第15回原子力安全委員会 資料第1-1号 |
別添 |
原子力災害時における安定ヨウ素剤予防服用の考え方について
平成14年2月
原子力安全委員会
原子力施設等防災専門部会
はじめに………………………………………………………………… | 1 | |
1. | 原子力災害時における放射性物質の放出と 安定ヨウ素剤の意義について………………………………………… |
2 |
2. | 放射性被ばくによる甲状腺への影響………………………………… | 2 |
2-1甲状腺がん………………………………………………………… | 3 | |
2-2甲状腺機能低下症………………………………………………… | 4 | |
2-3その他の甲状腺疾患……………………………………………… | 4 | |
3. | 安定ヨウ素剤による効果……………………………………………… | 5 |
4. | ヨウ素剤を含む製剤の服用による副作用…………………………… | 5 |
4-1ヨウ素に対する過敏症…………………………………………… | 5 | |
4-2甲状腺機能異常症………………………………………………… | 5 | |
4-3その他の副作用…………………………………………………… | 6 | |
4-4事例に基づく副作用のリスク評価………………………………… | 7 | |
5. | 安定ヨウ素剤予防服用に係る防護対策…………………………… | 8 |
5-1国際機関における安定ヨウ素剤の服用に係る介入レベル等…… | 8 | |
5-2我が国における安定ヨウ素剤予防服用に係る防護対策………… | 9 | |
5-3安定ヨウ素剤の服用方法………………………………………… | 10 | |
5-4服用対象…………………………………………………………… | 11 | |
5-5服用回数及び服用量……………………………………………… | 13 | |
5-6ヨウ素含有食品等による効果について………………………… | 14 | |
5-7防災業務関係者への安定ヨウ素剤予防服用について………… | 15 | |
5-8安定ヨウ素剤予防服用の理解を得るために…………………… | 16 | |
まとめ………………………………………………………………… | 17 | |
参考文献………………………………………………………………… | 19 | |
参考資料………………………………………………………………… | 23 | |
用語集…………………………………………………………………… | 35 |
(2)安定ヨウ素剤の意義 (注)本報告では、放射線の単位である「Gy」と「Sv」については、概念の混乱を避けるため、準拠した文献の記載どおりとした。また、β線やγ線の放射線荷重係数を1として、1Gy=1Svとする。
(2)広島、長崎の原爆被災者のデータに加え、放射線治療後の患者のデータをまとめ甲状腺外部被ばくによる甲状腺がんの発生確率を解析した結果(3)では、以下の知見が得られている。 (3)マーシャル諸島における核爆発実験で生じた放射性降下物による甲状腺被ばくの影響調査(4) (4)チェルノブイリ事故後の国際的調査に関して、被調査集団の事故時の年齢が15歳未満で、その60%は5歳未満の小児を対象とした調査では、甲状腺内部被ばくによる甲状腺がんの発生確率は、有意な増加が認められている(5、6、7、8)。 上記の(1)〜(4)の調査より、以下の知見が得られている。 なお、放射線被ばくにより誘発される甲状腺がんに関する上記のいずれの調査も、死亡に基づくものではなく羅患率に基づいて得られた解析である。
ヨウ素に対する過敏症を有する者が、ヨウ素を含む製剤を服用すると、アレルギー反応を引き起こす。
(2)甲状腺腫、慢性甲状腺炎等を有する者等で甲状腺機能異常が認められないものが、ヨウ素を含む製剤を長期連用することにより、甲状腺機能亢進症や低下症という甲状腺機能異常症を生じることがある。 一方、健康な者が、ヨウ素を含む製剤を大量服用又は長期連用すると、一過性の甲状腺過形成や機能低下を生じることがある(39)。
また、安定ヨウ素剤の服用に当たっては、副作用の発生頻度を低減させる方法の一つとして、周辺住民等を対象に副作用についての情報を普段から提供しておくことも重要である。
(2)WHOによるガイドライン(15)は、チェルノブイリ事故による若年者の健康影響調査の結果を踏まえて、若年者に対する服用決定に関してIAEAの包括的介入レベル100mGyの10分の1である10mGyを推奨している。また、19歳以上40歳未満の者については、100mGyを推奨している(参考資料?T)。 (3)退避や避難の介入レベルに関して、不利益と利益の釣り合い(以下「リスク・ベネフィットバランス」という。)を考慮して、IAEA SS-109(14)で用いられた計算の方法で、安定ヨウ素剤の服用における防護上の介入レベルを試算すると、放射性ヨウ素の吸入による甲状腺被ばくが、50mGy以上の時に、安定ヨウ素剤を服用すると、副作用のリスクを上回り有益となる。この50mGyは、外部被ばくに対する試算結果であり、内部被ばくに比べ厳しいもの(介入レベルとしてより低い線量となる。)である(参考資料?U)。
(4)各国の安定ヨウ素剤服用に係る介入レベル等は、IAEAが推奨している安定ヨウ素剤予防服用の包括的介入レベルである回避可能な放射線による甲状腺の被ばく線量100mGyを考慮して、各国の実情に合わせて提案されている(参考資料?V)
(2)原子力災害時における放射性ヨウ素の放出に対する甲状腺への放射線影響を低減させるための防護対策としては、屋内退避、避難、安定ヨウ素剤予防服用等があり、実効性を高めるためには、これらの防護対策を別々に考えるのではなく、総合的に考える必要がある。
(3)安定ヨウ素剤予防服用に係る防護対策を開始するための指標としては、屋内退避及び避難等に関する指標として既に提案されている小児甲状腺等価線量の予測線量を用いることが妥当である。
(4)組織や臓器の等価線量については、β線やγ線の放射線荷重係数を1として1Gy=1Svとする。
等を踏まえ、 甲状腺等価線量とは、環境中に放出された放射性ヨウ素を、人が吸入することにより、甲状腺に集積する放射性ヨウ素からの被ばく線量のことであり、その呼吸率と放射線ヨウ素の吸入による線量係数(Sv/Bq)の年齢による違いから、この値は小児(1歳児)において、最も大きくなる。このため、防護対策の指標として、小児に対する値を用いる。 (2)副作用を考慮した服用対象者の制限 2.甲状腺機能異常症 ヨウ素過敏症の既往歴のある者、造影剤過敏症の既往歴のある者、低補体性血管炎の既往歴のある者又は治療中のもの、ジューリング疱疹状皮膚炎の既往歴のある者又は治療中の者、甲状腺機能異常賞の治療中の物の安定ヨウ素剤の服用を防ぐため、安定ヨウ素剤の配布時にも、上述の疾患に関する情報を明確に伝えることが必要である。また、これらの者に対しては、避難を優先させることが必要である。
(3)結核について (4)新生児について (5)妊婦について (6)授乳婦について なお、ヨウ素を含む製剤の副作用情報等の動向にも配慮する。
(2)服用量 安定ヨウ素剤予防服用の方法について、そのまとめを以下の表に示す。
1.原子力災害時における放射性物質の放出と安定ヨウ素剤の意義について
(1)放射性物質の放出形態
原子炉施設等において、原子力災害が発生した場合、放射性物質として、気体状のクリンプトン、キセノン等の希ガスとともに、揮発性の放射性ヨウ素が周辺環境に異常に放出されるが、希ガスは外部被ばく、放射性ヨウ素は内部被ばくにより、人体に影響を与えることが想定される。
一方、多重の物理的防護壁により施設からの直接の放射線はほとんど遮へいされ、固体状及び液体状の放射性物質が広範囲に漏えいする可能性は低い。
また、核燃料施設において、臨界事故が発生した場合、核分裂反応によって生じた核分裂生成物である希ガスとともに放射性ヨウ素が放出されることが想定されるが、放出される量は原子炉施設に比べて極めて少ない。
人が放射性ヨウ素を吸入し、身体に取り込むと、放射性ヨウ素は甲状腺に選択的に集積するため、放射線の内部被ばくによる甲状腺がん等を発生させる可能性がある。この内部被ばくに対しては、安定ヨウ素剤を予防的に服用すれば、放射性ヨウ素の甲状腺への集積を防ぐことができるため、甲状腺への放射線被ばくを低減する効果があることが報告されている。ただし、安定ヨウ素剤の服用は、甲状腺以外の臓器への内部被ばくや希ガス等による外部被ばくに対して、放射線影響を防護する効果は全くないことに留意する必要がある。
また、放出された放射性用途の吸入を抑制するためには、屋内へ退避し窓等を閉め気密性に配慮すること、放射性ヨウ素の影響の少ない地域への避難等の防護対策を適切に講じることが最も重要である。
放出された放射性ヨウ素に汚染された飲食物の摂取による人体への影響については、飲食物摂取制限が講じられるため、それらの飲食物を摂取することにより身体に取り込まれる放射性要素による甲状腺の内部被ばくについては、小さいものと考えられる。
1.原子力災害時における放射性物質の放出と安定ヨウ素剤の意義について
甲状腺への放射線の影響は、外部被ばくによる場合と甲状腺に取り込まれた放射性ヨウ素の内部被ばくによる場合がある。
安定ヨウ素剤の予防服用は、放射性ヨウ素の内部被ばくに対してのみ有効である。
放射線の甲状腺への外部被ばくは、放射性ヨウ素の甲状腺への内部被ばくに比べて、放射線の影響が厳しくなることを踏まえ、ここでは、甲状腺への放射線の外部被ばく及び内部被ばくの知見を考え合わせることとする。
2-1甲状腺がん
(1)広島、長崎の原爆被災者の長期にわたる疫学調査(1)によると、甲状腺外部被ばく後、長期間にわたり甲状腺がんの発生確率の増加が認められている。すなわち、生涯にわたる甲状腺がんの発生確率(生涯リスク)について、甲状腺の吸収線量が500mGy(注)(50rad)以上の被ばく者群では、
・甲状腺がんの発生確率は、被ばく時の年齢が20歳までは、線量に依存して有意な増加が認められる。(2)
