ライフ【次代への名言】シネマの天使編(27)2011.3.19 03:04

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【次代への名言】
シネマの天使編(27)

2011.3.19 03:04

 ■「日常、如何(いか)なる出来事に出会いても、めっけものと思え」(池部良『続続そよ風ときにはつむじ風』)

 池部良さんは昭和17(1942)年2月に召集され、すぐに中国・山東省の陸軍部隊に配属された。以降、東京にいる洋画家の父、鈞(ひとし)さんと母の篁子(こうこ)さんは、毎日のように戦地に手紙を送ってきた。

 冒頭は、入隊直後の池部さんにあてた鈞さんの手紙の一文だ。《前略。何より身体大事と心得ること》とはじまり、こう締めくくられていた。《怪我(けが)をしたら、よくぞ死ななかったと悦(よろこ)べ》

 池部さんはまもなく、幹部候補生に抜擢(ばってき)された。が、気持ちは晴れない。そんなことを故郷に書き送った。すると、篁子さんから手紙が来た。《ほんとうに軍隊にいるのが辛(つら)いのでしたら、お逃げなさい。でも(中略)あなたが上手に逃げて来て、お母さんに会いたいと言っても、私はあなたに会いません。日本軍隊に申し訳ないということではなく、あなたが自分に負けているからで、そんな我が子に会いたいとは思いません》

 出征前、池部さんを見送る篁子さんは《涙につぐ涙》だった。池部さんに会いたくないはずはない。極限下に愛息と同様に苦悩する母の姿がみえる。

 一方、幹部候補生抜擢の報に鈞さんは《こうなったからには、部下の生死にも責任を持つべし》と書き送ってきた。その数週間後、鈞さんの手紙はこう結ばれていた。「この戦争は勝つのか負けるのかはっきりしないが、とにかく、お前は死ぬな」(文化部編集委員 関厚夫)

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