中日新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 静岡 > 9月30日の記事一覧 > 記事

ここから本文

【静岡】

設計・磯崎氏が文書で陳謝 グランシップの外壁はく落問題

2010年9月30日

知事も一定の理解

磯崎新氏

写真

 県の複合文化施設「グランシップ」(静岡市駿河区)の外壁材(スレート)はく落が相次いだ問題で、県がスレートを使用した理由などを尋ねる質問状を郵送した設計者の世界的建築家、磯崎新氏から回答が寄せられたことが分かった。29日の定例会見で書面を公表した川勝平太知事は、あらためて設計姿勢に疑問を呈しながら「磯崎氏も大変心配していることがよく分かった」と一定の理解を示した。 (広瀬和実)

 県が9月上旬、郵送した質問状は、グランシップと同時期に設計した奈良市の「なら100年会館」がグランシップと類似する点を指摘。「奈良では瓦タイルを使用したが、グランシップでなぜスペイン製のスレートを使用したのか」などと設計意図をただした。

 磯崎氏本人の署名が入った回答書は21日、県に届いた。磯崎氏は書面で「ご迷惑が及び、心苦しく思う。どう対処すべきかは今後とも県の担当者と相談を続けたい」と陳謝。なら100年会館は「古代の1本の木からくりぬいた舟がモデル」と、現地生産の瓦を使った理由を記した。

 その上でグランシップの設計意図を「静岡は奈良のような古い伝統が保持されている場所と違い、列島の中心で未来へ向かう道の上にある。静岡・清水の2地域を統合するような大屋根が必要」と説明。スレートの使用は「グランシップのダイナミズムを表現できる適切な材料。スペインの技術で長年耐えている」と回答した。

 定例会見で川勝知事は「哲学を持って造っている」と磯崎氏を評価しつつ、他の建築家の意見を紹介しながら「スペインと本県では降雨量が違う。東静岡駅に近く、新幹線の振動で少なからぬ影響がある。そうした面に配慮があったのか」と語った。

 県文化政策課によると、賠償責任の追及期限は建物引き渡し時(1998年8月末)から、設計上の問題は1年間、施工上の問題は2年間。重過失があった場合はそれぞれ1年間が5年間に、2年間が10年間に延長される契約がある。

 県は、はく落が発覚した2004年度と05年度、原因調査を実施したが、特定に至らず、法的責任追及を断念したという。今後、具体的なはく落原因が判明しても設計者に対する法的な責任追及は困難だが、同課は「原因が出た場合、あらためて専門家に相談したい」としている。

 

この記事を印刷する

PR情報

中日スポーツ 東京中日スポーツ 中日新聞フォトサービス 東京中日スポーツ