ひとつのことにも、たくさんの
思いがあるはずだから。

正しいことはひとつだけじゃない…。
そんなまんがを描いていきたい!
これからも、スピードを落とさず走り続けます!!
花とゆめで連載中の
『紅茶王子』が大人気の山田南平先生が、まんがへの思いを熱く語ってくれました。


(C)山田南平/白泉社 禁無断転載


初投稿は高2の時
Q 小さな頃からまんが家を目指していらしたそうですが、学業との両立は大変だったのでは!?
山田先生:小中学生の時には「まんが家になる」と公言していても、ただ言っていただけで何もしていなかったので、両立もなにもないです(笑)。高校に入ってから、ちゃんと何かやった方がいいかなと思い始めたのですが、実際に投稿という行動に移したのは高2でした。投稿し始めてからは、勉強は全くしなくなりましたね。先生も、結果を出していたから何も言わず応援してくれていましたけど、これで何も結果になってなかったらまわり中から「勉強しろ」と言われてたんでしょうね(笑)。

Q ペンネームは、どのようにつけたのですか?
山田先生:私が産まれたとき、男の子だったらつけられるはずだったのが「南平」という名前だったので…。母がイラストレーターの東君平(ひがしくんぺい)さんを好きで、そこからいただいた名前らしいです。名字は、南平をペンネームにしようと思った時の名字からつけました。後から気づいたんですが、「山田南平」というのは鏡文字らしくて、左右が完全に対称なんですよ。縁起の良い名前らしいです。偶然なんですけど気づいた時にはうれしかったですね(笑)。
Q 本当だ! すばらしいですね(笑)。

『紅茶王子』で描きたかったこと
Q 『紅茶王子』を描いていて、特にこだわりをお持ちだとか、気を配っていらっしゃるのはどんなところですか。
山田先生:小物とかお菓子、女の子たちの洋服などを描く時ですね。絵で見た時にぱっと映えるようなまんがを描いてみたかったので…。あとは、登場人物たちの言っていることが全部同じにならないように気をつかいます。価値観のぶつかり合いというか…。作者の考えはひとつですが、登場人物たちまで全員ひとつの考えではおかしいし、ひとつのことに多数の思いがあって、どれが正しいと決めることもしたくない。難しいとは思いますが、これからも基本的にはそういうまんがを描いていきたいですね。だから、これは『紅茶王子』に限ったことではないのかもしれないです。

Q なるほど…。確かに、『紅茶王子』には個性豊かなキャラクターが登場していますね。それぞれのキャラクター設定やファッションは、どんなヒントから生まれてきたのでしょうか?
山田先生:紅茶王子・王女たちに関しては、それっぽい名前の葉っぱからもらっています。服装は、もとにしている民族衣装などはありますが、王子たちの名前とは無関係ですね。たとえばペコーも、「オレンジペコー」という銘柄はセイロン(スリランカ)産の葉のブレンドを指すことが多いんですが、着ているドレスは中世ヨーロッパ風ですし。アッサムもインドというよりはトルコ風です。見た目それっぽければ考証はどうでもいいやって感じで。ははは(笑)。

Q それぞれのキャラにぴったりハマっていますよね(笑)。ところで、キャラクターの中でご自身に近いキャラ、友達になりたいキャラ、恋人にしたいキャラを挙げるとしたら?
山田先生:…どのキャラも自分っぽいと言えば自分っぽいんですけど…(笑)。良く言われるのは奈子(たいこ)です。次がそめこかな? 友達にしたいのはハルカ。だって便利そうじゃないですか(笑)? それから恋人は…朝比奈? え? 駄目?(笑)いや、ある意味、ああいう触り方をしてくれる恋人なんていた日にはときめくかしらと…。駄目か?(笑)
連れ歩いて見せびらかす用の恋人としてならアッサムもいいですね。でも彼は子どもだから彼氏にしたら大変ですよ〜。けっこう冷淡な部分も持っていそうですよ、彼女になってしまった女の子に対しては。「釣った魚に餌はやらない」じゃないけれど(笑)。

Q けっこうスルドい分析ですね(笑)。それでは、奈子たちと紅茶王子たちの関係は今後どのように展開するのでしょうか?
山田先生:主従関係と友人関係と恋愛感情のせめぎ合い、みたいなものをちゃんと描けたらなと思っています。アッサムとハルカ、奈子とアールグレイ、そめこと紅牡丹(ホンムータン)、菊花とペコー、どれも違う感情やスタンスを持った主従関係ですよね。そのへんをきっちりわかりやすく描けたら成功かなと。あとは、もう巡り会うことはないんだぞというほどの別れが待っていると、初めから確実に決定されている上で築いていく人間関係…かな。そういうのって特殊じゃないですか。そもそも、それを描いてみたいなというのがあって、この話を描き始めたんです。だから、きっちり落とし前つけて終わらせたいですね。できるかなー。どきどきだー(笑)。