・被ばく時年齢が、40歳以上では、甲状腺がんの生涯リスクは消失し放射線による影響とは考えられなくなる(2)
という結果が得られており、被ばく時の年齢により甲状腺がんの発生確率が異なることが判明している。
・5歳未満での被ばくに比較して、10〜14歳での被ばくでは、その発生確率は5分の1に低下する。また、20歳以上では、1Gy以下の甲状腺被ばく後の甲状腺がんの発生確率は極めて低い。
・若年時に被ばくした者の甲状腺がんの発生確率は、100mGyの甲状腺被ばくでもその増加が観察される
・若年時に被ばくした者の甲状腺がんの発生確率は、被ばく後5〜9年で増加し、15
〜19年で最大となり、40年後でも発生確率は残存する。
また、チェルノブイリ原発事故当時の乳幼児に関する調査では、事故直後の短半減期の放射性降下物による甲状腺内部被ばくによる甲状腺がんの増加が示唆されている。(8、9、10)
さらに、ロシアで甲状腺内部被ばく者の甲状腺がんの発生確率に関する調査では、被ばく時の年齢が18歳未満の者では成人の3倍である。(11)
なお、チェルノブイリ事故では、ヨウ素-131と甲状腺発ガンリスクとの関連が報告されてきたが、最近の別の研究では、甲状腺がんの発生にヨウ素-131以外の放射性ヨウ素が寄与している可能性が示唆されている(12、13)。
・放射線ひばくにより誘発される甲状腺がんの発生確立は、特に乳幼児について高くなる。
・放射線被ばくにより誘発される甲状腺がんの大部分は、甲状腺濾胞細胞に由来する乳頭腺がんであり、一般的には、悪性度が高くないため、適切な治療が行われれば、通常の余命を全うできる
2-2甲状腺機能低下症
一定量以上の放射線に被ばくした後、数ヶ月の期間をおいて、甲状腺の細胞死の結果として甲状腺ホルモンの分泌が減少することにより、甲状腺機能低下症が発生する場合がある。
甲状腺機能低下症の発祥は、放射線の確定的影響であって、しきい線量が存在する。そのしきい線量を超えた場合には、被ばく線量が増加するに従って発生率が増加し、重篤度も高くなる。
現在、国際原子力機関(以下、「IAEA」という。)並びに世界保健機関(以下「WHO」という。)では、内部被ばくによる甲状腺機能低下症が発症すると予測されるしきい線量として甲状腺等価線量で、5Gyが提案されている(14,15)。このしきい線量については、下方に、見直しが行われているところである。(15,16)
2-3その他の甲状腺疾患
マーシャル諸島における核爆発実験で生じた放射性降下物による甲状腺被ばく影響調査(4、17)及びチェルノブイリ原子力発電所事故調査(9)では、小児の甲状腺両性結節の発症が報告されている。一方、長崎の原爆被災者の最近の調査では、甲状腺被ばくの影響として自己免疫性と考えられる甲状腺機能低下症の発症も示されている(18)。これら甲状腺疾患の発症に係る放射線被ばくとの関連については、さらに検討が積み重ねられているところで
ある。
3.安定ヨウ素剤による効果
放射性ヨウ素は、呼吸により鼻から吸引され気道に沈着し、気管支及び肺から体循環に迅速に移行する(19、20)。また、口から吸入された放射性ヨウ素の一部は、咽頭部にも沈着し、食堂を経て消火器から吸収され、体循環に移行する(22)。取り込まれた放射性要素の約10%〜30%は、24時間以内に甲状腺に選択的に集積し、残りの大部分は主に腎臓より尿中に排泄される(21)(参考資料-図?T)。
なお、我が国においては、医療現場などで放射性医薬品であるヨウ素の服用による知見等から、日常の食生活において、コンブ等からヨウ素を摂取する頻度が高いため、放射性ヨウ素の甲状腺への取込みは少なくなることが知られている(22)。
甲状腺に集積した放射性ヨウ素は有機化され、一定期間、甲状腺内に留まる。成人の甲状腺でのヨウ素の生物学的半減期は約80日で、19歳以下の若年者では成人のそれと比べて短い(23)。
放射性ヨウ素が吸入あるいは胎内摂取される前又は直後に、安定ヨウ素剤を服用することにより、放射性ヨウ素の甲状腺への集積の90%以上を抑制することができる(24、25、26、27)。また、すでに放射性ヨウ素が摂取された後であっても、4時間以内の服用であれば、約50%の抑制効果が期待できる(28)。
しかし、6時間以降であればその効果は激減することが報告されている(27)。
放射性ヨウ素の甲状腺濾胞細胞への取り込みを低減させる効果は、高濃度の安定ヨウ素との共存により、血中の放射性ヨウ素の甲状腺濾胞細胞への取組みと競合すること(24、25、26、27、28、30、31)や細胞内へのヨウ素の取込み抑制効果(32)により、放射性ヨウ素の甲状腺濾胞細胞への選択的な集積を減少させる(参考資料-図?U)。また、この効果は、安定ヨウ素剤服用後、少なくとも1日は持続することが認められている(24)。
4.ヨウ素を含む製剤の服用による副作用
4-1ヨウ素に対する過敏症
ヨウ素過敏症は、ヨウ素に対する特異体質を有する者に起こるアレルギー反応である。服用直後から数時間後に発症する急性反応で、発熱、関節痛、浮腫、蕁麻疹皮疹が生じ、重篤になるとショックに陥ることがある。
また、ヨウ素を含む造影剤によるアレルギー反応は、造影剤過敏症として知られている。
さらに、低補体血管炎(Hypocomplementaemic Vasculitis)はヨウ素に過敏である場合があり、ジューリング疱瘡状皮膚炎(Dermatitis Herpetiformis Duhring)は、ヨウ素に過敏であると考えられている(33、34)。
4-2甲状腺機能異常症
(1)血中甲状腺ホルモンの濃度の上昇による甲状腺機能亢進症や、その低下による甲状腺機能低下症では、ヨウ素を含む製剤を長期運用すると、それぞれの病状が悪化するおそれがある(35、36)。
・甲状腺の過形成、多発結節性の腺腫様甲状腺腫を有する者が、ヨウ素を含む製剤を長期連用すると甲状腺機能亢進症を呈することがある。しかし、この病態は、日常的にヨウ素過剰摂取している者には稀である。また、慢性甲状腺炎の経過中に一過性に甲状腺機能亢進症を呈する例があるが、これは要素の過剰な摂取の継続によるものとの見解もある。
・甲状腺機能が性状な慢性甲状腺炎に対して、ヨウ素を含む製剤を長期連用すると、甲状腺機能低下症に陥ることがある。
・新生児にヨウ素を含む製剤を大量服用又は長期連用させると、甲状腺機能低下症を発症させることがある。
・妊婦にヨウ素を含む製剤を大量服用又は長期連用させると、胎盤を通して胎児の甲状腺にヨウ素が移行することにより、胎児の甲状腺機能低下症を発症させることがある。特に新生児及び妊娠後期の胎児における甲状腺機能低下症は一過性であっても、その後、知能の発達に影響を及ぼすことがある(37、38)。
また、新生児が巨大な甲状腺種により窒息した例がある。
・無機ヨウ素の有機化に先天的に以上がある者は、ヨウ素を過剰に摂取すると、甲状腺が肥大し機能低下を発症することがある(海岸性甲状腺種)。
4-3その他の副作用
・肺結核を有する者がヨウ素を含む製剤をすると、ヨウ素は結核組織に集まりやすく、再燃させるおそれがある。
・薬疹(ヨウ素にきび)、耳下腺炎(ヨウ素おたふく)、鼻炎等があるが、いずれも極めて稀である
・嘔吐、下痢等の胃腸症状が認められることがある
・カリウムを含む製剤を用いる時は、腎不全症、先天性筋強直症、高カリウム血症を有する者で血清カリウム濃度の上昇による病状の悪化をきたすことがある
4-4事例に基づく副作用のリスク評価
IAEA SS-109(14)においては、米国での経験をもとに、一日当たりヨウ素量300?rの服用に対する皮膚掻痒、紅斑などの軽症も含めた副作用の発生確率は10-6〜10-7と推定している。この中には、甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症などの副作用が含まれている。ヨウ素予防服用に伴う死亡リスクは3×10-9であると推定されている。
また、チェルノブイリ事故後、甲状腺への放射性ヨウ素の集積を低減するため、ヨウ化カリウムを安定ヨウ素剤として服用したポーランドにおいて得られた経験に基づけば、成人に重篤な副作用が発生する確率は4×10−7、軽度または中程度の副作用が発生する確率は6×10−4である。安定ヨウ素剤を服用した若年者については、重篤な副作用は報告されていない(40)。同時に、嘔吐・下痢等の胃腸症状等が観察されたが、服用により副作用なのか、または、不安とパニック等の影響なのか、その原因については、明らかにされていない(40)。
4-5原子力災害時における安定ヨウ素剤服用による副作用についての考え方
我が国では、従来より、甲状腺機能亢進症治療の手術前に、ヨウ素を含む製剤が使用されてきたが、生命に危険を及ぼす重篤な副作用の報告は殆どない。
また、チェルノブイリ事故時に安定ヨウ素剤の服用を実施したポーランドでは、成人での生命に危険を及ぼす重篤な副作用は極めて低頻度であり、若年者での重篤な副作用は報告されていない(14、40)。同時に、服用後、頭痛、胃痛、下痢、嘔吐、息切れ、皮膚掻痒などが報告されているが、これらの症状の原因は、安定ヨウ素剤の副作用によるものかは不明である。
安定ヨウ素剤の服用に当たっては、放射性ヨウ素の甲状腺への集積を抑制する効果を最大に導き出すとともに、生命に危険を及ぼす重篤な副作用は稀にしか発生しないと推測されているものの、副作用を可能な限り低減する努力が必要である。
このため、
・安定ヨウ素剤の服用に係る決定を行う場合には、服用による利益と不利益を十分に配慮すること
・安定ヨウ素剤の大量服用又は長期連用では副作用の発生のおそれがあることに配慮すること
・安定ヨウ素剤の服用により、生命に危険を及ぼす重篤な副作用の恐れがあるものに対しては、安定ヨウ素剤を服用させないよう配慮すること
・新生児並びに妊娠後期の退治については将来的に知能の発達に悪影響を及ぼす可能性があるので、安定ヨウ素剤の大量服用又は長期連用を避けるよう十分に注意すること
等が必要である。
5.安定ヨウ素剤予防服用に係る防護対策
