学園の秘密

第3章

000 2001年作品
2001.10.13


体育はマット運動だった。

可奈と夕菜は少し遅れて体育館に来たが、

とがめられることもなく授業に合流した。

前転、後転。基礎的なものばかりだ。

だがその一つ一つの動作は、確実に可奈の膀胱に響いていた。

夕菜もときおり、可奈に心配そうな目を向ける。

「それじゃあ、次は開脚前転。」

一人一人、先生の指示を受けながら実演していく。

可奈の番だ。

(よりによって開脚なんて…)

可奈の我慢は限界に近づいていた。

脚をぎゅっと閉じていないと緩んでしまいそうだというのに。

可奈はしかたなくマットの前にしゃがみ、意を決して

脚を大股に開きながら前転する。

「うーん。ちょっと体勢が悪いかな」

先生が可奈の指導についた。

(ちょ、ちょっとやめてよ。こんな時に…)

そんな可奈の思いを知らず、先生は細かな指示をしながら

可奈に何度もやりなおさせた。

「頭をついて、そう。そこから開脚しながら…ストップ」

(やだ…ちょっと)

可奈は、体をさかさまにした状態で押さえられてしまった。

脚を開いたままの姿勢はひどくこたえた。

ブルマーの股間があらわになる。いつもならなんと言うことはないが、

そこに力を集中している可奈にとっては、その体勢が

ひどく恥ずかしく感じられた。

そんな体勢でも尿意は容赦なく襲ってくる。

おもわず可奈は両足を震わせた。

「はい、そのままゴローン…そうそう。」

やっと解放された。時間にしてものの2,3秒であっただろうが、

それすら可奈には地獄のようだった。

列の後ろに急いでまわり、誰にも気付かれないように脚を

もじもじさせる。

(誰かぁ、助けて…)

体育館の時計を眺めるが、まだ20分程度しか経っていない。

あと30分。果たして持ちこたえられるだろうか。

夕菜が心配そうに近づいて来た。

「ねえ、大丈夫…?」

「もうけっこう…やばいよぉ。だめかも…」

「……」

夕菜も言葉をなくす。だが可奈のもじもじとしているのを見て、

もう限界だと思ったのだろうか。彼女は突然口を開いた。

「ね、保健室行くとかいって出ちゃおうか…」

「でも…」

授業を抜け出たからといってどうなるのだろうか。

この学校にトイレはない。それとも、さっき夕菜が言っていた

「どうにかなる」ということは昼休みにならなくても

大丈夫なのだろうか。

「とにかく、言ってみるね」

夕菜は可奈の返事も聞かず先生のほうへと歩いていった。

夕菜は、体育館の外に可奈を連れ出した。

そして中等部とは違う方向に向かっていく。

可奈が具合が悪いそうだから保健室に連れていく、という理由で

うまく抜け出した2人だったが、どこに行こうというのか。

「ねえ…どこ行くの?」

もう外見を気にする余裕もない可奈は前かがみで股間を押さえながら

夕菜の後を追っていた。

「こっち…」

夕菜が向かっているのは可奈が知らない建物だ。

「これ、高等部の建物なの。」

その建物を指差して夕菜は言った。

窓の中を見ると、高校生らしき生徒たちが授業を受けている姿が

見えた。思わず手を股間から放し姿勢を正してしまった。

「高等部には、トイレがあるの?」

可奈は期待を込めてたずねる。夕菜は、可奈のトイレという言葉に

少々ばつが悪そうな表情で、答えた。

「うちの学校はね、高等部から共学になるの。だから、

 男子のための…お手洗いがあるのよ」

なるほど、窓から見た教室には少ないが男子生徒の姿もあった。

どうやら男子には排泄を恥ずべきという精神はないらしい。

男子トイレに入ることにはやはり嫌悪感を覚えるが、

この際やむをえない。先ほどは昼休みということだったが、

それでは男子達もトイレに入ってきてしまうだろう。

授業をぬけてきたのはむしろ正解だった。

「そっか。よかった…」

可奈は安堵の表情を浮かべる。夕菜に導かれ高等部の校舎に入る。

玄関を入ってすぐ、見なれた青い男性用のマークが目に入った。

可奈は走り出したい気分だったが、それすら辛い状況にきていた。

前かがみで、できるだけ振動が少ないようにすり足でトイレに向かう。

夕菜はこういう共用のトイレ自体に嫌悪を感じるのだろうか。

入り口で一瞬ためらったが、可奈を思いやって一緒に入ってきてくれた。

やっと、これで苦しみから解放される…。

そう思った可奈の目に、意外な光景が飛び込んできた。


第4章に続く


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