Q 楽しみにしています! さて、今年1月の「ザ・花とゆめ」に掲載された『キャベツ畑のキラキラ星』の設定には何かヒミツがあるとか…?
山田先生:けっこう気づいてくれてる人も多いかと思うんですが、冬の相手役のタカミにはモデルになったアーティストがいます。ただビジュアルというか、見た目だけもらった感じなので、内面はわたしの内面が反映されたキャラだと思いますが…。あとタカミのモデルにさせていただいたアーティストさんって実はふたりいるんですよね。わかりやすい人の方はわざわざ言わないとして(笑)、わかりにくい方のモデルさんはラクリマ・クリスティでドラムを担当しているレビン君です。実は、「わかりやすい人」よりも、レビン君の方がデカいんですよね…。気づいてた人いる…?(笑)
Q う〜ん、深いですね(笑)。

仕事もプライベートもHAPPY!
Q 最近、何かハマっているモノはありますか?
山田先生:恥ずかしながら、携帯のメール機能にハマっていますー(笑)。ある友人と、寝る前と起きた時に必ず数時間、仕事しながら、あるいはうとうとしながらメールのやりとりをしていまして…。600回メールを送れるプリペイドカードがあるんですが、相手がそれを何と一週間で使い切ってしまったんです。私も同じくらいその相手にメール送ってるということか! みたいな(笑)。けっこうふたりでボー然としてしまいました。でもいいんだ楽しければ。ふ。愛だろ、愛(笑)。

Q 600回はスゴイ!(笑) ところで、お嬢さんのうりちゃんは、お元気ですか? 近況などぜひお聞かせください。
山田先生:今年はもう幼稚園です。はっやいな〜〜〜。言葉が生意気さんになってきてますね。思わずこぶしを小刻みに震えさせてしまうようなことを、へろって言ってくれちゃって…(笑)。そういえば、先日「うりはねー、大人になったらママと結婚するんだよ」と言われてしまいました。「うりちゃん、ママはうりちゃんのママだから結婚はできないんだよー…」と説明しつつダンナの視線が気になったりして(笑)。うり、そういう時はまずパパの名前を挙げなさいパパの名前を(笑)。うれしかったですけど(笑)。

Q 山田家のシアワセぶりが垣間見えて、とてもうらやましいです(笑)。ところで、山田先生は東京とソウルでサイン会をなさっていますよね。それぞれ、ファンの方々の反応はいかがでしたか?
山田先生:東京のサイン会は、どこでやってもみんなお行儀が良いというか、礼儀正しい方が多くて、安心してサイン会ができました。対して、ソウルでのサイン会は、読者さんの反応が日本と全然違ってすごく楽しかったです。もーこう、何? わたしアイドルか何かですか?(笑) という感じの読者さんのテンションの高さが…。あちらではまんが家はカッコイイ花形職業らしいですね。女優さんもかくやというような…。でもどちらも読者さんと交流するのは楽しいですよ。

Q それぞれに、お国柄が出るんでしょうか(笑)。ファンの方々からのお手紙も、国内外を問わずたくさん届くと思いますが、その中でよく聞かれることは?
山田先生:国内のファンの方に聞かれることで一番多いのは「まんが家になりたいんですけどどうすればいいんでしょうか」ということですか。それに関しては、とにかくどっかに投稿しなさいって感じですよね。ガンバレー、みたいな(笑)。次は「奈子ちゃんはどっちとくっつくんですか!!」というもの。ははははは内緒です(笑)。海外からのファンレターでは、ナゼか「ダンナさんとのなれそめは?」とか「プロポーズの言葉は?」が多いですよ。ちなみにプロポーズは私からで、言葉は「結婚して」でした。ははははは…。夢がなくてゴメンなさいー(笑)。

Q といいつつ、楽しそうですよ(笑)。それでは最後になりましたが、読者の方々へのメッセージをお願いします。
山田先生:デビューからそろそろ十年経ってしまいます。何だかトントンとここまで来てしまいましたが、まだまだ止まる気もスピード落とす気もないので、ああまだ山田南平おもしろいもの描いてるじゃんと思ったら応援声援などいただけるとうれしいです。特に声かけていただかなくても、黙ってわたしの作品読んでいただけてるだけでも、かなりうれしかったりします。大きい声では言えませんが、立ち読みしていただけるのだって(笑)読んでもらえるんならうれしいです。これからも頑張ってまんがを描いていき続けたいと思います。う〜ん、でも今年は、仕事しつつもなるべく遊ぶ年にしようとも思っていたりしますが…(笑)。どーぞよろしくお願いします!