原子力災害時に放射性ヨウ素が放出され、その放射性ヨウ素の吸入により甲状腺への影響が著しいと予測された場合、放射性ヨウ素の甲状腺への集積を効果的に抑制するため、安定ヨウ素剤を予防的に服用することとする。
その際、安定ヨウ素剤予防服用に係る防護対策は、その効果を最大とするために迅速に対応する必要がある。このため、安定ヨウ素剤予防服用に係る防護対策を開始するための線量のめやすを指標として定め、退避や避難等の他の防護対策とともに、より実効性のあるものとしておく必要がある。
5-1国際機関における安定ヨウ素剤の服用に係る介入レベル等
(1)IAEAでは、実効性の理由から、安定ヨウ素剤予防服用の包括的介入レベルとして回避可能な放射線による甲状腺の被ばく線量100mGyを推奨している(14)。
この「包括的」とは、全ての年齢を統一的に考えることを意味しており、全ての対象者に同一の介入レベルに従って、安定ヨウ素剤を予防的に服用させることを推奨している。また、「回避可能な放射線による甲状腺の被ばく線量」は、防護措置を行わなかった場合に予測される被ばく線量から、防護措置を行った後に予測される被ばく線量を差し引くことにより表される。例えば、防護措置を行わなかった場合に予測される被ばく線量が100mGyとした場合、防護措置として安定ヨウ素剤を放射性ヨウ素の体内摂取前又は直後に服用すると、甲状腺への集積を90%以上抑制できるので、甲状腺の被ばく線量を90mGy以上回避することが可能となる。
なお、最近のIAEAの会議では、甲状腺発がんリスクの年齢依存性を考慮して、若年者に対しては、より低い介入レベルで安定ヨウ素剤を服用させることに理解を示している。(16)。
しかしながら、チェルノブイリ周辺の被爆者のデータは、線量評価等に関して複雑な問題を含んでいることなどから、WHOが推奨する若年者に対するガイドラインを、そのまま現時点で我が国において採用することは、慎重であるべきと考えられる。
5-2我が国における安定ヨウ素剤予防服用に係る防護対策
(1)原子力災害時において放出される放射性ヨウ素に対して、迅速に対応するため、安定ヨウ素剤予防服用に係る防護対策を開始するための線量のめやすを指標として提案する必要がある。
我が国における安定ヨウ素剤予防服用に係る防護対策の指標として、全ての対象者に対し包括的に、放射性ヨウ素による小児甲状腺等価線量の予測線量100mSvを提案する。
予測線量とは、放射性ヨウ素の放出期間中、屋外に居続け、なんらの措置も講じなければ受けると予測される占領のことである。したがって、この予測線量は、防護対策を講じられた個々の周辺住民等が実際に受けるであろう甲状腺等価線量を、相当程度上回るものと考えられる。
5-3安定ヨウ素剤の服用方法
災害対策本部が、安定ヨウ素剤予防服用の措置を講じた場合、誤った服用による副作用を避けること、安定ヨウ素剤を適確に管理すること及び周辺住民等が確実かつ可及的速やかに服用できるようにすることが必要である。このため、実際的には、周辺住民の家庭等に、あらかじめ安定ヨウ素剤を事前に各戸配布するのではなく、周辺住民等が退避し集合した場所等において、安定ヨウ素剤を予防的に服用することとする。この場合、服用、副作用等に備え、医師、保健婦、薬剤師等の医療関係者を周辺住民等が退避し集合した場所等に派遣しておくことが望ましい。
服用に当たっては、後述する「5-4服用対象」において示す内容に沿って実施されることとなるが、特に、若年者や妊婦への対応及び副作用について留意する必要がある。すなわち、放射性ヨウ素の内部被ばくによる若年者の甲状腺がんの発生確率が成人に比べて有意な増加が認められていること及び胎児の被ばくを考慮して、若年者や妊婦の服用を優先させる。
5-4服用対処
(1)年齢
18歳未満では、放射線被ばくにより誘発される甲状腺がんの発生確率は成人に比べて有意な増加が認められていること、40歳以上では、放射線被ばくにより誘発される甲状腺発ガンのリスクがないことから、安定ヨウ素剤の服用は、40歳未満の者を対象とする。
特に乳幼児は、甲状腺濾胞細胞の分裂が成人に比べて活発であり、放射線によるDNA損傷の影響が危惧され、安定ヨウ素剤予防服用の効果もより大きいことを十分に認識する必要がある。
1.ヨウ素に対する過敏症
(イ)ヨウ素過敏症の既往歴のある者は、安定ヨウ素剤を服用しない。
(ロ)造影剤過敏症には、種々の要因による過敏性が含まれていて、その一部がヨウ素過敏症であると考えられている。しかしながら、造影剤過敏症に含まれる要素化敏捷の割合について推測することは可能ではない。
したがって、全ての造影剤過敏症の者が、安定ヨウ素剤の服用により、ヨウ素過敏症症状を発症するとは限らないが、造影剤過敏症の既往歴のある者は、安定ヨウ素剤を服用しない。
(ハ)低補体性血管炎を有する者はヨウ素に過敏である場合があるため、その既往歴のある者又は治療中の者は安定ヨウ素剤を服用しない。また、ジューリング疱疹状皮膚炎を有する者はヨウ素に過敏であると考えられるので、その既往歴のある者又は治療中の者は安定ヨウ素剤を服用しない。ただし、これらの疾患は、我が国では、稀であるとされている(33、34)。
明らかな甲状腺機能亢進症と甲状腺機能低下症の甲状腺機能異常症を有する者は、安定ヨウ素剤予防服用により、それぞれの病状の更なる悪化を引き起こすおそれがある。したがって、甲状腺機能異常症の治療中の者は、安定ヨウ素剤を服用しない。
結核を有する者が安定ヨウ素剤を服用すると「ヨウ素は結核組織に集まりやすく、再燃させるおそれがある。」とされているが、再燃を懸念するよりも、安定ヨウ素剤服用により放射性ヨウ素の吸入による甲状腺発がんリスクを軽減させるほうが有益と考えられる。したがって、原子力災害時には、肺結核を有する者も、下記の服用回数及び服用量に基づき安定ヨウ素剤を服用する。
安定ヨウ素剤を服用した新生児については、甲状腺機能低下症を発症することがあるので、その早期発見・治療のために、甲状腺機能をモニターする必要がある。
妊婦については、妊娠第1期では、妊婦地震の甲状腺が胎盤由来の繊毛由来性腺刺激ホルモンにより交叉刺激されている。このため、放射性ヨウ素の集積が高くなることが予測され、安定ヨウ素剤の服用による放射性ヨウ素の甲状腺への集積を抑制することが必要である。妊娠第2期、3期では、放射性ヨウ素が胎盤を通過し、胎児が被ばくするのでやはり安定ヨウ素剤の服用が必要となる(16)。
授乳婦については、下記の服用回数及び服用量に基づき安定ヨウ素剤を服用する。授乳婦が摂取したヨウ素の約四分の一は、母乳へ移行するといわれているが、授乳児については、母乳からの放射性ヨウ素の移行や安定ヨウ素の摂取を正確に見積もれないため、授乳を中止して人工栄養に替え、安定ヨウ素剤を服用させる。
5-5服用回数及び服用量
(1)服用回数
安定ヨウ素剤予防服用については、その効果を最大とするため、安定ヨウ素剤の配布後、対象者は直に服用するものとする。服用回数は、過剰は安定ヨウ素剤の服用による副作用を考慮し、原則1回とする。1回目の服用は、安定ヨウ素剤の効果が1日は持続することが認められていることより、2日目となるが、2日目に安定ヨウ素剤服用を考慮しなければならない状況では、避難を優先させることが必要である。
WHOの推奨量(17)や各国の介入レベル等(参考資料?V)を参考にしつつ、過剰な安定ヨウ素剤の服用による副作用を考慮し、服用量は、ヨウ素量として、新生児12.5?r、生後1か月以上3歳未満25?r、3歳以上13歳未満50?r、13歳以上40歳未満100?rとする。40歳以上は服用する必要はない。
服用に当たっては、原子力災害時に備え準備されている医薬品ヨウ化カリウムの丸薬を分割するのは適当でないため、安定ヨウ素剤として医薬品ヨウ化カリウムの原薬(粉末)を水(減菌蒸留水又は精製水)に溶解し、それぞれの年齢に応じた正確な服用量としたものを用いることが現時点では適当である。ただし、13歳以上40歳未満の服用については、安定ヨウ素剤として医薬品ヨウ化カリウムの丸薬が既に準備されている場合、丸薬(1丸はヨウ素量として38?r、ヨウ化カリウム量として50?rを含む。)2丸分であるヨウ素量76?rでも、十分な効果はあると考えられるため(25)
、丸薬2丸を用いてもよい。
表 安定ヨウ素剤予防服用量 | ||
---|---|---|
対象者 | ヨウ素量 | ヨウ化カリウム量 |
新生児 | 12.5?r | 16?r |
生後1か月以上3歳未満 | 25?r | 32?r |
3歳以上13歳未満 | 50?r | 65?r |
13歳以上40歳未満※ | 100?r | 130?r |
(注1)服用に当たっては、医薬品ヨウ化カリウムの原薬(粉末)を水(減菌蒸留水又は精製水)に溶解したものを用いることが適当である。
(注2)40歳以上については、放射性ヨウ素による被ばくによる甲状腺がん等の発生確率が増加しないため、安定ヨウ素剤を服用する必要はない。
医薬品ヨウ化カリウム、減菌蒸留水又は精製水等は、原子力災害時に備え、あらかじめ準備し、的確に管理するとともに、それらを使用できる期限について注意する。
(1)原子力災害時に放出された放射性ヨウ素の吸入による甲状腺への影響が著しいと予測された場合、安定ヨウ素剤を予防的に服用すれば、甲状腺への放射性ヨウ素の集積を効果的に抑制し、甲状腺への障害を低減できることが報告されている。このため、災害対策本部の判断により、屋内退避や避難の防護対策とともに安定ヨウ素剤を予防的に服用することとする。
(2)放射性被ばくによる甲状腺への影響は、甲状腺がんと甲状腺機能低下症があり、被ばく後の甲状腺がんの発生確率は、乳幼児の被ばく者で増加する場合があるが、40歳以上では増加しないため、年齢に応じて、安定ヨウ素剤の服用対象を定める必要がある。これに対し、甲状腺機能低下症はしきい線量以上の被ばくで生じるため、甲状腺機能低下症に対する安定ヨウ素剤予防服用については、しきい線量の概念を導入することとする。
