、ほとんどがブルーノートのレコードだったりする。ジャケット・デザインに統一感があり、センスがジャズそのもののような気がした。ジャケットを見ているだけで音が聴こえてくるような感じにさせる。
ブルーノートは、ベルリン生まれでアメリカに移住したアルフレッド・ライオンによって1939年1月にニューヨークの小さなジャズ専門のレーベルとしてスタートした。30年代のスイング・ジャズ全盛から、40年代のビバップ革命を経て、47年にはセロニアス・モンクの初リーダー作がブルーノートで録音され、モダン・ジャズ・レーベルとしての頭角を現す。ジャズ・ファンにとって最もコレクションの価値があるブルーノート1500番台がスタートするのは56年、アルフレッド・ライオンが最も愛するアーティスト、マイルス・デイヴィスが1番(1501)だった。58年には4000番台がスタート。ハード・バップからソウル・ジャズ、新主流派の出現と見事に時代を切り取っていく。
ブルーノートに多くの作品を残した、アート・ブレイキー、ホレス・シルヴァー、リー・モーガン、ハンク・モブレーなどのハード・バップを代表するアーティストから、数枚(1枚だけも)のアルバムだが、しっかりとブルーノートに足跡を残すジョン・コルトレーン、ソニー・ロリンズ、モンク、マイルス、クリフォード・ブラウン、バド・パウエルといったモダン・ジャズ・ジャイアンツ達。新主流派として一時代を築き、現在も活躍するハービー・ハンコックやウェイン・ショーターなど、ブルーノートの歴史はそのままモダン・ジャズの歴史でもある。
そのブルーノートの顔とでもいうべき録音エンジニアが、ルディ・ヴァン・ゲルダー(RVG)。この人なくしてブルーノートの音はあり得なかった。そのルディが新たにデジタル用にリマスターを手掛けた復刻CDシリーズが98年からスタートしている。限りなくオリジナルLPレコードに近づいた音は、アナログしか聴かないファンにも納得いただけるはずだ。
67年にアルフレッド・ライオンはブルーノートを退く。ブルーノートは85年からEMI傘下に入り、新録音を手掛けるレーベルとして復活した。現在、ノラ・ジョーンズなどのスターを輩出していることは皆さんご存知だろう。
(Text/遠藤哲夫)