篤姫 あつひめ     
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脚本家の言葉
田渕 久美子

あらゆる日本人の目が、外患・内憂によって曇り、あるいは幻惑されていた幕末の頃、南の果てに唯一、冷静かつ先見性に満ちた視線を持つ藩がありました。遠い海に浮かぶ琉球という独立国家を支配下に置き、本州の長さに匹敵する長さの領土を保持していたのが薩摩藩です。
ペリーの浦賀来航に先んじること9年、同藩が外国船による開港要求を体験していることを知る人は少なく、幕末きっての名君と称された島津斉彬が、西郷隆盛、大久保利通らに与えた薫陶によって、明治維新が成されたことを知る人もまた多くはありません。その島津斉彬が養女に選び、徳川将軍の御台所として、いわば大奥に送り込んだ女性、それが天璋院篤姫その人です。
彼女の存在を知ったとき、「幕末」とその時代に生きた人々が私の中でいきいきと動き出すのを感じました。この国が混乱を極めていた時代に、最後まで「誇り」と「覚悟」を失わなかった女性、篤姫。愛する故郷である薩摩が、そして皮肉にも婚礼の仕度役だった西郷が刃を向けてきたとき、実家よりも婚家を守り通そうとしたその姿勢に、日本人が失ってしまった、そして、今の日本人になによりも必要な「何か」が秘められているのではないか。その疑問への答えを見つけるのが、脚本家としての私自身の「覚悟」でもあります。
勝海舟、坂本龍馬、徳川慶喜、和宮といった魅力的な群像に加え、今回は、薩摩藩の若き家老であり、西郷や大久保にも匹敵する働きから最初の宰相とまで呼ばれながら、歴史の中でとりあげられることの少なかったヒーロー、小松帯刀にもスポットを当ててみたいと思っています。
とかく暗く、陰湿に見られがちな幕末という時代を、明るく清々しい、人間賛歌のドラマに仕上げることができればと、これもまた私の「覚悟」です。


プロフィール
田渕 久美子(たぶち くみこ)

島根県生まれ。NHKでは連続テレビ小説「さくら」(橋田賞受賞)、月曜ドラマシリーズ「妻の卒業式」、夜の連続ドラマ「女神の恋」「ダイヤモンドの恋」など話題作を多数執筆。前向きに生きる女性たちの姿を、豊かな表現で描き視聴者から深い共感を得ている。また、ドラマ以外にも映画・ミュージカル・落語・演劇・狂言など幅広い分野で精力的に執筆活動をしている。大河ドラマは今回が初めてとなる。
田渕 久美子(たぶち くみこ)