(3)安定ヨウ素剤の服用による副作用は稀であるが、副作用を可能な限り低減させるため、年齢に応じた服用量を定めるとともに、服用回数は原則1回とし、運用は出来る限り避ける。
(4)安定ヨウ素剤の服用により、重篤な副作用のおそれがある者には、安定ヨウ素剤を服用させないよう配慮し避難を優先させる。
(5)安定ヨウ素剤の服用については、その効果を最大とするため迅速に対応する必要がある。このため、安定ヨウ素剤予防服用に係る指標を定め、屋内退避や避難等他の防護対策とともに、より実効性のある防護対策を定めておく必要がある。
(6)防災業務関係者は、その防災業務の内容、甲状腺がんと甲状腺機能低下症の発生リスクを考え合わせ、安定ヨウ素剤を予防的に服用することを考慮する。
これらの考え方に基づいた「安定ヨウ素剤予防服用に当たって」を次項に示す。
5-6ヨウ素含有食品等による効果について
ヨウ素は種々の食品に微量ではあるが含まれており、特に海産物に多く含まれている。この中でコンブは特異的に多く(41、42)、コンブ乾燥重量100g当たり、100〜300?rのヨウ素を含んでいる。その他ワカメ7〜24?r/100g乾燥重量、ヒジキ20〜60?r/100g乾燥重量、海産魚類0.1〜0.3?r/100g生重量である。
これらの海産物の摂取による日本人のヨウ素摂取量の平均は、1〜3mgとされている。コンブについては、通常、摂取するスープ一杯で5?r、根コンブを摂取した場合は30?r程度となる(22)。一方、コンブを摂取しない場合は、一日当たり0.1?r程度となる(22)。さらに、2週間程度、コンブを摂取しないと、放射性ヨウ素の甲状腺への集積を低減する効果はなくなる
(22)。
日本人が通常の食生活で摂取するヨウ素量は、0.1?r〜30?rである(22)。この範囲では、日本人の甲状腺のホルモン分泌機能は正常である(22)。ただし、我が国において、コンブから毎日ヨウ素を30?r程度継続して摂取した場合、甲状腺種や甲状腺機能低下症を発症することが報告されている(22)。
コンブにより10〜30?rのヨウ素を一度に摂取することは可能ではあるが、ヨウ素含有量が多いコンブ等の食品を摂取することにより、放射性ヨウ素の甲状腺への集積を抑えることについては、
・コンブでは、大量に経口摂取した上で、咀嚼・消化過程が必要でヨウ素の吸収までに時間がかかり、かつ、その吸収も不均一である
・対象者が、集団的に、迅速にコンブからヨウ素を摂取することは現実的に困難である
等の理由により、原子力災害時における放射性ヨウ素の甲状腺への集積を抑制する措置として講じることは適切ではないと考えられる。
なお、各家庭にあるヨウ素を含むうがい薬や外用薬は、経口服用目的には安全性が確認されておらず、また、ヨウ素含有量が少なく、原子力災害時における放射性ヨウ素の甲状腺への集積を速やかに抑制する効果は乏しいため、これらのうがい薬や外用薬を使用してはならない。
5-7防災業務関係者への安定ヨウ素剤予防服用について
放射性誘発甲状腺がんの発生リスクは40歳未満に限られ、安定ヨウ素剤の予防服用により、そのリスクを低減できるため、40歳未満の防災業務関係者についても、その防災業務の内容に応じて、安定ヨウ素剤予防服用を考慮する必要がある。ただし、ヨウ素過敏症の既往歴のある者、造影剤過敏症の既往歴のある者、低補体性血管炎の既往歴のある者又は治療中の者、ジューリング疱疹状皮膚炎の既往歴のある者又は治療中の者、甲状腺機能異常症の治療中の者は安定ヨウ素剤を服用できないため、これらの者を防災業務関係者とする場合、その防災業務のないように十分配慮する必要がある。
なお、甲状腺機能低下症を来たすと予想される甲状腺等価線量として、IAEA及びWHOにより5Gyが提案されている(14、15)。しかし、この甲状腺等価線量5Gyは、計算上、実効線量として250mSvであり、防災業務関係者が災害の拡大の防止及び人命救助等、緊急かつやむを得ない作業を実施する場合において許容される実効線量100mSvをはるかに超えており、防災業務関係者といえども、この線量を被ばくすることは許されない。
ただし、防災業務関係者のうち、原子力施設内において災害に発展する事態を防止する措置等の災害応急対策活動を実施する者で、かなりの被ばくが予測されるおそれがある場合は、甲状腺等価線量を瞬時に測定できる計測器がないこと、防護マスク等の装備の機能等を考慮しつつ、甲状腺機能低下症を予防するため、40歳以上の防災業務関係者に対して、念のため、安定ヨウ素剤服用について、災害対策本部等において、考慮することとする。この場合も、ヨウ素過敏症の既往歴のある者、造影剤過敏症の既往歴のある者、低補体性血管炎の既往歴のある者又は治療中の者、ジューリング疱疹状皮膚炎の既往歴のある者又は治療中の者、甲状腺機能異常症の治療中の者は安定ヨウ素剤を服用させないよう配慮する。
5-8安定ヨウ素剤予防服用の理解を得るために
安定ヨウ素剤予防服用については、周辺住民等にとって精神的な負担となることも考えられるため、他の防護対策と同様に、原子力災害時に混乱と同様を起こすことなく、災害対策本部の指示に従って迅速に対応できるよう、普段から安定ヨウ素剤の服用について理解を得ておく必要がある。このため、周辺住民等、特に防災対策を重点的に充実すべき地域の範囲の周辺住民等への情報提供を行うことが重要である。
情報提供に当たっては、原子力施設の安全性の仕組みの概要、安定ヨウ素剤の服用方法、安定ヨウ素剤の効用及び副作用について周辺住民等が理解しやすい内容として行わなければならないが、その際、パンフレット、ビデオ、インターネット等の多様な手段により周知を図ることが有効である。さらに、学校、職場等の場を活用し、実態に則した情報提供を図ることが有効であると考えられる。
また、40歳以上では、放射線被ばくにより誘発される甲状腺発がんのリスクがないことから、安定ヨウ素剤を服用する必要がないことを周知しておくことも重要である。
まとめ
広島、長崎の原爆、マーシャル諸島における核爆発実験、チェルノブイリ原子力発電所事故等の調査結果及びヨウ素と人に係る生物学的、病理学的な知見を踏まえ、放射性ヨウ素による甲状腺の内部被ばくに対する防護対策について、以下の基本的な考え方をまとめた。
安定ヨウ素剤予防服用に当たって
(1)安定ヨウ素剤予防服用に係る防護対策の指標
全ての対象者に対し、放射性ヨウ素による小児甲状腺等価線量の予測線量100mSvとする。
(2)服用対象者
40歳未満を対象とする。
ただし、以下の者には安定ヨウ素剤を服用させないよう配慮する。
・要素過敏症の既往歴のある者
・造影剤過敏症の既往歴のある者
・低補体性血管炎の既往歴のある者又は治療中の者
・ジューリング疱疹状皮膚炎の既往歴のある者又は治療中の者
・甲状腺機能異常症の治療中の者
(3)服用回数
1日/1回を原則とする。
なお、2日目の服用を考慮しなければならない状況では、避難を優先させること。
(4)服用量及び服用方法
以下の表に示す。
対象者 | ヨウ素量 | ヨウ化カリウム量 |
---|---|---|
新生児 | 12.5?r | 16?r |
生後1か月以上3歳未満 | 25?r | 32?r |
3歳以上13歳未満 | 50?r | 65?r |
13歳以上40歳未満※ | 100?r | 130?r |
(注1)服用に当たっては、医薬品ヨウ化カリウムの原薬(粉末)を水(減菌蒸留水又は精製水)に溶解したものを用いることが適当である。
(注2)40歳以上については、放射性ヨウ素による被ばくによる甲状腺がん等の発生確率が増加しないため、安定ヨウ素剤を服用する必要はない。
医薬品ヨウ化カリウム、減菌蒸留水又は精製水等は、原子力災害時に備え、あらかじめ準備し、的確に管理するとともに、それらを使用できる期限について注意する。
文献
B=Y0-(Y+R+X+Ai+As-Bc)
B:あらゆる対策に関連する正味の便益 ここでは、上述式を用い、以下の条件に基づいて安定ヨウ素剤服用における介入レベルを試算する。
(1)ヨウ素摂取による甲状腺発がんリスクについて Specific Risk Estimate=R・F・S・A・Y・L
R:外部被ばくを受けた子供(男女を含む。)の推定値(過剰リスク2.5人/rad・106人)
?U.リスクに基づく介入レベルの試算について
IAEA SS-109(1)では、不利益と利益の釣り合い(リスク・ベネフィットバランス)を考慮した次の計算式により退避や非難に関する介入レベルについて算出している。
Y0:対策を講じないことによる放射線の損害
Y:対策を講じた場合に残存する放射線の損害
R:防護対策をとることにより生じる身体的リスク
X:防護対策を実施するために必要な資源と努力
Ai:防護対策により生じる個人の不安と混乱
As:防護対策により生じる社会の混乱
Bc:防護対策により得られる安心の便益
1.NCRP Rep.No.80(電離放射線による甲状腺がんの誘発(1985)(2)では、外部被ばく及び放射性ヨウ素(ヨウ素―125、ヨウ素―131、ヨウ素―132、ヨウ素―133、ヨウ素―135)の吸入による甲状腺被ばくとそのリスクについてヒト及び動物実験データに基づき、幅広く論じており、絶対リスクモデルを用いて甲状腺がんによる死亡の生涯リスク推定値7.5×10-4/Gyを算出している。これは、北アメリカで6rad(60mGy)〜1500rad(15Gy)のX線被ばくを受けた子供(男女を含む。)の甲状腺発がんリスク推定値で、年当たりの過剰リスクを一般人100万人について2.5人/rad(2.5×10-4/Gy)に基づいている。このリスク係数を用いて、次式により、18歳以下の男女及び19歳以上の男女について生涯リスクを算出している。
F:線量効果低減係数(外部被ばく及びヨウ素−132、ヨウ素−133、ヨウ素−135の吸引は1、ヨウ素−125、ヨウ素−131の吸入は1/3)
S:性別因子(女性4/3、男性2/3:女性は男性の2倍)
A:年齢因子(18歳以下=1、19歳以上=1/2)
Y:リスクにさらされる予想平均年数(Total(Life time)years)(百万人当たりの集団に対して:18歳以下男性=9.79、女性=12.15、19歳以上男性=8.61、女性=9.38)
