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クリエイターズボイス

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  • 『小さな王様と約束の国 ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル』
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Wiiでダウンロードソフト
ゲーム作りの新しい可能性

河津今作『小さな王様と約束の国 ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル』は、Wii専用の新作ソフトなのですが、いわゆる店頭で販売するパッケージソフトではなく、バーチャルコンソール※1と同じように、インターネットを通じてWiiにダウンロードして遊んでいただくWiiウェア※2ソフトになります。

※1.バーチャルコンソール:ファミコン、スーパーファミコン、ニンテンドウ64などいろいろなプラットフォームの懐かしいゲームソフトをインターネットを通じてWiiからダウンロード・購入できるサービス。
※2.Wiiウェア:店頭で販売されていないWii専用の新作ソフトをインターネットを通じてWiiで配信するサービス。2008年3月25日サービス開始予定。

土田2006年の『Wii Preview』※3で岩田さん※4が、Wii専用のコンパクトなソフトをダウンロード販売する準備があると発言されたのが開発のきっかけで、その発言を聞いた当社のプログラマーが、新しい可能性を感じると言って、すかさず今回の企画を持ち込んできたんです。今作はWiiでダウンロードして遊ぶという仕組みですので容量は限られているのですが、パッケージソフトとは違った面白さにチャレンジができるのではないかと感じて、じゃあやってみよう、となりました。

※3.『Wii Preview』:2006年9月14日に幕張メッセで開催。
※4.岩田聡:任天堂代表取締役社長。
パッケージソフトとは違う開発体制

河津従来のパッケージソフトを開発する場合、我々プロデューサーレベルで企画を固めてそれをスタッフに伝えて制作を進めていくパターンが多いのですが、今作については最初から現場のスタッフからの「こんなことをやりたい」ということが明確で、パッケージソフトの制作過程とは明らかに違う印象がありました。

土田今作は、「国造り」というテーマから開発がスタートしましたので、まずは国造りの基本となる「建物を建てる」というシステマチックな部分から開発を進めました。ですので、当初の開発体制は、プログラマーとプランナーと建物のデザインをするデザイナーといったところの3人、途中からでも4,5人みたいな感じで、パッケージソフトでは考えられないほどの小規模な体勢です。ただ、当然ゲームを作るにはまとまったキャラクターや世界観が必要ですので、僕のほうから、試作のためにGC版の『FFCC』※5のグラフィックを使わせてもらえないかと河津に相談したんです。最終的にはそこから制作が加速して…といった感じですね。
そもそも今回の企画を、僕が『FFCC』の世界観でやりたかったという理由のひとつに、板鼻※6のデザインするキャラクターが気に入っていたというのがあります。特に今作は、プレイヤーが王様となって街の住民とのコミュニケーションからいろんな情報を得て、国を復興していくというゲーム内容になっていますので、街の住民との接触がけっこう重要になってくるんです。で、そのキャラクターたちとのコミュニケーションにより深みを出せるようにと、ぜひ彼のキャラクターを使いたいと希望しました。幸い、河津がゲームの中身も含めて気に入ってくれて、基本はこれでいいよと言ってくれたのが今作の実質的なスタートになりましたね。

※5.『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル』:スクウェア・エニックス社から2003年8月に発売されたニンテンドーゲームキューブ用ソフト。
※6.板鼻利幸:デザイナー。『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル』シリーズのキャラクターデザインを担当。今作ではアートスーパーバイザーを務める。
『小さな王様と約束の国 ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル』
『FFCC』の世界

河津今作は『FFCC』シリーズのスピンオフ※7という位置づけです。もともと『FFCC』シリーズというのは、本編の『FF』とはまた違う、ファンタジーのやわらかい世界をほんわかと描きたいというコンセプトで作っています。シリーズに共通するのは、クリスタルが重要な役割を果たしている世界に4つの種族がいて、世界を守るために冒険をするという設定です。物語を通じて、仲間同士や家族の絆を描いていくのがシリーズの特徴になっていて、今作もその部分はきちんと描かれ、『FFCC』の世界観がうまく汲み取られていると思います。

※7.スピンオフ:既存の作品における派生作品。外伝。
『小さな王様と約束の国』

土田今作は、GC版『FFCC』の数年後の世界を描いています。GC版『FFCC』では、世界は瘴気(しょうき)※8に包まれていて、人々は瘴気から身を守ってくれるクリスタルの力を維持するために、「ミルラの雫(しずく)」というものを探し求めて、クリスタル・キャラバンと呼ばれる冒険者たちを街から送り出しているという設定でした。最終的にクリスタル・キャラバンの活躍によって瘴気が晴れて世界は平和になるんですが、もしもキャラバンが戻ってこなかったらどうなっちゃったんだろうという“if”の話を描いているのが今作です。

