過去放送記録

FILE107:「現実ヲ拡張セヨ」

2010年4月20日放送

 
NHKオンデマンドで配信中。


苗村健(電子情報学)

いまコンピュータの世界でもっとも注目を集めているのがAR(augmented reality)、「拡張現実」だ。
現実の環境にコンピューターを使ってバーチャルな情報をドッキングさせ、現実を強調したり、補足する技術のこと。カタログや百科事典をカメラにかざすと、モニター上に立体画像が飛び出したり、携帯端末のカメラを街の風景に向けると、飲食店の情報が表示されたり。
拡張現実は、インターネット以上にわれわれの生活を激変させうる技術なのだ。このAR研究をリードするのが、東大工学部電子情報学の苗村健准教授。
苗村は、特殊なメガネやディスプレーを通さずに体験できる拡張現実技術にこだわっている。
研究室を訪ねた爆笑問題は、画面に映った二人だけがモノクロになったりモザイクがかかったりするカメラや、肉眼で見られる3D田中像など、最先端技術の数々に遭遇する。
「誰も見たことも体験したことのない未来の情報メディアを創り出したい」という苗村。
やがて議論は、「リアル」とは「バーチャル」とは何か、その境界線をめぐって白熱していく。

苗村健(なえむらたけし)
1969年生まれ。東京大学大学院 情報理工学系研究科 電子情報学専攻 准教授。
1992年東京大学工学部電子工学科卒業。スタンフォード大学客員助教授を経て、2002年より現職。文部科学大臣表彰若手科学者賞(2008)、日本バーチャルリアリティ学会論文賞(2008,2007, 2006)、FIT船井ベストペーパー賞(2006)、映像情報メディア学会丹羽高柳論文賞(2008, 1999)、グッドデザイン賞(2008)、NHKデジタルスタジアム年間最優秀作品賞(2004)など受賞。

今回の対戦内容

苗村健(なえむらたけし)/爆笑問題(太田/田中)


太田:それこそ映画じゃなくて、本当に今アバターってね、自分の分身をコンピュータの中に入れて、そこで何か遊ぶみたいなのって、相当はやっているじゃないですか。で、あそこに本当の情報が入っているわけですもんね、でも。だから結局、あそこで買い物も出来るから、要するに切り離されていなくて、つながっているわけだけど、むしろ何かそっちの方が怖いということもありますよね。
田中:恋愛シミュレーション的なものも今はやっているでしょ。あれとかも本当に、何月何日のどこで待ち合わせっていって、本当にその時間に会いに行かないとすげえ怒っていたりとかっていう、それは面白いんだろうけれども、やっぱりちょっと何か異様な感じですよね。
苗村:そういうネットの世界っていうのが、やっぱり現実の世界に近付こうとして、どんどんどんどん発展してきたんですよね。で、結果として、今のそのやっと普通の現実世界とネットの世界が近いっていう状態になってきたのであれば、いよいよ混ぜてもいい頃に来ていると思います。で、ネットにしか出来なかったことが、現実世界でも可能になるという、新しい文化が交わるようなところですね。
太田:ある種、だからこういう技術っていうのは、まあ日本の割と得意分野ですよね、この辺の精密な細かい。と、ぐんぐん多分東大の先生のところにガーッと進んじゃうと思うんだよね。先に。先に進んで、これどう解釈するかは、おそらく相当ギャップがね。そうすると、そこにまあ文明なんて全部そうだろうけど、先にそういうのがあって、さあこれどう使うっていうので、ある意味、無責任にポンと世の中に出すわけですよね、こういうものって。

先生の対戦感想

苗村健(なえむらたけし)


予想外の話がたくさんあって、非常に刺激になったのと。
やっぱり、技術だけじゃなくて、社会への影響という観点をすごくお持ちなので、僕らが伝えていく時に、何でもシンプルに話せばいいと思っていたものも、むしろそれが混乱することになったりだとか。
すごく刺激を受けました。すごく楽しかったです。

爆笑問題の対戦感想

田中:分からなくなっちゃいますよね、話をしていると。現実とバーチャルみたいなのって、境界線がはっきりしていないじゃないですか。でも先生は、それが分かれているから、その垣根をね、なくしたいみたいなことで。ただ、その「垣根」も太田が言うようにちょっと微妙に分からない面があって。まあ現実を、バーチャルとかも全部まぜこぜにしてやろうっていうことなんでしょうね。だから多分、相当「面白い」とか「楽しい」だけじゃなく、本当に弊害もありそうな気がしますよね。
太田:面白かったですよ。今に始まったことじゃないっていうことじゃないですかね、ああいうことって。バーチャルっていう言葉で言うと、何か最近のことのような気がするけど、別にもともと人間の何ていうのかな。昔から飾ったりとか、お化粧したりだとか。「そのものずばり」っていうのが別にどこにあるっていうことではなくて、あるんだかないんだか分からないようなものを基準にしていって、それによって現実は動いていくわけだから。神がいるんだかいないんだか誰も分からないのに、その宗教が世の中を、歴史を作っていくとかね。現実にあるものっていうより、言っている世界の方が面白くてね。

ディレクター観戦後記

いまインターネット空間は、ブログからツイッターへと大きく進化しているのだという。短いつぶやきのほうがよりリアルさを伝えるといったところなのだろう。同じように、バーチャルリアリティーの世界も、よりリアルなものを求め始めている。
そこに誕生したのが今回のテーマである拡張現実だ。現実の中にいままで見たこともないような世界が拡がっている映像は衝撃さえ受ける。これが現実とバーチャルの距離を縮めることになるのか?いや、それどころではなく、拡張現実の未来は何が現実で何がバーチャルなのかの区別さえつかない時代の到来を意味しているのかもしれない。映画の中で実写だと思っていたシーンが、実はということが私たちの身の回りに起こるかもしれない。それが拡張現実の世界なのだ。

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