L:致死係数(最大値として1/10)
19歳以上 | 18歳以下 | |||||||
総リスク | 致死リスク | 総リスク | 致死リスク | |||||
男 | 女 | 男 | 女 | 男 | 女 | 男 | 女 | |
?T−125、?T−131の吸入による内部被ばく | 2.74 | 6.80 | 0.274 | 0.680 | 4.83 | 10.5 | 0.483 | 1.05 |
?T−132、?T−133、?T−135の吸入による内部被ばく、及びX線、γ線による外部被ばく | 8.22 | 20.4 | 0.822 | 2.04 | 14.5 | 31.5 | 1.45 | 3.15 |
また、上式を用いて、男女平均、年齢平均、リスクにさらされる年数を40年(被ばくから発症までの最長年数)及び致死係数1/10を用いて、外部被ばくによる甲状腺の総合的な生涯致死リスクを、一般人100万人について7.5/rad(7.5×10-4/Gy)と算定している。UNSCEAR(1988b)(3)とBEIR V(NAS)(4)はともに甲状腺に対する最も新しいリスク推定値としてNCRP Report No.80(1985)(2)が述べたものを採用している。これらに基づき、ICRP Publ.60(1991)(5)は、甲状腺がんによる死亡の生涯リスク推定値7.5×-4/Gyを採用し、甲状腺がんの致死率は0.1といわれているので、過剰リスクは7.5×-3/Gyとなるとしている。
2.Ron,E.らの報告(6)では、7つの疫学データを集約し、総数12万人中約半数の被爆者の追跡調査データをまとめ、その内700例近い甲状腺がんの発生を年齢、性別、甲状腺被ばく線量からリスク計算している。5つのコホート研究および2つの症例対象研究のデータを再解析し、15歳未満の被爆者の過剰リスクは4.4×10−4/Gy/yであるとした。広島、長崎における原爆被ばく者の追跡調査では、20歳以上のリスクは小さく、40歳以上では実質上ゼロとしている。このリスク係数を用いて、被ばくから発症までの最長年数を約50年(広島、長崎の追跡調査から)、WHOガイドライン(1999)(7)を参考に年齢因子(子供=1、大人=1/2)及びリスク年数因子(子供=1、大人=1/2)を考慮すると、甲状腺がんの平均的過剰リスクは1.2×10−2/Gyとなる。
3.Jacob,P.らの報告(8)では、チェルノブイリ事故の影響を受けたベラルーシ、ウクライナ、ロシア連邦における0〜15歳の子供のリスクは2.3×10−4/Gy/yとしている。前述と同様に、このリスク係数にリスク年数50年、年齢因子、リスク年数因子を考慮すると、甲状腺がんの平均的過剰リスクは6.5×10sup>−3/Gyとなる。
(2)安定ヨウ素剤の服用による副作用リスク
甲状腺がんは現在の医療をもってすれば基本的には非致死性の疾患であるため、安定ヨウ素剤の副作用リスクを考えるにあたって、極めて重篤な副作用のみを考慮することは適切でない。したがって、成人に対して軽度または中程度の症状を呈する副作用のリスク、6×10-4を用いる。
(3)その他
一人あたりの安定ヨウ素剤の購入費、備蓄費は安価であるので考慮しない。また、安定ヨウ素剤配布については他の対策と同時期に併せて実施するため、これにかかる費用等は考慮しない。
以上の(1)〜(3)を踏まえ、IAEA SS−109の手法に基づき、正当化される介入レベルDを計算する。
正味の便益Bが正である必要があることから、
B=Y0-(Y+R+X+Ai+As-Bc)≧0となる。
Y=DGy×(1Gy当たりの甲状腺生涯リスク)
Y=0(残存するリスクは無いと仮定)
R=6×10−4(安定ヨウ素剤を服用することにより生じる副作用リスク)
Ai=0、As=0、X=0、Bc=0、と仮定する。
前述の(1)の1.、2.、3.の各々の報告を基に、計算すると、
1.D×7.5×10−3/Gy−6×10−4≧0 故にD≧0.08Gy
2.D×1.2×10−2/Gy−6×10−4≧0 故にD≧0.05Gy
3.D×6.5×10−3/Gy−6×10−4≧0 故にD≧0.09Gy
となる。
以上から、介入レベルは50mGy〜90mGy以上となる。このレベルは、外部被ばくあるいはヨウ素−132、1336、135の吸入による内部被ばくに対する値であるが、NCRP Rep.80によれば、ヨウ素−125、131の吸入による内部被ばくに対してはこの3倍の値150mGy〜270mGy以上が介入レベルになる。
用語集
[ア]行
IAEA SS−109 | 国際原子力機関(IAEA)が"Intervention Crireria in a Nuclear or Radiation Emergency"と題して1994年に出版したSafety seriesの一つである。原子力事故や放射線事故時における緊急時計画と対応、及び介入の基本原則を述べている。事故時に公衆を防護するための措置として、屋内退避、避難、ヨウ素剤投与、移住、飲食物の摂取制限等に対する考え方とそれらの措置を実施するための介入レベル(線量基準)について詳細に記述している。 |
ICRP Publ.30 | 国際放射線防護委員会(International Comission on Radiological Protection:ICRP)の主委員会が1978年7月に採択し、その後に出版された"Limits for Intakes of Radionuclides by Workers"に関する報告書であり、Part1,2,3から成る。内部被ばくに関する線量評価モデルとしてコンパートメントモデルを採用しており、呼吸器系、胃腸管、骨に関する線量算定モデルの他、放射性雲中のサブマージョンによる線量算定モデルを示している。また、95の元素について、その体内動態(代謝、分布、残留等)及び年摂取限度、誘導空気中濃度を示している。なお、これらPart1,2,3の補遺が別途、出版されている。 |
ICRP Publ.56 | 国際放射線防護委員会(ICRP)の主委員会が1989年4月に採択し、その後に"Age-dependent Doses to Members of the Public from Intake of Radionuclides:Part1"と題されて出版されたものである。公衆の内部被ばくを評価するため、経口摂取による体内動態モデルを見直し、より詳細なモデルを提示している。また、公衆の各年齢群(3ヶ月、1歳、5歳、10歳、15歳、成人)毎の預託等価線量係数及び預託実効線量係数を示している。 このような公衆に対する動態モデルや吸入摂取及び経口摂取による各年齢群毎の線量係数については、その後出版されたPubl.67,69,71,72にも掲載されている。 |
ICRP Publ.60 | 国際放射線防護委員会(ICRP)の主委員会が199年11月に採択し、その後に出版された"Recommendations of the International Comission on Radiological Protection,adopted by the Commission on November 1990"である。国際放射線防護委員会(ICRO)は1950年の発足以来、基本勧告としてPubl.1(1959)、Publ.6(1964)、Publ.9(1966)、Publ.26(1978)を出版してきたが、今回の勧告はこれらに代わるものであり、放射線防護の基礎となる基本原則についての指針を示している。内容は、放射線防護に用いられる線量の計測、放射線の生物学的影響、放射線防護の概念的枠組み、被ばくの種類や介入レベルに関する防護の体系等で構成されている。 |
ICRP Publ.66 | 国際放射線防護委員会(ICRP)の主委員会が1993年9月に採択し、その後に出版された"Human Respiratory Tract Model for Radiological Protection"である。人の呼吸気道モデルを被ばく評価の観点から記述したものであり、Publ.30の呼吸器系モデルに代わるものである。放射性物質の吸入による被ばくを評価するため、呼吸気道を5つの領域に分割して各領域への物質沈着モデルを構築するとともに、クリアランスモデルにより血液への吸収、リンパ組織への移行、胃腸管への移行を示し、線量算定モデルを構築している。また、放射線作業者と公衆(3ヶ月、1歳、5歳、10歳、15歳、成人)について、肺機能に関するデータ、呼吸率等のデータを示している。 |
安定ヨウ素剤 | 原子力防災資機材の一つであり、甲状腺への放射性ヨウ素の選択的集積を抑制するために服用する。ここでは、原子力災害時に備え準備されている医薬品ヨウ化カリウムの原薬(粉末)を水に溶解した水溶液や医薬品ヨウ化カリウムの丸薬を用いる。なお、安定ヨウ素剤の安定とは、放射性に対する用語で、放射性崩壊をしないということを意味している。 |
疫学調査 | 病気の発生原因やその対策を推論するために、疫病を集団として調査すること。疫学調査は、患者発見のために各種検査を利用する調査で、この調査によって病気あるいは症例と、考えられる原因との間の因果関係を明らかにし、治療の方法の確立に役立てることができる。疫学調査では、その症例を発見して治療することよりも、その疾患についての有病性、発生年、さらにいくつかの関連要因の推移について調査することを目的とする。放射線被ばく影響調査にもこの手法が応用される。 |
NCRP Rep No 80 | 米国放射線防護測定審議会(National Council onRadiation Protection and Measurements:NCRP)が1985年に"Induction of Thyroid Cancer by Ionizing Radiation"と題して発表された勧告書である。X線やγ線による外部被ばく及び甲状腺に沈着した放射性物質により誘発される甲状腺ガンのリスクを、リスクモデル、発がんモデル、放射性ヨウ素を用いた治療経験、動物実験データ等を広く集め、詳細に検討したものである。 |