※8.瘴気(しょうき):古代から近代にかけて、病気の原因になると考えられていた人体に対して有毒な「悪い空気」。

河津今作では、世界は平和を取り戻しているんですが、中にはキャラバンが戻ってこなかったために滅んでしまった国があるんですね。その滅んだ国の幼い王子様(プレイヤー)は行方不明になった父王を探して旅をしていて、魔法の力で建物を建てられる不思議な場所にやって来るところから物語が始まります。プレイヤーは、その国の小さな王様になってクリスタルから授けられた「建築術(アーキテクト)」という魔法の力で建物を建てて、滅んだ国を復興するのがこのゲームの目的になっています。

国造りRPG

河津普通のRPGだと主人公が戦うわけですが、今作は、主人公の王様自身は戦わないで、建物を建てることで冒険者を育成したり、支援したりするところが特徴です。王様が魔法の力で建物を建てることで国を復興していくという、ゲームシステムとして一風変わったというか、そういう意味で非常にチャレンジしているゲームになりました。

土田ゲームの流れをもう少し詳しく説明しますと、プレイヤーである王様は「建築術」という魔法を使って建物を建てるのですが、それには「精霊力」と呼ばれるエネルギーが必要になるんですね。この精霊力は、ダンジョンにいるモンスターを倒すと得られるので、王様は住民たちの中から冒険者を任命し、ダンジョンを探索するおふれを出すことにします。バトルはAIによる自動戦闘になるのですが、冒険者が戻ってくると「こんな場所で、こんなモンスターがいて、こんなふうに戦ってきたんですよ」とか、場合によれば「なんか魔法がまったく効かなくて負けちゃいましたよ」といった報告を聞けるんです。プレイヤーはその報告を聞いて、例えば、剣が全く効かないモンスターが現れて歯が立たなかったと報告にあったら、黒魔法学校を建てて冒険者を魔法が使える黒魔道士にジョブチェンジできるようにしたり、冒険者たちが集まる酒場を建ててパーティを組めるようにしたり、強いモンスターに勝てるようにパーティの編成をしたりします。そうやって冒険者たちを育てていくのもゲームの目的になります。

プレイボリューム

河津今作はダウンロードソフトということでパッケージソフトに比べるとゲームの規模そのものは小さいですが、プレイボリュームはけっこうあります。単に、ゲームを進行させるだけでなく、王様としてつぶさに街の人を観察したり、冒険者の報告を聞いたりすることによって、いろんな発見ができるようにもなっています。例えば、魔法学校の近くに家を建てると魔力の高い冒険者が生まれやすいとか、建物の建て方によって街に変化が現れるなど、面白い要素もいろいろ入れていますので、それを探すのも楽しいと思います。

土田もちろん、繰り返し遊べる要素もふんだんに盛り込んでいます。1周目のクリアだけであれば10数時間でできますが、その後の2周目では、1周目のプレイ内容を一部引き継いでスタートできるので、1周目では倒せなかった強いモンスターが倒せるようになって、探索できるダンジョンの数が倍近くなったり、建てられる建物の種類も増えたりと、実は2周目以降が本番というくらい十分に楽しんでいただける内容になっていると思います。

アイデア勝負

河津今作は、使用できる容量に制約がある中で、どこまでのことができるだろうと最初は思っていたんですね。でも、試作で実際の画面を見たとき、パッケージタイトルに遜色のないものができていたので正直驚きました。僕が一番オッと思ったのは建物が建つシーンで、この容量で派手に建物が建っていくアニメーションを見せられると、まさにそれこそが「魔法だっ!」って(笑)。

土田実は、容量では意外に苦労してなかったりします。ゲームを作るプロセスとして、うちはシナリオから作っていくスタイルがわりと多いんですけど、今回に関してはゲームデザインを先にして、シナリオは後から作成しました。この方法でいくと、バッサリ切るところは切って、逆に見せるところは見せてということがしやすかったので、やり方としては良かったのかなと思います。それと、かつてスーパーファミコンのゲームを作っていたときの経験を多分に活かせたと思いますね。

河津容量がパッケージソフトよりコンパクトだとは言っても、実はスーパーファミコンに比べれば圧倒的に大きいんです(笑)。昔と違ってグラフィックが3Dになっているので、そこにかなり容量はとられてしまうものの、ゲームボリュームはアイデア次第で十分に広げられると思います。

