過去放送記録

FILE013:「異形のモノに美は宿る」

2007年10月16日放送

 

辻惟雄(日本美術史)

人間は古来より「美しいもの」が好きだ。しかし、現在、落書きのような絵がアートであり、壊れた椅子に美を感じる人もいる。「美」とは何なのか?日本人の「美意識」はどこにあるのか?
日本美術史を専門とする辻惟雄は、半世紀近く日本の美を研究してきた第一人者。辻の本質は、美術の歴史を研究するというより、むしろ、新しい美の形を提示する珍しい研究者だ。現在、世界中で人気の江戸時代の画家、伊藤若冲も、辻がその価値を再発見してブームとなった。その他、歌川国芳、狩野山雪など次々と埋もれてきた日本の美を発掘してきた。
辻が発掘してきた画家たちに共通するキーワードが「奇想」。従来の美意識とはかけ離れたグロテスクで、ユーモラスな絵ばかりだ。辻はここに日本人の根底に流れる美意識があるという。爆笑問題と辻。この異質なコラボレーションが生み出した「美」の本質とは?

辻惟雄(つじのぶお)
1932年生まれ。東京大学名誉教授、多摩美術大学名誉教授。現在、MIHO MUSEUM館長。これまで注目されなかった日本人の美意識、遊びの精神の発掘を行う。70歳を過ぎた今もなお、日本美術界に与える影響は大きい。

爆笑問題の対戦感想

田中:今日の先生は『美術界の奇才』ってことでしたので、どんなにすごい方が現れるのかとちょっとビビってたんですけど、すごく優しいおじいさんって感じでホッとしました。正直言うと僕はそんなに絵の知識もないんですけど、ああやって昔の絵を見ることは、すごくいい事だと思いました。せっかく美術館に来たから、もっといろいろ見たりできれば良かったんですけど、なにせ時間が足りなくて…。残念でした。でも、今日は結構楽しめました
太田:そうですね。今までとは全く違う傾向の展開になりましたが、こういう日があってもいいんじゃないかって思いました。もっといろいろな絵を見て、先生とたくさん話したかったですね。もう、全て先生のおっしゃる通りでしたし…。全く異論なしです。いやぁ、今日はその一言に尽きますからね、もうなんにも言うことはありません。
田中:そうそう。今回のようにみんなで一つの絵を見て感想を言うだけ、みたいな回があってもいいんじゃないですか?それはそれで…。
まあ、テレビを見ている皆さんが共感するかしないは別にして、色々と自由に発想する回があるのもいいんじゃないでしょうか?芸術って「これはこうだから」と定義づけられるものじゃないし、絵ってまさにそういうものだと思いますからね。

ディレクター観戦後記

収録後、美術史界の巨人、辻先生がしきりに太田さんの審美眼をほめていたのが印象的でした。
番組ではカットしたのですが、先生が持ってきた曾我肅白の絵を見たときの太田さんの一言に驚いたみたいです。それは「北斎の波と似ている!」
実はこのことを辻先生は、40年ほど前のご自身の著作「奇想の系譜」で指摘していたのです。
その他にも、太田さんの絵画に対する意見は、ほとんど辻先生の見解と同じだったのです。
番組のデスクと「太田さん、珍しく先生の本を予習してきたのではないか」と話し合ったほどでした。 でも、そんな面倒な(?)ことをするはずもなく、結局、奇才は奇才を知るのかと妙に納得してしまいました。
最後に辻先生は、「天才バカボンについての太田さんの意見も聞きたかったな・・・」とつぶやいて帰っていかれました。

プロデューサーの編集後記

今回、伊藤若冲や曾我蕭白の絵を堪能しながら、時々頭に浮かんでいたものがあります。
それは、縄文時代の火焔式土器です。火焔式土器は日本美術史上の傑作のひとつだと思いますが、 あの土器からは、表現することに対するものすごいエネルギーを感じます。
そのエネルギーと似通ったものを、若冲や蕭白の絵から感じました。原初的な、なにかこう、表現せずにはいられないような熱情に駆られている、そんなエネルギーです。
そうしたものを、他の価値観にとらわれずに解放したからこそ、独創的な表現が可能だったのでしょうか。

太田さんがかつてピカソの絵を見たときに、「表現ってこれでいいんだ、表現は本当に自由なんだ」という主旨の話をされていました。
我々制作者は、表現が画一的にならないよう常に注意していますが、気持ちが緩むとマンネリに陥ってしまう危険があります。
表現方法は多様であり切り拓いていくもの、そして自由に表現するエネルギーを持ち続けていかなければならない、そんな戒めの念を起こさせてくれる今回の番組でした。

KEYWORD

人間

芸術

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