FDA | 米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)。薬品の承認等を行う政府付属機関。 |
[カ]行
回避可能な放射線による甲状腺の被ばく線量 | 回避可能な放射線による甲状腺の被ばく線量は、防護措置を行わない場合に予測される線量から、防護措置を行った場合の予測される線量を差し引いた線量である。放射線防護措置のリスク・ベネフィットバランスを考慮する場合、回避可能な放射線による甲状腺の被ばく線量により得られる便益と防護措置に伴う損失のバランスを図る必要がある。 放射性ヨウ素の放出に対する防護措置の一つとして、安定ヨウ素剤予防服役用がある。放射性ヨウ素の吸入前又は直後に、安定ヨウ素剤を予防的に服用すると、放射性ヨウ素の甲状腺への集積の90%以上を抑制できる。吸入後4時間では、50%を抑制できる。 放射性ヨウ素の吸入による甲状腺等価線量の回避可能な放射線による甲状腺の被ばく線量は、例えば緊急時モニタリングにより求めた大気中の放射性ヨウ素濃度から計算された甲状腺等価線量に、安定ヨウ素剤服用により回避できる上記の90%以上あるいは50%を乗じることにより求めることができる。 |
確定的影響 | 個人がある線量(しきい線量)を超えて被ばくした場合に現れる身体的影響であり、低い線量では影響のないことがはっきりしている。しきい線量を超えると線量の増加とともに発生率が増加し、また、影響の程度すなわち重篤度も増加する。さらに高い線量に達すると被ばくしたすべての人に影響が現れる。例えば、皮膚障害、白内障、組織障害、個体死等がある。 |
核燃料施設 | 核燃料物質の加工、再処理、使用、廃棄などを行う施設を総称して核燃料施設という。
(1)加工施設とは、核燃料物質を原子炉に燃料として使用できる形状又は組成とするために、これを物理的又は化学的方法により処理するための施設をいう。 (2)再処理施設とは、原子炉に燃料として使用した核燃料物質から核燃料物質その他の有用物質を分離するために、使用済燃料を化学的方法により処理するための施設をいう。 |
核分裂反応 | 原子核とほかの粒子(例えば原子核、中性子、陽子、光子等)との衝突によって起こる原子核反応(錯乱、吸収、分裂等)の一つが核分裂反応である。これは主としてウラン、トリウム、プルトニウムのような重い原子核が同じ程度の質量をもつ2つ以上の原子核に分裂する現象である。1核分裂当たり約200MeV程度のエネルギーが放出されるので原子力として利用される。核分裂のときに2〜3個の中性子やγ線、β線を放出することが多い。核分裂しやすい物質は中性子により核分裂反応の連鎖が起こる可能性がある。原子炉における基本的な核反応である。 |
確率的影響 | 被ばくにより必ず発生する影響ではなく、被ばく線量が多くなるほど発生する確率が増加するものをいい、がんや遺伝的影響(被ばく者の生殖腺が遺伝的疾患を有し、子孫に影響が現れること)をいう。 これらの影響の起こる確率が線量と比例関係にあり、しきい線量が存在しないと仮定されている影響である。 |
希ガス | 周期表の0族元素ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、ラドン(Rn)の総称である。地表及び大気中に含まれる量が非常に少ないので、このように呼ばれる。いずれも無味無臭、無色で、1原子分子の気体(常温)である。融点、沸点は低い。原子最外殻に非常に安定な電子配置を持つために化学的に極めて安定(不活性)で、元素相互または他の元素と化合しにくい。このため不活性ガスとも呼ばれる。 |
吸収線量 | 物質によって吸収された電離放射線エネルギーであり、記号Dで表され、微小体積要素(dv)中の物質に吸収されたエネルギー(dE)についてD=dE/dvで定義される。 単位質量(kg)の物質に吸収された放射線のエネルギー(J)の単位で表され、この単位にグレイ(Gr)という呼び名が与えられている。従来の単位1radは、0.01Gyに当たる。 |
緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム (SPEEDIネットワークシステム) | このシステムは、地表の影響を考慮して、放出源情報、気象情報等を基にして、放射性雲(プルーム)の移動拡散の状況を計算し、希ガスからの外部被ばくによる線量、ヨウ素の吸入による甲状腺等価線量等をコンピュータの画面上に図示することができる。 このシステムでは、緊急事態が発生したサイトに係る情報(放出核種、放出量等)、各地方公共団体の連続モニタのシステムの気象観測情報、気象庁のアメダス情報等を入力することにより、6時間先までの風向・風速の統計的予測等の処理と、それに基づく放射性雲の移動拡散の状況を計算する。緊急時には、文部科学省からの指示により計算結果の2次元表示等を行い、原子力災害対策本部等の関係機関においてこれらを活用することができる。 |
緊急時モニタリング | 原子力施設において、放射性物質又は放射線の異常な放出あるいはそのおそれがある場合に、周辺環境の放射性物質又は放射線に関する情報を得るために特別に実施される環境モニタリングを「緊急時モニタリング」といい、原子力災害時に、迅速に行う第1段階のモニタリングと周辺環境に対する全般的影響を評価する第2段階のモニタリングからなる。 |
緊急被ばく医療 | 放射線による被ばくや放射性物質による汚染や被ばく患者に対する医療のこと。平成13年6月の原子力安全委員会の報告書「緊急被ばく医療のあり方について」において、「いつでも、どこでも、誰でも最善の医療を受けられる」という被ばく医療の基本理念、緊急被ばく医療体制、医療情報とネットワーク、搬送体制、被ばく医療に係る人材育成等について示されている。 |
原子力災害対策特別措置法 | 平成11年12月公布。平成11年9月30日に発生したウラン加工工場の臨界事故を契機に制定され、原子力災害に対する対策の強化を図ることを目的としている。 臨界事故の反省を踏まえて、初期対応の迅速化、国、地方公共団体及び原子力事業者との連携強化、国の対応機能の強化や原子力事業者の責務の明確化等を柱としている。これにより、原子力災害の予防に関する原子力事業者の責務、原子力緊急事態における内閣総理大臣による原子力緊急事態宣言の発出及び原子力災害対策本部の設置等、原子力災害に関する事項について特別な措置が講じられることになる。 |
原子力施設等の防災対策について(防災指針) | 原子力施設等の防災活動をより円滑に実施できるよう原子力防災対策の技術的、専門的事項について、原子力安全委員会が、取りまとめたもの。平成12年5月には、原子力災害対策特別措置法との総合性を踏まえ改訂された。また、平成13年3月には、ICRP1990年勧告の取入れに伴い改定された。さらに、平成13年6月には、緊急被ばく医療をより実効性のあるものとするため改訂された。 |
原子力施設等防災専門部会(防災部会) | 原子力安全委員会に設置された専門部会のひとつ。緊急被ばく医療に対する検討の重要性等をも踏まえ、原子力施設等における災害対策に関する課題について、より的確かつ総合的に対応するため、従来の原子力発電所等周辺防災対策専門部会を再編し、平成13年6月に設置された。 |
高カリウム血症 | カリウムを含む電解質液などの過剰投与、カリウムの排泄障害、あるいはカリウムの細胞外への異常な移動等により、血清カリウム濃度5.0mEq/Lを超える状態。 |
交叉刺激 | 一つのホルモンは本来、ある固有の組織に特異的な機能変化をもたらすが、ホルモンの種類によっては、ホルモン間やその受容体の間での共通構造をもつために、複数の組織の機能変化をもたらすことがあり、これを交叉刺激という。 |
甲状腺 | 内分泌腺の一つ。喉頭の前下部、器官の両側に位置し、色調は帯黄赤色を帯び馬蹄鉄状の形をしている。身体の発育及び新陳代謝に関係あるホルモンを分泌する。甲状腺ホルモンの原料がヨウ素であり、このホルモンが欠乏すると、発育障害や粘液水腫を起こし、過剰になると甲状腺機能亢進症を起こす。甲状腺はヨウ素を多く含んでおり、放射性ヨウ素が体内に取り込まれると、他の臓器に比べ選択的に甲状腺に集積する。 |
甲状腺過形成 | 甲状腺の大きさが増す状態で通常は甲状腺細胞の複製や肥大に起因する。下垂体から過分泌される甲状腺刺激ホルモンに甲状腺が刺激され、甲状腺腺細胞のホルモン合成が盛んになり、甲状腺が腫大している病態をいう。ヨウ素欠乏時などにみられる。 |
甲状腺がん | 病理学的には、乳頭腺癌、濾胞腺癌、未分化癌、髄様癌に分類される。放射性物質シンチグラムの欠損像や結節の触診、軟X線による石灰沈着像、細胞診等で判断する。 |
甲状腺機能亢進症 | 代謝亢進と甲状腺ホルモンの血清レベルの上昇を特徴とする。いくつかの特定の疾患を包括する臨床状態をいう。 |
甲状腺機能低下症 | 甲状腺ホルモン欠乏の特徴的な臨床反応。種々の原因で起こるが、一般的なものは、通常慢性甲状腺炎に続発する自己免疫性疾患である。び慢性あるいは結節性向上腺種により外に固い甲状腺種や、または、後年に疾患が進行して、廃絶した、萎縮し繊維化した甲状腺となる場合もある。 |
甲状腺シンチグラフィー | シンチグラフィーとは、人体などに放射性同位元素(RI)で標識した化合物をトレーサとして投与し、それが集積した臓器や組織の放射能を外部から測定し、その分布を写真黒化の濃淡あるいはカラー画像として表示する検査法である。放射能はシンチレーション計数管又は、ガンマカメラにより測定する。得られた画像をシンチグラムという。甲状腺シンチグラフィーは、甲状腺に選択的に取り込まれる放射性要素を経口投与し、経時的に頸部を撮像することで甲状腺の機能や形態を調べ、病気の診断を行う。現在はベータ(β)線を放出するヨウ素-131にかわり、ガンマ(γ)線のみを放出するヨウ素-123が使用されている。 |