土田僕にとって容量を制限された中で面白さをちゃんと出していくという今回の作り方はとても面白かったです。今作は、“ダンジョンに冒険者を送り出した後、報告を聞く”というゲームスタイルなので、かなりプレイヤーの想像力で楽しんでもらわないといけません。その報告というところの表現作りが、昔ゲームを作っていた感覚ですね。グラフィックやアニメーションで何もかも表現できる時代になってきてますが、「こういうところに行ったらこんな場所があったんですけど」といった冒険者自身の発見であったり、「こうこうで、うまく勝ってきました」とか「とても歯が立ちませんでした」といった戦いの雰囲気を、台詞やキャラクター性で想像させたりといったアイデアを積み上げて行けました。これは、ちょっと昔だったら当たり前にやってたことで、今回わりとそこを意識して作ってますし、効果的にできたんじゃないかなと思います。

Wiiウェア
Wiiウェアの可能性

河津Wii専用の新作ソフト配信をする『Wiiウェア』のサービスが新しく始まるわけですが、我々にとってもWiiウェア向けのソフトを作るというのはいろいろな意味で新しい試みでした。これはまだ、配信が始まってからのお楽しみで言えないのですが、今作はダウンロード型のコンテンツということで、従来のものとはちょっと違った試みも予定しています。そういった意味で、今作はWiiウェアだからこそ生まれたんだと言えますね。

土田Wiiウェアの面白いところは、ソフトをダウンロードしてくださった皆さんがインターネットにWiiをつないでいることを前提に、ゲームをデザインできることなんです。これは、制作する側としては面白いことがまだまだできそうな予感がしています。今作にも実際にそういったアイデアが入っていますので、いわゆるパッケージソフトとは違う楽しさが出てくると思いますし、また、ネット環境が整っているということでプレイヤー同士がつながる遊び、これは僕個人としてもすごく興味があるところなのですが、WiiConnnect24※9であったりとか、Wiiの持っている面白いネットワーク機能とロールプレイングを連携させることもできるので、その可能性にはすごく魅力を感じています。

※9.WiiConnect24:インターネットと常時接続し、最新情報やメッセージなどを自動的に取得するWiiのネットワークサービス。

河津Wiiウェアはパッケージソフトと違って、配信後のプレイヤーの皆さんの感想や要望を感じながら、追加で何か新しいコンテンツを配信していくというようなことも可能だと思うんです。短期間で小規模に制作できるといったメリットもあるんですが、何よりプレイヤーの皆さんとそういった近い関係を作れるのも、Wiiウェアという仕組みならではなのではないでしょうか。

プレイヤーの皆さんへ

河津『FF』シリーズは、面白ければそれを良しとしようというところが基本にあります。ダウンロード型コンテンツのサービスはいろんなところであるんですけど、Wiiウェアとしてパッケージソフトとはちょっと違う新しいことができていて、そういう意味で今作は『FF』シリーズにふさわしい作品になったのではないかと思います。本編の『FF』、そして『FFCC』のファンの方にはもちろん、シリーズが初めての方でも十分楽しめるようになっているので、多くの方に遊んでいただければと思います。

土田今作は、「国造りRPG」というちょっと変わったゲームなんですけど、ゲームとしてすごく手応えのあるものになったと思います。容量はそれほど大きくないですが、その分、ゲームとしての充実度も密度もその中にギュッと圧縮されています。ぜひ皆さんに触っていただいて、こういうタイプのゲームの面白さというものを知っていただければと思います。1日にちょっとずつでも遊べる仕組みになっていますし、それでも必ず最後まで進んでいけるゲームですので、興味を持っていただいた方は、ぜひダウンロードして遊んでみてください。

河津 秋敏
かわづ あきとし

スクウェア・エニックス
エグゼクティブプロデューサー

1962年、熊本県生まれ。スクウェア・エニックス エグゼクティブプロデューサー。 1985年にスクウェア(当時)に入社し、プランナーとしてファイナルファンタジー、サガシリーズ、ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクルシリーズなど、数々の作品のプロデュース、ディレクションを手がける。 近年の代表作は『ファイナルファンタジーXII』『ファイナルファンタジータクティクス A2 封穴のグリモア』『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル リング・オブ・フェイト』など。


土田 俊郎
つちだ としろう

スクウェア・エニックス
シニア・プロデューサー

1964年、愛知県生まれ。スクウェア・エニックス シニア・プロデューサー。 スクウェア入社前よりゲーム制作に携わり、フロントミッションシリーズのプロデューサー、ディレクターや、ファイナルファンタジーXのバトルディレクターなどを務める。近年の代表作は『フロントミッションフィフス~スカーズ・オブ・ザ・ウォー~』『フロントミッションオンライン』など。

小さな王様と約束の国
ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル
メーカー スクウェア・エニックス
ジャンル 国造りRPG
プレイ人数 1人
配信開始日 2008年3月25日
Wiiポイント 1,500
対応
コントローラ
※Wiiウェア対応ソフト
※ニンテンドーWi-Fiコネクション対応



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