甲状腺腺細胞 | 甲状腺組織で甲状腺ホルモンを合成する上皮細胞である。 |
甲状腺ホルモン | 内分泌腺の一つの甲状腺から分泌されるホルモン。2つのチロシン残基にヨード3又は4個含まれる化学構造が特徴であり、身体の発育及び新陳代謝に必要なホルモンである。 |
国際原子力機関(IAEA) | 国際原子力機関(International Atomic Energy Agency:IAEA)は、国際原子力機関の憲章に定められた(1)世界平和・健康および繁栄のための原子力の貢献の促進増大と(2)軍事転用されないための保障措置の実施という2つの大きな目的に基づいて1957年7月に設立された。国際原子力機関の組織機構は、総会、理事会、事務局からなっており、1999年11月現在の加盟国は、131カ国である。憲章に定められた国際原子力機関の任務は7項目あり、これら任務を果たすため、(1)開発途上国への技術協力、原子力発電の安全対策等、原子力の平和利用を促進するために必要な支援活動を行うとともに、(2)国際原子力機関憲章および核兵器不拡散条約(NPT)に基づき国際原子力機関と関係国とが保障措置協定を締結し、これによって軍事転用されないように保障措置を実施している。 |
国際放射線防護委員会(ICRP) | 専門家の立場から放射線防護に関する勧告を行う国際組織である。 この組織の全身は1928年に作られた国際X線ラジウム防護委員会(IXROC)であり、1950年に現在の名称となった。ICRPが出す勧告は現在も国際原子力機関(IAEA)の安全基準、世界各国の放射線障害防止に関する法令の基礎にされている。ICRPは、主委員会と4つの専門委員会(放射線影響、誘導限度、医療放射線防護、勧告の実務適用)からなる。 |
[サ]行
再燃 | ここでは、一時おさまっていた病巣が、再び悪化することをいう。 |
若年者 | 18歳未満の者を指す。 |
JCO事故 | 平成11年9月30日に、(株)ジェー・シー・オー東海事業所のウラン転換試験棟において発生した臨界事故。原因は、本来であれば溶解塔で硫酸と加えて溶解すべきところを、1バッチ(硝酸ウラニル溶解約6.5L)以下で制限して管理すべき沈殿槽に、7バッチのウラン溶液を注入したことによる。事故現場で作業をしていた3名が重篤な被ばくを受けた他(うち2名が死亡)、住民への避難要請、屋内退避要請が一時行われるなど我が国での原子力事故としては前例のない大事故なった。 |
ジューリング疱疹状皮膚炎 | かゆみの強い水疱、丘疹、蕁麻疹様病変の群発で特徴づけられている慢性の皮疹。ヨウ化カリによるパッチテストで皮疹を誘発し診断していたが、現在では、蛍光抗体法で、表皮真皮境界部に?TgAの沈着を証明することで診断される。この疾患を有する者は、ヨウ素対し過敏である。 |
生涯リスク | 将来に渡って疫病発症に結びつくリスク要因は、日常生活の中でもいろいろ考えられるが、リスク源にさらされることによって、被る害が生涯の間に現れる確率を生涯リスクという。放射線被ばくの場合、被ばくによって発生するがんは、長い潜伏期間を経て生涯にわたって現れるため、生涯リスクは放射線被ばくによって一生の間に発生(がんによる生涯の発生あるいはがんによって死亡)する確率ということができる。 |
腎不全(症) | 腎臓への循環不全、腎内血管病変、腎実質病変、尿路閉鎖などの原因で、腎臓の機能が低下した臨床状態をいう。水分やカリウムや老廃物などの排泄障害により、様々な症状を呈する。 |
髄様癌 | 髄様(充実性)癌は散発性(通常一側性)あるいは家族性(両側性が多い)に発症する。染色体10番目のRet遺伝子以上に起因することが多い。病理学的には、甲状腺傍濾胞上皮細胞(C細胞)の増殖がみられる。この細胞は血清カルシウムとリン酸(PO4)の低下作用をもつホルモンであるカルシトニンを過剰分泌するが、血清カルシウムとリン酸(PO4)の濃度を変えるほど高濃度に存在することは稀である。コンゴレッドに染まる特徴的なアミロイド沈着もある。 |
生物学的半減期 | 生体中または特定の組織、器官に存在する特定の物質(放射性核種も含む)の量が、代謝、排泄などの生物学的過程によって初めの量の1/2にまで減少する時間をいう。この減少は、指数関数的またはそれに近い割合で起こる。したがって、放射性核種が摂取された場合の体内又は組織、器官内存在量は、放射性壊変と生物学的過程とにより減少する。 この二つの過程により初めの放射性核種の量が1/2にまで減少する時間を実効半減期といい、次式で示される。 1/T=1/Tr+1/Tb ここで、Tは、実効半減期、Trは、物理的半減期、Tbは、生物学的半減期である。 |
世界保健機関(WHO) | 世界保健機関(WHO)は、1946年の国際保健会議で採択されたWHO憲章に基づいて1948年に国連の専門機関の一つとして設立され、その目的は、世界の全ての人々の健康の保護、増進のため国際保健活動を計画、実施、調整することであり、1998年現在の加盟国は191カ国である。WHOの原子力分野の国際協力・支援活動としては、世界8ヵ所のWHO放射線緊急時対策支援センターの活動と、チェルノブイリ事故の健康影響に関するWHO国際プログラムとある。前者では、放射線障害についての指導・訓練・医療措置の実施、大規模事故時の緊急医療対策確立への支援、放射線影響の病理学的または疫学的調査等が行われ、また後者では、チェルノブイリ事故の健康影響についての調査協力の促進、疫学的調査その他の専門的調査による長期の低レベル放射線を含む放射線影響の把握、データベースの開発・充実、得られた知識の放射線緊急時医療対策への活用等が行われている。 |
先天性筋硬直症 | 先天性筋硬直症(トムゼン病)は、稀な常染色体優性筋硬直症であり、通常幼児期に発症する。いくつかの家系で、この疾患は骨格的筋塩素チャンネル遺伝因子を含む染色体7の領域に結び付けられている。無痛性筋硬直は手、脚、眼瞼で最も顕著で、運動で改善する。脱力は通常ごくわずかである。筋肉が肥大することがある。診断は通常、特徴的な身体外観、握ったこぶしがまっすぐに開くことができないこと、直接筋叩打後の筋収縮持続によって決定される。筋硬直は筋電図検査で、典型的な「急降下爆撃機」様の音を起こす。 |
繊毛由来性性腺刺激ホルモン | 胎盤繊毛から合成・分泌される性ホルモンで、エストロゲンとプロゲステロンがある。 |
[タ]行
胎盤 | 妊娠の際、子宮内にできる円盤状の組織塊をいう。胎児がへその緒を介して物質交換を行うとともに、胎盤ホルモンを分泌して妊娠の維持に重要な役割をする。 |
チェルノブイリ事故 | 1986年4月26日、旧ソ連のウクライナ共和国キエフ市北方約130kmのチェルノブイリ原子力発電所4号機(黒鉛減速軽水冷却沸騰水型:RBMk型、1000MWe)で発生した原子炉事故。急速な反応度投入事故の結果として発生した蒸気爆発で炉心の一部が破損し、黒鉛火災が起こり、建物の一部が吹き飛んで大量の放射性物質が環境に放出された。この事故により、消火活動に当たったもののうち、31名の死亡、203人が急性放射線障害で入院し、発電所から半径30?q以内の住民13万5000人が避難した。放射性物質は国境を越えて隣接するヨーロッパ諸国にもおよび、広い範囲に放射能汚染を引き起こした。 |
低補体性血管炎 | 血管壁に炎症を認め、自己抗体などによる免疫複合体形成により、低補体血症を伴う血管炎を生じる疾患。全身性エリテマトーデスなどの膠原病に多く伴う。低補体血管炎を有する者で、ヨウ素に過敏であることがある。 |
デオキシリボ核酸(DNA) | デオキシリボ核酸(Deoxyribonucleic acid:DNA)は、遺伝子の本体で、デオキシリボースを含む核酸。ウイルスの一部およびすべての生物の細胞中に存在し、真核生物では主に核中にある。アデニン・グアニン・シトシン・チミンの4種の塩基を含み、その配列順序に遺伝子情報が含まれる。1953年ワトソンとクリックとが、デオキシリボ核酸の分子モデルとして二重螺旋(らせん)構造を提案し、分子生物学を大きく発展させた。 |
[ナ]行
乳頭腺癌 | 乳頭腺癌は甲状腺癌の中で最も多く、全甲状腺がんの80〜90%を占めている。女性は男性の2〜3倍羅患しやすい。青年層の羅患頻度が高いが、高齢層ではより悪性である。放射線照射歴のある患者に多く発生し、リンパ行性に転移する。これら分化癌はTSH依存性のことが多く、乳頭腺癌の多くは濾胞性要素を含んでいる。最近検査の進歩で潜在する微小がんの発見が増加している。 |
[ハ]行
被ばく | 身体が放射線にさらされることをいう。被ばくの形態には、身体の外にある放射性物質やX線発生装置から放射線を受ける「外部被ばく」と放射性物質の付着した食物を食べたり、空気中に存在する放射性物質を呼吸により身体の中に取り込み、それから放出される放射線を身体の内部から受ける「内部被ばく」の2種類がある。外部被ばくは、放射線を受けているときだけに限られるが、内部被ばくは放射性物質が体内に存在するかぎり被ばくが続く.被ばくには、原子力施設で働く人の職業上の被ばく、一般公衆の日常生活での被ばく、すなわち宇宙や大地、食物からの自然放射線、病院での医療、あるいは原子力施設から放出された放射性物質等に由来する人口放射線による被ばくがある。 |
米国放射線防護審議会(NCRP) | 米国議会から公認された非営利法人団体であり、放射線防護と測定に関する勧告、ガイダンスの公表、および情報収集、評価を行っている。NCRPの特徴は、政府機関、産業界、財団等より寄付を受けているが、その報告は、化学的基盤にたった公正なもので、永年の信頼を確率している。 |
副作用 | 治療・予防・診断などのために用いた医薬品の本来の効果と異なる作用。人体に有害な作用であることが多い。 |
物理的多重防護壁 | 原子力施設の安全性確保の基本的考え方の一つで、原子力施設の安全対策が多段的に構成されていることをいう。原子力施設の基本的設計思想とされている。多重防護は、次の3段階からなっている。第一段階としては、安全確保のための設計の考え方であって、異常の発生を防止するため、安全上余裕のある設計、誤操作や誤動作を防止する設計、自然災害に対処できる設計が採用されている。第二段階としては、事故拡大防止の考え方であって、万一異常が発生しても事故への拡大を防止するため、異常を早く発見できる設計、原子炉を緊急に停止できる設計が採用されている。第三段階としては、放射性物質の放出防止の考え方で、万一事故が発生しても放射性物質の異常な放出を防止するための格納容器やECCS(緊急炉心冷却装置)が備えられている。 |
防災業務関係者 | 周辺住民に対する広報・指示伝達、周辺住民の避難誘導、交通整理、放射線モニタリング、医療措置、原子力施設内において災害に発展する事態を防止する措置等の災害応急対策活動を実施する者、及び放射性汚染物の除去等の災害復旧活動を実施する者をいう。 |
放射性ヨウ素 | 原子炉施設において、原子力災害が発生した場合には、気体状のクリプトン、キセノン等の希ガスとともに、揮発性の放射性ヨウ素が周辺環境へ放出することが想定される。この場合、放出される放射性ヨウ素のうち周辺環境に影響を与える核種は、ヨウ素-131、ヨウ素-132、ヨウ素-133、ヨウ素-134、ヨウ素-135、である。なお、ヨウ素は、そのかなりのものが液層に残ること及びチャコールフィルタにより除去できることが知られている。ちなみに、ヨウ素-131、1?rは、4.6×1012Bqである。 また、元素状ヨウ素-131の吸入による小児(1歳児)甲状腺等価線量の線量計数(ICRPPub.71)は、3.2×10-3mSv/Bqである。 |
[マ]行
慢性甲状腺炎 | 自己免疫因子が原因と考えられるリンパ球浸潤を伴う甲状腺の慢性炎症で女性に多い。慢性リンパ球性甲状腺炎(自己免疫甲状腺炎)ともいう。 |
未分化癌 | 未分化癌は甲状腺癌の約3%前後で、主に高齢者にみられ、女性のほうが男性よりも若干多い。この腫瘍の特徴は、甲状腺の急速な有痛性の腫大で、約80%の患者が診断後1年以内に死亡し、最も予後の不良な甲状腺癌である |
[ヤ]行
薬疹 | 経口及び非経口的薬物投与後の皮膚及び粘膜の皮疹。ほとんどの薬疹の機構は良く知られていないが、多くはエネルギー性しくみによるものである。薬物に特異的な抗体や特異的に感作されたリンパ球が、初回の薬物暴露の後、概ね4〜5日間持続する。その後の薬物に対する再暴露は、数分のうちに丘疹となって現れることもある。他の反応には、薬物の蓄積、薬物の薬理学的作用、遺伝的因子との相互作用などがある。 |
ヨウ化カリウム | ヨウ素の化合物。ヨウ素は、3`,5`,-cyclic AMPを介する甲状腺刺激ホルモンの作用を減弱させることにより、体循環への甲状腺ホルモンの分泌を抑制し、甲状腺機能亢進症状を軽減させる。一方、甲状腺機能低下の場合には、ヨウ素が補給され機能が亢進する。また、ヨウ素は気管支粘膜の分泌促進、粘液の粘度を低下させることにより、去痰作用を表す。さらに、梅毒患者の肉芽組織に対する選択的な作用により、第三期梅毒患者のゴム腫の吸収促進に用いられている。 |
予防 | ここでいう予防とは、安定ヨウ素剤を服用することにより、放射線誘発による甲状腺がんの発生確率を低減させ、がんを積極的に予防することと、放射性ヨウ素の吸入前に安定ヨウ素剤を予防的に服用するという両方の意味で用いている。 |
[ラ]行
羅患率 | 病気に新しくかかることを羅患といい、特定の期間中にある集団が新たに病気になった人数を割合として示したもの。 |
リスク・ベネフィットバランス | ある行為を採用することにより、得られる便益とそれに伴うリス(危険率)等とを比較し、その行為を採用することが適切か否かを判断する場合の手法として用いられる。 |
臨界 | ウランなどの核分裂性物質は、中性子が当たると核分裂反応を起こし、大きなエネルギーを生み出すとともに、2、3個の新たな中性子を放出する。このため、一定量以上の核分裂性物質がある条件下で集まると、生まれた中性子が核分裂性物質に当り次々と核分裂反応を起こす。これを臨界といい、この核分裂が持続している状態を臨界状態という。 |
濾胞腺癌 | 濾胞腺癌は、甲状腺がんの約5〜10%を占め、高齢者に比較的多い。乳頭腺癌よりも悪性で、血行性に遠 |
出典
(1)ATOMICA(原子力百科事典):(財)高度情報科学技術研究機構 原子力PAデータベースセンター、科学技術振興事業団 受託出版課 2001年
(2)メルクマニュアル 第17版 日本語版:日経BP社、東京
THE MERCK MANUAL OF DIAGNOSIS AND THERAPY,Publisher by Merck Resech Laboratories,Division of MERCK&Co.Whitehouse; Station,N.J.1999.
原子力安全委員会原子力施設等防災専門部会 名簿
担当原子力安全委員 | ||
松原 順子 | 原子力安全委員会委員長代理 | |
飛岡 利明 | 原子力安全委員会委員 | |
専門委員 | 石塚 昶雄 | (社)日本原子力産業会議理事・事務局長 |
榎田 洋一 | 名古屋大学環境量子リサイクル研究センター教授 | |
海部 孝治 | 電機事業連合会理事・事務局長 | |
部会長 | 片山 恒雄 | 独立行性法人防災科学技術研究所理事長 |
金子 勝 | 東日本電信電話(株)サービス運営部災害対策室長 | |
河瀬 一治 | 全国原子力発電所所在市町村協議会会長・敦賀市長 | |
神田 啓治 | 京都大学原子炉実験所教授 | |
草間 朋子 | 大分県立看護科学大学長 | |
近藤 駿介 | 東京大学大学院工学系研究科教授 | |
佐竹 宏文 | (財)日本分析センター理事長 | |
首藤 由紀 | (株)社会安全研究所ヒューマンファクター研究部長 | |
竹内 康浩 | 独立行政法人放射線医学総合研究所緊急被ばく医療センター長 | |
田中 俊一 | 日本原子力研究所東海研究所副所長 | |
野村 保 | 核燃料サイクル開発機構 原子力緊急時支援・研修センター長 | |
独立行性法人消防研究所研究統括官 | ||
樋口 英雄 | (財)日本分析センター理事 | |
廣井 脩 | 東京大学社会情報研究所長 | |
部会長代理 | 藤城 俊夫 | (財)高度情報科学技術研究機構専務理事 |
藤元 憲三 | 独立行政法人放射線医学総合研究所放射線安全研究センター防護体系構築研究グループリーダー | |
邉見 弘 | 国立病院東京災害医療センター副院長 | |
堀 達也 | 原子力発電関係団体協議会会長・北海道知事 | |
前川 和彦 | (財)原子力安全研究協会 理事・防災技術センター所長 | |
松尾 多森 | (財)原子力安全技術センター 理事・防災技術センター所長 | |
松鶴 秀夫 | 日本原子力研究所東海研究所保健物理部長 | |
吉井 博明 | 東京経済大学コミュニケーション学部教授 | |
吉村 秀實 | ジャーナリスト |
開催日
第2回 | 平成14年 1月23日 |
第3回 | 平成14年 2月25日 |
原子力安全委員会被ばく医療分科会 名簿
専門委員 | ||
主査代理 | 明石 真言 | 独立行政法人放射線医学総合研究所 緊急被ばく医療センター被ばく医療室長 |
太田 勝正 | 長野県看護大学基礎看護学教授 | |
海部 孝治 | 電機事業連合会理事・事務局長 | |
片山 恒雄 | 独立行政法人防災科学技術研究所長 | |
神谷 研二 | 広島大学原爆放射能医学研究所長 | |
吉川 武彦 | 国立精神・神経センター精神保健研究所名誉所長 | |
衣笠 達也 | (財)原子力安全研究協会放射線災害医療研究所副所長 | |
小西 聖子 | 武蔵野上司大学人間関係学部教授 | |
鈴木 元 | (財)放射線影響研究所臨床研究部長 | |
朝長 万左男 | 長崎大学医学部附属原爆後障害医療研究施設長 | |
錬石 和男 | (財)放射線影響研究所臨床研究部内科長 | |
野村 保 | 核燃料サイクル開発機構原子力緊急時支援・研修センター長 | |
平間 敏靖 | 独立行政法人放射線医学総合研究所 緊急被ばく医療センター障害医療情報室長 | |
廣井 脩 | 東京大学社会情報研究所長 | |
邉見 弘 | 国立病院東京災害医療センター副院長 | |
堀 達也 | 原子力発電関係団体協議会会長・北海道知事 | |
主査 | 前川 和彦 | (財)原子力安全研究協会理事・放射線災害医療研究所長 |
松鶴 秀夫 | 日本原子力研究所保健物理部長 | |
山下俊一 | 長崎大学医学部附属原爆後後障害医療研究施設教授 | |
部外協力者 | 長瀧 重信 | (財)放射線影響研究所前理事長 |
開催日
第3回 | 平成13年 12月3日 |
第4回 | 平成13年 12月17日 |
第5回 | 平成14年 1月18日 |
原子力安全委員会被ばく医療分科会
ヨウ素剤検討会 名簿
専門委員 | ||
明石 真言 | 独立行政法人放射線医学総合研究所 緊急被ばく医療センター被ばく医療室長 | |
衣笠 達也 | (財)原子力安全研究協会放射線災害医療研究所副所長 | |
鈴木 元 | (財)放射線影響研究所臨床研究部長 | |
主査代理 | 平間 敏靖 | 独立行政法人放射線医学総合研究所 緊急被ばく医療センター障害医療情報室長 |
主査 | 山下俊一 | 長崎大学医学部附属原爆後後障害医療研究施設教授 |
前川 和彦 | (財)原子力安全研究協会理事 放射線災害医療研究所長 | |
部外協力者 | 伊藤 國彦 | 伊藤病院名誉院長 |
山口 武憲 | 日本原子力研究所東海研究所保健物理部 環境放射線管理部長 | |
百瀬 琢磨 | 核燃料サイクル開発機構東海事業所 安全管理部線量計測課長代理 | |
宮川 隆美 | 青森県十和田保健所長 | |
竹下 義洋 | 佐賀県構成部医務課副課長 |
開催日
第1回 | 平成13年 8月6日 |
第2回 | 平成13年 9月7日 |
第3回 | 平成13年 10月12日 |
第4回 | 平成13年 11月13日 |
第5回 | 平成13年 12月4日 |